第305話 冒険者ギルド高ランク昇級試験-7!
開始と同時に、セルテートが一直線に俺へと向かってくる。
攻撃は早く適切に急所を狙っている気がする。……俺を殺す気か?
全て避け切っていると、後ろからロキサーニが剣で攻撃をしてくる。
セルテートの攻撃の邪魔にならないように、そしてセルテートの攻撃しやすい場所へ俺を誘導してるような攻撃だ。
ふたりの攻撃を躱しながら反撃を考えていると、セルテートの身体がうっすらと光っている。
どうやら、ステラが攻撃補助系の魔法をセルテートに掛けたようだ。
「なかなか、やりますね。師匠が気を付けろと言ったのがよく分かりました」
戦闘中にロキサーニが俺に話し掛けてきた。
「師匠?」
「はい、護衛三人衆のロキです」
「ロキにロキサーニという事は、名前も似せたのか?」
「師匠より名前の使用許可を頂き、本名のサーニの前につけさせて頂いております」
「成程、こっちは私怨もあるって事だ」
「若干ですがね」
ロキサーニが横から大きく切りかかるので、跳んで空中に逃げる。
その瞬間を狙っていたかのように、セルテートが俺に向かって蹴りを入れる。
両腕でガードするが、後ろに大きく飛ばされるが体勢を整えて着地する。
観覧している冒険者達は、大歓声を上げていた。
セルテートは、今の攻撃で仕留めたと思ったのか追撃してこなかった。
防戦一方なので、そろそろ反撃に出る事にする。
セルテートに向かい、右手で「来いよ!」と合図をすると案の定、俺に向かってきた。
攻撃を躱しながら、セルテートの右手を掴みステラに向かって投げる。
同時に【火球】で攻撃しようとするが、俺とセルテートの間にロキサーニが入り、セルテートへの追撃を邪魔しようとしている。
俺はお構いなしに【火球】を撃ち込むが、ロキサーニが剣で攻撃の軌道を変える。
大きくそれた【火球】だったが、【命中自動補正】がある為、弧を描きながらステラとぶつかったセルテートに命中した。
ステラはセルテートに【回復】を掛けている。
もしかして、ステラは攻撃魔法も回復魔法も使える『賢者』なのか?
以前にユキノから、『賢者』は国にひとりしかいないと、聞かされたことがあったので覚えていた。
「ステラは、賢者なのか?」
一応、確認の為に聞いてみると「はい」という答えと同時に、激しい冷気が俺の周りを包み始めた。
「タクト殿に魔法攻撃が通じないのは、既に存じ上げております」
優しい口調だ。
しかし、ステラが詠唱していた気配はない。無詠唱で魔法を発動させたと考えるのが自然だ。
冷気の攻撃を受けている間は、ロキサーニも攻撃範囲に入ってこない。
「早く降参した方がいいですよ」
「それは御親切に」
足元も凍り始めて、呼吸するのも苦しくなってきたので、【炎波】を自分に使うと氷は解け始めて、周りに水蒸気が発生した。
すかさず、ステラの所に移動をして気絶させようと首元を攻撃しようとすると、セルテートがそれを阻む。
対人戦で三対一は初めてなのだが、思ったより難しい。
確実に一瞬で仕留めないと、他の誰かがフォローする為厄介だ。
ステラを狙うと見せかけて【神速】を使い、セルテートまでの距離を一気に縮めて鳩尾に一発入れる。
セルテートも反応出来ていなかったのか、後方に飛ばされて観客席に埋まった。
近くの冒険者が、セルテートの意識が無い事を大声でヘレンに伝えていた。
これで俺の勝利の筈だが、戦闘は終わらなかった。
セルテートを倒されて逆上したステラが俺に向かって、魔法攻撃を仕掛けてきた。
「おい、俺の勝ちじゃないのか?」
「セルテートをあんな目に合わせておいて、勝ち逃げなんて絶対に許しません」
「俺は勝ったら駄目なのか?」
「うるさいですわ!」
ステラは支離滅裂な事を言っているが、観客である冒険者達もステラを煽っている。
当然、俺への魔法攻撃は攻撃者であるステラに跳ね返る。
しかも、我を忘れていたのか強力な氷魔法の攻撃だったので、ステラ自身が凍ってしまった。
勝手にステラが自滅してくれたのは、俺としても助かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます