第329話 用心深さ!
階段を上ると先程、下りた時と異なる場所に出る。
階段は一箇所しかないので、間違えていることはない。
洞窟の中だが、天井一面が光を発して、周りには植物が生えている。
地上とさほど変わらない。今迄の迷宮内の部屋とは異なる空間だ。
鳥の鳴き声等も聞こえるし、小動物が不意に出てきて俺を見ると警戒したのか、木の影に隠れるように姿を消す。
心が休まる空間なので、暫く休憩したい気分にさせるが、これも罠なのかと勘ぐってしまう。
樹に手を当てて、
一応、
散歩がてら、歩きながら進むが、あっという間に散策を終えてしまう。
思っていた程、広くはないようだ。しかし今回も、次の進む道や階段が見当たらない。
仕方ないので、もう一度散策する。
やはり、次の場所に行く道や、次の階層に行けそうな階段を見つける事が出来ない。
仕掛けがあると思い、怪しい岩等を念入りに触ったりして確認するが、特に変わった様子もなく何か作動する気配もない。
手詰まりだと思いながら、光のさす天井を見上げる。
よく見ると、天井から光がさしていない部分がある事を発見する。
その場所近くまでに届くようにジャンプをしてみると、光源に近い為か物凄く眩しい。
目を細めて見てみると。人ひとり入れるくらいの穴がある。
……もしかして、これがここから出る為の穴(道)なのか?
ここまで、俺のようにジャンプするか、飛行能力でも無い限りこの穴まで辿り着くことは不可能だ。
身体能力やスキル等の飛行能力ありきでの攻略だとしか思えない。
クロのように飛べる魔獣等がいたとしても、これだけの距離のロープ等は用意していないだろう。
この場所での現地調達を考えても、それだけの強度を持ったツル等の植物は無い。
そう考えると、殆ど攻略不可能に近い。流石、第三柱魔王のダンジョンだけはあって、侵入者に対して、攻略させる気が無く、撃退目的なのだと感じた。
もう一度、ジャンプをして穴の壁を掴もうとすると、壁が滑り掴むことが出来ない。
まさか、ここまで念入りな妨害をされるとは思っていなかった。
落下しながら、ロッソの用心深さというか、徹底した妨害行為に関心もしていた。
何年もダンジョンから出てこないと言う事は、ニートに近い存在なのかも知れない。
地面まで落ちると、再びジャンプをして穴の中に入り、ムラマサを呼んで壁に突き刺す。
ムラマサを踏み台にして更に上へと行く。
ジャンプと同時に、ムラマサを呼んで落ちそうになると壁に突き刺す行動を何回か繰り返す。
穴の向こうから光が見える。やっと出口かと思いながら、ジャンプをする。
穴を抜けると、椅子やら机等が配置してある部屋に出た。
生活感は、あまり感じない。
机の上を指でなぞると指先に埃がついた。
やはり、随分と長い間使われていない部屋のようだ。
どこそかのゲームの勇者のように、勝手に部屋を荒らして金貨等を探す気も無いので、扉から部屋を出る。
扉の先には首無しの騎士が、机の上置かれた女性の首に食べ物を食べさしている光景が目に入った。
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