第409話 料理人達の勝負!
厨房では、ビアーノが大声を上げて指示を出している。
今晩の晩餐会に出す料理を作っている。
厨房はオーフェン帝国から借りている厨房になる。
前日がシャレーゼ国だったので念の為、ビアーノ達が料理に入る前に【浄化】を施して、【全知全能】に毒等の害があるような物が無いか確認をした。
【結界】を張ってあるこの厨房には、人族は勿論だが、虫等も入れないようにしている。
料理を作っているビアーノ達を横目に、暇な俺は【アイテムボックス】から、ポテトチップスを出して食べる。
味見等をして欲しいと、ビアーノに言われたが俺は警護の為、ここに居るだけだ。
料理は、料理人であるビアーノ達だけで完成させるべきだと言う。
それに鼓舞されたのか、皆が真剣な眼差しで料理を作っている。
ビアーノ達には、大臣達の分と、護衛三人衆の分も用意してもらう。
勿論、俺の分もだ。
「ところでタクト殿、この火龍酒も頂いて良いのですか?」
ビアーノから、メインの酒が中々決まらないと言っていたので、アル経由で入手した幻の酒『火龍酒』を渡した。
当然、その価値を知っているビアーノは俺が渡した物とはいえ、使うのを躊躇っている。
「最高の料理と、最高の酒で食事している偉い奴等を黙らせてしまえば、ビアーノ達料理人の勝ちだろう」
「まぁ、本来の勝負相手は同じ料理人達なのですが、その考えは確かに気持ちが良いですね」
ビアーノと二人で笑う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
二日目の会談が終わり、晩餐会の時間となる。
料理には【結界】を張り、解除方法はカルアに伝えてあるので、食事の前に解除するように頼んだ。
これでより、最高の状態で料理を提供する事が出来る。
俺も会場に行きたかったが、料理を運ぶのは料理人となっているので、会場入口までは警護するが部屋の中に入る事は出来なかった。
部屋の中では、驚くような声が聞こえるので飾り細工をした料理の評価も良いのだろう。
その後も、運ぶ料理は好評のようで、食べ終わった皿に料理は残っていなかった。
最後に綿菓子を出して、今回の料理は全て出し終わる。
ビアーノが、俺のおかげだと言うので、料理人皆の力だと言いながら、簡単な食事を取る。
一仕事終えたのか、緊張も解けた様子で料理人達は、各々に話し始める。
俺の今日の仕事は、これで終わりだ。
「タクト様、ちょっと宜しいでしょうか?」
「ん、なんだ」
「今、国王様から、開催国であるオーフェン皇帝であるトレディア様が、今回の料理人に礼を言いたいと申されているらしいのです」
「おぉ、それは凄いな。頑張れよ」
「いえ、その……王妃様とユキノ様が最初に料理方法を発見したのは、タクト様と言ってしまったので私と一緒に挨拶をと言われております」
「分かった、一緒に行くか。俺はこの口調だから話せないから、頼むぞ」
「は、はぁ」
オーフェン帝国と、シャレーゼ国の頂点にいる者達に会える事が嬉しかった。
昨夜、話を聞き終わった際に、今回きちんと見ておかないと駄目だと、何となく感じた。
ビアーノが晩餐会の部屋まで来ると、衛兵が俺達が来た事を中に居るトレディアに伝える。
入る指示が出たのか、扉を開けてくれた。
部屋の中は、映画などで見た長い机に白い布が掛かっている、そのままの風景だった。
ルーカスがビアーノと俺を紹介する。
名前を告げられる際に、頭を下げた。
人数が少ない為、名前しか聞いていないが、すぐにスタリオンや、シャレーゼ国の二人は確認出来た。
「とても美味だった。このような料理は、今迄食べた事がない。主催国代表として礼を言う」
「勿体無いお言葉、感謝致します」
トレディアの言葉に、ビアーノが返して御辞儀をした。
俺もそれに合わせるように御辞儀をする。
ルーカスが、用件も終わったので退室するように命令をする。
俺達が頭を上げて、退室しようとすると、
「お前がタクトか! そんな貧弱な身体で俺に勝てると思っているのか?」
スタリオンが喧嘩口調で俺を挑発してきた。
反論するのも面倒臭いので頭だけ下げて、さっさと部屋を出た。
部屋を出る際に、なにやら言っていたがトレディアに止められていたので、そのまま無視をして部屋から出る。
「はぁ、緊張しました」
ビアーノは俺に掌を見せる。掌には見て分かるくらいの汗を掻いていた。
「そんなに緊張したのか?」
「当たり前ですよ。この世界の人族頂点に君臨する方々ですよ」
俺は、魔王やそれ以上の者達と会っているので今更、人族で一番偉いと言われても「そうか」というくらいだった。
まぁ、とりあえず今回の重要人物達の顔は見れただけでも、良かったと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます