第468話 常識外な村!

 ダンガロイが何か指示したのか、ピッツバーグ家の使用人達は朝から、てんやわんやの大忙しのようで走り回っていた。

 悪いと思いながらも、忙しそうにしている使用人を捕まえて話を聞く。

 原因は、ダンガロイが今日一日はルーカス達と重大な話し合いがあるので、何人たりとも部屋に入る事は許さないと通達を出したそうだ。

 前夜の特訓場での事や、ルーカスとの口喧嘩も屋敷内には広まっているので、気を利かせた執事や使用人の何人かで対策をしているそうだ。

 使用人達にしてみれば、国王に歯向かったと捉えられているかも知れないので、確かに気が気で無いだろう。

 俺が安心させるように「大丈夫だ」と言っても、この事態は収束する事は無かった。


 待ち合わせの部屋に行くと、既にルーカス達は揃っていた。


「珍しく早いな」

「勿論だ。姉上を待たせると面倒な事になるからな」


 国王がそんなんで良いのかと思ったが、これは地位関係なく姉弟の間柄のことなのだろう。


「よく寝れたか?」


 俺はユキノに話し掛けると「はい」と笑顔で答える。

 髪には俺のあげた髪飾りが付いている。


「式典の事は聞いたか?」

「はい。生誕祭の後で良いとお答えしました」

「そうか、ありがとうな」

「国の一大事であれば、そちらを優先にするのが当たり前です」


 ユキノは王女らしい発言をする。


「待たせたな」


 完全武装で身を包んだ恰好でフリーゼは現れた。


「国王様、申し訳御座いません。私からも言ったのですが……」


 ダンガロイがルーカスに対して、申し訳なさそうに謝る。


「義兄上、お気になさらずに。姉上の性格はよく存じておりますから」


 ルーカスも苦笑いだった。


「領主夫人は、どうして武装しているんだ?」

「魔族がいる村に行くのに、武装しない方が変だろう」

「……戦闘する事にはならないぞ」

「用心に越したことは無い!」


 フリーゼの頭の中は視察でなく、敵の村を訪れる感覚なのだろう。

 昨日のアルとの戦いで、そんな恰好をしても無駄だと気付かなかったのだろうか?

 当然、カーディフとセドナも、戦闘に適した服装をしていた。


 俺は全員に用意が出来た事を確認して、アルとネロを呼ぶ。

 フリーゼ達はアルとネロが転移して来た事に驚きながらも、冷静に取り繕っていた。

 アル達に指示を出して、ゴンド村の外に【転移】して待ち合わせをする。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「タクトよ。以前に来た時と比べて様子が違うのだか……」


 ルーカスは、シロが土魔法で作った壁を見ながら驚く。


「あぁ、発見しにくいように壁を造った」


 ルーカス達は以前の様子と違う事に驚き、初めて来た者達は村の異様な光景に驚いていた。


「おい、あれはドラゴンだな」


 フリーゼが村の上空を飛んでいる何体かのドラゴンを指差しながら、真っ青な顔で俺に質問する。


「あぁ、そうだ」

「……信じられん」


 一匹のドラゴンが俺達に気が付いたのか、近付いてきた。

 背中にはゾリアスが乗っていた。

 ゾリアスは、俺と一緒に居るのがルーカスだと気が付いたのかドラゴンが着陸すると、すぐに下りて膝を付く。

 ドラゴンの背中にゾリアスが乗っていた事に、フリーゼ達は驚いていた。


「ゾリアスよ。そのような形式的な挨拶は不要だ」


 ルーカスは、ゾリアスに面を上げるように言う。

 ゾリアスもそれに応えるように立ち上がると、国王達に挨拶をする。


「ようこそ、ゴンド村へ」


 村長としての仕事だろう。


「本当にゾリアスなのだな」

「フリーゼ様。御無沙汰しております」


 ゾリアスは頭を下げる。


「ドラゴンの背に乗るなど、危険では無いのか?」

「慣れれば問題ありません。仮に落ちたとしてもドラゴン達が、私達を救ってくれます」


 ゾリアスが答えると、フリーゼは困惑していた。


「何も御座いませんが、どうぞこちらに」


 ゾリアスは俺達一行を村へと案内する。


「凄いわね」


 カルアが俺に話し掛けてきた。


「まぁ、見つかると面倒だしな」

「魔法かなにかで、この村が発見出来ない様にしているの?」

「いや、今は壁だけだ」


 【結界】を張ったとしても、俺やネロのユニークスキル【魔法反射(二倍)】があるので、すぐに破壊されてしまう。


「そう、それならロッソ様に相談するといいわよ」

「何か良い案でもあるのか?」

「ロッソ様は、隠れて住む事に関してはエキスパートですからね」

「成程な」


 俺も近々、ロッソには会いに行きたいと思っていたから丁度良い。


「土地が空いている所に、家を建てていいの?」

「そこら辺は、ゾリアスに聞いてくれ」

「分かったわ」


 カルアは『護衛三人衆』の任を解かれたらゴンド村に住むと言っていたので、それも兼ねているのだろう。

 今回の視察は、カルアにとって丁度良いタイミングだったのかも知れない。

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