第496話 断末魔の叫び!
「無様だな。これでお前も、只の平民だな」
「……お前の仕業だろう」
「さぁな」
俺はロスナイを見下すようにして話をする。
ロスナイが不快な事がよく分かるが今迄、自分がしてきた行為そのものだ。
「俺は貴族だ。それも由緒正しいピッツバーグ家だぞ!」
「それも、さっきまでの話だろう」
「誰が何と言おうが、俺はピッツバーグ家の跡取りだ」
「何を言っているんだ? ピッツバーグ家の跡取りは、そこに居るだろう」
「あれは父上が勝手に決めただけだ。本当であれば、私が正当な後継者の筈だ!」
ロスナイの思考が理解出来なかった。
前当主の父親が任命したのであれば、ダンガロイが正当な後継者なのは間違いない。
それさえも理解出来ずに逆恨みするのであれば、余程の馬鹿で御都合主義者だ。
「そんな馬鹿な奴だから、父親からも信用して貰えなかったんだろう?」
「なんだと!」
図星なのか、俺を睨み叫ぶ。
「自分の力量も分からずに、威張るだけしか能が無い馬鹿に今迄、領主が務まっていたかと思うと治めていた領地の民が哀れだな」
俺の言葉に何か言おうとするが、それより先に太ももの剣を深く刺す。
「ぐがぁっ!」
剣の刺さっている箇所から出血は増して、血が地面に溜まっていく。
痛みで顔が歪むロスナイだが、気にせずに俺は刺さった剣を切っ先の方に引くと、太ももから剣が抜ける。
ロスナイは悲鳴を上げて、地面に転がる。
体中が、自分の流した血で赤く染まる。
暫くすると、ロスナイは痛みで気を失った。
俺はすぐに治療魔法で、ロスナイを元気な状態に戻して、軽く腹を蹴って起こす。
目を覚ましたロスナイは俺の顔を見るなり、自分の脚を見る。
「……夢か」
「いや、現実だ。その赤く染まった血がなによりの証拠だ」
その後も、俺はロスナイを痛めつけては治療する事を繰り返す。
「殺せ!」
流石に痛みに耐えかねたのか、ロスナイの口から殺して欲しいと願い出る。
「はぁ、死んだら楽になるだろう。苦痛を楽しんでもらう為に誰がそんなことするか」
そう言いながら、喉元に剣先を当てる。
俺の言葉を聞いて、死ぬのを諦めたのか目を瞑った。
もう、好きにしてくれといった心境なのだろう。
「納得いかないのであれば、死なない程度に、どんな事をしても良いぞ」
俺はダンガロイとフリーゼに話し掛ける。
しかし二人共が、俺の拷問を見て尚、ロスナイを痛めつける程、悪い性格では無いらしい。
怨みはあるが、俺のような事は自分達では決して出来ないのだろう。
「ロスナイは死刑なのか?」
俺はルーカスに問う。
「あぁ。勿論、死刑だ」
ルーカスは即答する。
「じゃあ、このまま放置で良いか?」
俺の言葉にロスナイは青ざめる。
「この辺りは魔物も、獣も多数居るから俺達が居なくなれば、血の匂いに誘われて生きたまま食われるだろう」
「まっ、待ってくれ!」
先程まで諦め顔だったロスナイが、必死になって助けを求めてきた。
「お前は今迄、そう言ってきた奴隷の者達を助けた事があったのか」
「えっ……」
ロスナイは心当たりがあるのか、言葉に詰まる。
「分かりやすく言えば、お前は狩る側から狩られる側になったという事だ。狩られる者の気持ちを存分に味わうがいいさ」
ロスナイに背を向けて、ルーカス達の方に歩く。
「今、ロスナイは行方不明なんだろう? 捕獲する事自体、変だからこのままで良いだろう」
「……それはそうだが」
「さっきも言ったが、奴の血の匂いで魔物や獣が奴を襲うのも時間の問題だ。行方不明者の成れの果てだ」
実際、魔物や獣に襲われなかったとしても、生きてこの森を出る事は無い。
俺と言うか、俺の意図を読み取ったリラが、そんな事は絶対にさせないだろう。
ダンガロイとフリーゼを見ると、複雑な表情をしていた。
「どうしても納得いかないのであれば、一回位剣を刺しておくか?」
ダンガロイとフリーゼは、お互いの顔を見て何も言わずに頷く。
「国王様の判断に御任せ致します」
ダンガロイはルーカスに告げた。
「うむ……この場では何も見聞きしておらぬ。城に戻ったら、ナーブブルの領地の件で早々に話し合いが必要だな」
ルーカスとしても、事を大きくしたくないのだろう。
領主であるロスナイの大量虐殺と、調査団が来た事による逃亡として終わらせるのが一番良いと判断したに違いない。
俺達は、後ろで断末魔のような叫び声を上げているロスナイを無視して、ゴンド村に戻る。
帰り際に、樹に手を触れてリラに「後始末を頼む」とだけ念じた。
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