第411話 緊張!
三国会談も最終日となる。
大臣のジャジーとメントラは、かなり疲れているようだった。
一応、【神の癒し】を施すと感謝された。
昨日の会談で、魔素の塊である黒い玉の件を話すと、オーフェン帝国とシャレーゼ国は関与を否定した。
こちらが用意した物的証拠を出して、各々の国で調査をして欲しい事を伝えると、両国とも検討するという回答だった。
特に、オーフェン帝国は信じられないような事を言っていたが、シャレーゼ国は内容を信用していない感じだったので、本気で調査をする気は無いだろうと、メントラが教えてくれた。
本日の議題は主に、領地問題になるそうでエルドラード王国は仲裁の立場で会談に臨む事になる。
オーフェン帝国とシャレーゼ国との主張を聞いたうえで、落とし所を模索する事になるが、シャレーゼ国は譲るつもりは無い感じで、強硬姿勢に出るだろうと大きな溜息をつきながら、ジャジーは話す。
ルーカスも、今日は乗り気でない表情をしている。
意見は平行線のまま、交渉決裂になるのが分かっているからだろう。
俺は初日同様に、王妃であるイースとユキノの警護になる。
会談中、イースとユキノは疲れが溜まっていたのか、少しだけ眠ると言って、座ったまま眠りに入った。
俺には分からない重圧があるのだろう。
今日の晩餐会で『三国会談』は幕を閉じる。
明日は、スタリオンとのユキノを掛けた勝負になる。
負ける気は全くしないが、遺恨が残るような事は避けたい。
それに、オーフェン帝国に着てからはシロが一切、姿を現さない。
特に用事も無いので問題ないが、話をする限り苦手な『ケット・シー』に気付かれるのが嫌なようだ。
そこまで、シロが苦手とするケット・シーとはどういう者なのかは、興味がある。
時間も出来た為、クロに連絡を入れると調査は殆ど終わっているそうなので、俺が戻ったら正式に報告すると言う。
結論から言うと、殆どの奴隷廃止反対派は、奴隷商人との癒着や、権力を使った非合法な人身売買に手を染めているそうだ。
自分の快楽の為に奴隷を囲う者や、年頃の女性だけを性処理の道具として囲っている者等様々だそうだ。
快楽に没頭しすぎて殺されてしまう者。
性処理の道具として囲われた女性は、跡継ぎ等を生む事は出来ない為、妊娠の事実が分かると貴族の身内から、死ぬまで酷い嫌がらせを受ける。
どのような状況でも奴隷が幸せに生活が出来る状況は殆ど無いそうだ。
少し話を聞いただけだが、胸糞が悪くなる内容だった。
「主、もうひとつ御伝えしたい事が御座います」
クロが調査の最中に偶然、アモイと言う領主の調査した際に『指名手配犯』のひとりである『デュロック』らしき人物を発見したそうだ。
アモイは、『指名手配犯』のひとりであるランドレスが拠点にしていた廃墟の領主で、王都からの騎士団討伐を頑なに拒んでいた経緯もある。
デュロックは、アモイの指示で強盗や殺人等の裏の仕事を任されている。
アモイがデュロックを匿っているのは、間違いないそうだ。
俺が、ランドレスを倒した事で、王都にデュロック同様に、ランドレスに協力していた事が知られていないか怯えているそうだ。
クロが、アモイとランドレスやデュロックとの関係を調査済みなので、捕まるのは確実だろう。
指名手配犯を匿う事は、重い罪になるからだ。
どちらにしろ、まずはデュロックを捕まえる事が出来れば、アモイの悪事は立証出来ると言う事だ。
クロの礼を言い、連絡を終える。
俺はイースとユキノが、起きない事を確認する。
イースとユキノから隠すように【アイテムボックス】から、トブレに作ってもらった指輪を出す。
明日、正式に皆の前で、ユキノを妻にすると宣言する事を、指輪を見ながら考える。
何度見ても、素晴らしい出来だ。
トブレ本人も最高の出来だと言っていた。
指輪を受取る時に、トブレに感謝をしたが何度でも、感謝の言葉を言いたくなるくらいだ。
やはり、緊張しているのが分かる。
寝ている方向から、物音がしたのですぐに指輪を【アイテムボックス】仕舞い、音がした方を見る。
イースが寝ている姿勢を少し変えただけだった。
俺はユキノの側に行き、ユキノの寝顔を眺める事にする。
ユキノと最初に城で出会った時の事や、今までの事を色々と思い出していた。
明日の事を考えると、自分でも落ち着きが無い事が分かる。
ユキノにプロポーズするのは二度目とはいえ、緊張する事に変わりは無い。
スタリオンには悪いが、対決にはあまり身が入らないでいる。
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