第454話 魔族への敵対心!

「こいつは魔人族のスーノパパだ。言っておくがイエティでは無いからな」


 フリーゼ達にスーノパパを紹介する。


「魔人族なら敵だろう。何故、一緒に居るのだ」


 魔人族と聞いたフリーゼは、スーノパパに対して明らかに敵意を向けている。


「何も危害を加えない魔人と、私腹を肥やす為に人を人と扱わない貴族では、どっちが悪党なんだ?」


 魔人族イコール悪と言う考えは、この世界の常識だ。

 敢えて、意地の悪い質問をフリーゼにする。


「私達は人族だ。魔族は敵と言う事は間違いない。人族間の問題は、人族で解決すれば良いだけだ」

「成程。そういう考えもあるが、俺は魔族だろうが人族だろうが関係ない」

「それは、人族を裏切って魔族側に寝返る事もあると言う事か?」

「そもそも、俺は人族だが考えで言えば中立的な立場だ。俺に害を成す者は人族、魔族と関係ない」

「お前のその思想は危険だな。……国王も知っているのか?」

「勿論知っている。それをどう感じているかは、俺には分からないがな」

「それでも、ユキノと一緒になる事を許しているのか……」


 フリーゼの考えは、人族としては一般的な考えだ。

 考え方は人それぞれなので、俺がそれを否定する事は出来ない。


「とりあえず、スーノパパには危害を加えないと約束はしているので、俺としては約束は守ってもらう」

「分かった。今回は、お前の言う事を聞いておく」


 不満そうなフリーゼだが、俺に付いて来たので俺のやり方に口を出す気は無いようだ。


「もう少しだけ待っていてくれ。スーノパパとイエティを探してくる」


 俺はそう言って、スーノパパとイエティを探しに歩き始めた。


「気分を害すようで、悪かったな」

「大丈夫。今も昔も俺達魔人族は、人族の敵」

「俺はスーノパパの事は敵だとは思っていないぞ」

「タクトは特殊な人族。俺達への反応は、先程の人族が普通」

「スーノパパは、人族と仲良くしたいのか?」

「……そんな事は考えた事も無い。人族との接触する事が、そもそも無い」

「そうか、俺の前に会った人族はどれ位前だ?」

「分からない。物凄く昔な事しか分からない」


 よくよく考えれば、雪山に篭っているので時間という概念が無いのだろう。


「タクト、一瞬で移動出来る凄い」


 そういえば、スーノパパが【転移】の事をフリーゼ達に話さなかった事を思い出す。


「俺の転移魔法を話さなかったが、どうしてだ?」

「特別な力、むやみに話すと災いをもたらす」

「そうなのか。とりあえず、黙っていてくれた事に礼を言う」


 転移魔法が特別な力なのか、自分達が知らない力の事を特別な力と言っているのか、俺には判断が付かなかった。

 俺は、麓から中腹にかけて【魔力探知地図】で魔獣の印を探す。


「これか?」


 スーノパパよりも小さな印だが、この辺りでは大きい印になる。

 しかし、その大きな印が全部で三つ重なっている。


「スーノパパ、イエティは集団で行動する事はあるのか?」

「分からない。山頂に来るイエティは何人かで来る事もある。俺を見つけると逃げていく」


 自分よりも強い相手には戦いを挑まない習性のようだ。

 生きていくうえでは、正しい選択だろう。


「家族の話を聞いていいか?」

「いいぞ」


 子供は三人居るらしく上から『スーノララ』と言う女の子に、『スーノピカリ』『スーノモジャ』と男の子が居るそうだ。

 名前を聞く限り、スーノとは名字的な意味合いで、その下が名のようだが、パパとママはどうなんだろうか?

 パパとママが無くなって新しい子供がパパやママと言う名になると、ややこしいと思うのは俺だけだろうか?

 それに子供の名前は、明らかに俺の知っているキャラクターの名前に似ている。

 特にスーノモジャって、スーノパパもモジャモジャなのに、どうなっているのだろうか?

 個人的に雪人族にとても興味が湧く。

 イエティ討伐後に、日を改めて遊びに来る事を再度、約束する。

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