第507話 インテリカップル!

「話は戻すが、ゴンド村に空き家はあるか?」


 ムラサキがゴンド村へ移住の話をして来た。


「空き家と言うか、全ても建て直しているぞ」

「どういう事だ?」

「言葉の通りだ。一度、全て壊して村の家は全てドワーフ族に建てて貰っている」

「ドワーフ族ですって!」


 後で静かに聞いていたイリアが声を荒げる。


「ん、失礼しました。その、ドワーフ族が家を建てるというのは本当なのですか?」

「あぁ、ドワーフの数人もゴンド村に住むと言ってくれているしな」

「……ドワーフ族の建てる家。少し、席外します」


 イリアは突然、席を立ち部屋を出て行った。


「イリア、どうしたんだ?」

「さぁ?」


 シキブを首を傾げていた。


「まぁ、住むならゾリアスに相談してくれ」

「ゾリアスに?」

「あぁ、そうか。ゾリアスが新しくゴンド村の村長に就任した」

「えっ、そうなの!」

「そうか、新しくなった村を見ていないからな。今度、マリーに案内させるわ」

「マリーさんに?」


 シキブとムラサキは不思議そうにしていた。

 セフィーロ以外は、転移扉の事を知らないので、この反応は当然だ。

 俺が話そうとすると、部屋の扉が開きイリアが戻って来た。

 座ることなく俺の横に立ち止まる。


「タクトさん。御願いが御座います」

「な、なんだ。改まって」


 イリアを見上げる形で返事をする。


「私とエイジンの新居をゴンド村に建てて頂きたいのです」

「はぁ?」


 突然の申し出に困惑する。


「新しい仕事が決まってないとはいえ、ゴンド村で仕事が出来るのか?」

「ゴンド村で出来る仕事を提案するつもりです」

「エイジンも了承済なのか?」

「勿論です。ドワーフ族の建てた家に住む事は、私達の夢でしたから」

「ちょっと、待て。ドワーフ族の建てた家って、そんなにあるのか?」

「はい、今は重要建築物になっています」


 ……そうだろうな。ドワーフ族が街中で家を建てている現場に遭遇した事が無い。

 前世の俺で言えば、清水寺や法隆寺を建てた人に憧れている感じなのだろう。

 しかし、注文住宅となると……。


「通貨なら出来る限り出します」


 イリアはそう言うが、トブレ達は凝った細工等にすれば喜んでやってくれるだろう。

 当然、採算度外視だ。

 そもそもが、アルの命令で建てているので報酬等は貰っていない筈だ。


「どんな家にしたいかは考えているのか?」

「はい、何度もエイジンと理想の家について語っていますので」


 そう話すイリアの目は輝いていた。


「分かった。エイジンの次の休みはいつになる」

「明日です」

「……シキブにムラサキは明日、休み取れるか?」

「ん~、どうだろう」


 悩むシキブを見てトグルが「休んで下さい」と気を利かせた。

 シキブもトグルに甘える事にした。


「あら、大事な事を忘れているわよ」


 セフィーロが報告漏れでもあるかのような発言をする。


「何かあったか?」

「えぇ、エルフも住んでいるでしょう」

「あぁ、その事か」


 俺的には大した事では無かったが、シキブ達には衝撃的だったようだ。

 決して他種族と交流を持たないエルフ族が、一緒に生活する等考えられない事だからだ。

 長年生きているセフィーロだから、こういう細かい事も気付くのかも知れない。


 俺はとりあえず、ゾリアスに連絡をして明日又、住人予定の者を連れて行くとだけ伝えた。

 伝え終わったところで、大事な事に気が付く。


「村に住むなら、なにかしら村に貢献しないと駄目だぞ」


 村に住むうえで一番重要な事だ。

 シキブは妊婦なので、今回は免除したとして、残り三人だ。


「俺は冒険者でもやりながら、狩りでもするぞ」


 ムラサキが自慢気に話す。


「そうですね。私も狩りをする事も可能です」

「イリアって、計算も出来るよな」

「はい。受付長ですので当然です」

「接待も問題無く出来るよな」

「受付ですので当たり前です」

「イリアは子供達の勉強教え係だな」

「えっ!」

「ゴンド村で勉強を教える奴居なくて困っていてな。イリアは教え上手そうだしな」

「私は、子供に人気無いですよ」

「まぁ、それはおいおい考えるとして、イリアには四葉孤児院の子供にも勉強を教えて欲しいな」

「……私に出来ますか?」

「イリアだから出来るだろう」

「分かりました。その申し出をお受け致します」

「一応、報酬は四葉商会から支払うから心配するなよ」

「はい」


 正直、イリアの申し出は助かった。

 これで村や四葉孤児院の子供達にも勉強を教える事が出来る。


 問題はマリーが、イリアを自分の補佐として使いたいような事を前に言っていたので承諾を得る必要がある。

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