第396話 認識!
エドゥアルドの村から少し歩く。
村が完全に視界から消えるのを見計らったかのように、トグルが話し掛けて来た。
「今迄、この辺りに居なかった魔犬が、いきなり現れるのは、不自然だな」
流石にトグルは気が付いたようだ。
「あぁ、実はこの辺りに生息していた野犬が魔犬になった」
「どういうことだ?」
俺は、野犬が魔犬になる経緯を話した。
「おい、タクトそれって……」
トグルが思わず話すが、途中で口を噤んでアスランの方を向く。
「あぁ、ライテックと同じ状況だ」
間接的とはいえ、アスランに【呪詛】を施した相手には違いない。
「そうすると、あの村の人達も、いずれは魔人になると言う事ですか?」
アスランが心配そうに話す。
「いや、魔人になるほど多く魔素を摂取はしていなから、その点は問題ない」
「タクト、魔素とは何ですか?」
俺は、アスラン達に魔素の説明をする。
魔素とは、魔力の源で攻撃魔法使用時にも使われる。
但し微量な為、人体への影響は無いし、魔素を認識している者も居ない。
「そうですか、相変わらずタクトは、物知りですね。先程の話ぶりだと、他に何か問題があるようですね」
「あぁ、通常よりも過剰に魔素を摂取したから、個人差はあるにしろ、魔素の影響で寿命が縮まるのは、間違いないだろう」
「そんな……」
俺の言葉を聞いたアスラン達三人は、驚いていた。
「この事を伝えると、村人たちに不安を与える。実際に、どれだけ寿命が縮まるかも分からないからな」
「確かにそうですね……。魔素を取り除く事は出来ないのですか?」
「今の所、方法は無いな」
アスランは悔しそうな表情だ。
「私の力でも、どうしようもないですかね」
「タクトが無理と言われているなのですから、ユキノでも無理でしょうね」
「そうですよね……」
ユキノも、力になりたいと思い発言をしたのだろうが、【全知全能】に聞いても「取り除く方法は無い」との回答だった。
聖女であるユキノでも、無理だろう。
……いや、俺が【全知全能】に聞いたのは、俺のスキルで『魔素』を取り除く方法だ。
改めて【全知全能】に、人体から魔素を取り除く方法を聞く。
回答は、聖女のユニークスキル【神の癒し】で取り除く事が可能だった。
……【神の癒し】は無詠唱で魔法を掛ける筈だったが?
それに【神の癒し】であれば、俺も習得している。
詳しく聞くと【神の癒し】は、治療系の魔法の一種で無詠唱で【回復】と【治療】そして、体内にある不純物や害のある物の【浄化】が行えるスキルだった。
エリーヌは、そのような事は言っていない。
言っていたとすれば、俺が【回復】と【治療】の同時魔法を掛ける意味が無いので、当然使用している筈だ。
聖女三点セットで唯一、スキル干渉していないスキルだったので気にも留めていなかった。
しかし、【神の癒し】で魔素の除去が可能であれば、先程の【全知全能】の答えと矛盾が生じる。
再度、俺のスキル【神の癒し】で、魔素の除去が可能かを聞くと「可能」と回答がある。
もしかして、スキルは全てを理解していなくても一部を理解していれば、習得可能という事なのだろうか?
もしそうであれば、他のユニークスキルでも、説明を受けずに理解したスキルや、説明した本人が知らなかった場合、他の能力があるという事も考えられる。
ユニークスキルを理解しなければ、そのユニークスキル本来の能力を使えないという事になる。
今後は、ユニークスキル習得後に【全知全能】で確認する事が必須だと感じた。
しかし、今更「魔素の除去出来ます」とは、流石に言いづらい。
ここは、ユキノに頼むとする。
その方が、ユキノも自信が付くだろう。
問題はユキノが、自分は聖女だと知らない事だ。
まずは、自分が聖女だという事を認識させる事から始める必要があるが……。
「しかし、魔素の影響を受けた魚を食べて、野犬が魔犬になったのであれば、魚自体が魔物化していないのは変ですね?」
「……確かに、そうだな」
俺の説明で、疑問を感じたアスランが呟く。
確かに、アスランの言う通りだ。
魔素の影響で魚が変化していないのに、野犬のみが魔獣化するのは変だ。
【全知全能】に確認してみる。
魔獣化や魔人化になる条件としては、魔素を摂取するだけでは条件を満たしていないと答えた。
妬みや嫉妬等の負の感情が大きくなければ、変化はしないという事だった。
負の感情が大きくなければ無ければ、いずれ魔素に耐え切れずに息絶える。
魚を取っていた村人が、奇形の魚は触らずに湖に戻したと言っていたのを思い出す。
その奇形した魚は、多分魔獣化した魚だったのだろう。
攻撃力も低かったのか、村人に危害も加えずにいた為、奇形の魚という認識で終わったのだと思う。
考えながら歩いていると、目的の湖が見えてきた。
とりあえず、魔素除去の件は、湖の調査をした後にする。
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