第273話 婚約の経緯!
「これも、食べてみてくれ」
ポットチップスにポテトサラダ、おでんを出す。
一瞬、驚くが黙って食べ進める。
「これはなんの野菜だ?」
ガイルにも、他の者達に説明したのと同様に、ジャガイモと大根を見せて説明をする。
「確かに、今迄の食文化を覆す発見だな……」
「これで、飢えで苦しんでいる奴達が少しでも救えるなら、いいんだけどな」
「確かに、しかしこれは広まるまでに時間が掛かるだろう」
「そうだな、それと根菜が全て食べれると誤解したり、調理方法を間違ったりすれば毒にもなるからな」
「……おい、ビアーノ! こういう時こそお前の出番じゃないのか?」
ガイルが、ビアーノに向かい、何か策があるように話した。
「……私達が発表すれば、国民に広がるのは早いと思います。それに調理方法や食べれる物も、確実に伝えれば問題無いと思います。只、別の問題があります」
「……別の問題?」
「はい、この発見は先程、ガイルが言ったように食文化の革命と言っても過言ではありません。後世まで名が残ります。私達が公表すればその名誉を、タクト様、いえタクトさんが受けれない可能性が高いです」
「そんな事か、別に気にするな。俺は名誉なんて興味無いから!」
あっさりと断る俺に、ビアーノは驚いている。
「しかし、それなりの報酬もあります。そんな簡単には……」
「じゃあ、俺が食べれる根菜をまとめて、それにあった調理方法も教える。それをビアーノ達から伝えてくれ。その際に、協力者として『四葉商会』を出してくれればいい」
「たった、それだけでいいのですか?」
「調理の基本が分かれば、ビアーノ達料理人の方が、より美味しい料理を作れるだろう? 俺は料理人じゃないからな」
根菜の資料を俺がまとめた後に、ビアーノ達に渡して、再度話し合いをしたいと申し出たので了承した。
最初の険悪な雰囲気から一転して、ガイルとビアーノは楽しそうに話している。
勘違いがあったとはいえ、やはりライバルで同じ料理人なのだ。
同僚というか同期がいるのは、正直羨ましい気持ちになる。
「あら、もう閉店ですの?」
入口の方で声がするので、振り向くとイリアと、疲れ切っているシキブが居た。
「あぁ、コイツ等が来たんで、早めに店を閉めた」
「そうでしたか、残念ですが仕方ないですね。ギルマス、他で食事をしますよ」
残念そうなイリアを見かねたガイルがロイドに向かい「お前、作ってみるか?」と聞いていた。
ロイドは嬉しそうに「はい!」と答えていた。
「イリア、うちの新人が御前達の分作ってやるから、入ってきていいぞ!」
「ありがとうございます」
イリアは礼を言い、魂の抜け切ったシキブとテーブルに座る。
俺は、ガイルに断ってふたりに酒を持っていく。
「お疲れ! そしてイリア結婚おめでとう!」
イリアの結婚を祝う。
「まだ婚約中です」
「そうだったな、まぁ祝いに奢るぞ」
「そうですか、ありがとうございます」
その後、イリアにプロポーズまでの話を聞いたが、思っていた感動的なものでは無かった。
『ブライダル・リーフ』に飾ってあったイリアとエイジンの写真が、思っていた以上に評判となり,
イリアとエイジンも色々と聞かれたそうだ。
エイジンは誤魔化していたが、イリアは交際を断言した為、二人の仲が険悪になったそうだ。
イリアとの交際を否定した理由を、エイジンは話すがイリアとしては納得出来る理由でなく、お互いの将来が違う方向を見ているのであれば、別れた方が良いという結論にまで至った。
翌日、エイジンが再度イリアに自分の思いを伝えて、プロポーズしたそうだ。
イリアは、その場で返事をせずに考えると言った事で、また喧嘩が始まったが理由を聞くと、エイジンの仕事の関係でジークを離れる可能性や、今後の生活基盤等を真剣に考えて答える必要があると答える。
エイジンもイリアの考えが分かったのか、今抱えている結婚に対する問題点は、お互いの意見が納得いくまで話し合う事で落ち着いたそうだ。
「話を聞くと、俺が原因で婚約させたみたいだな……」
「半分正解ですね。 まぁ、ギルマスが仕事を貯めなければ、私も自分の問題と向き合えるのですがね」
シキブの方を見ると、申し訳なさそうに下を向いている。
「ところで、隣の女性はどなたでしょうか?」
隣? イリアの方を向いて話をしていたので、身体を反対に向けると、ユキノが座っていた。
「あぁ、ユキノと言ってこの国の第一王女だ」
俺の言葉に、シキブがユキノを見る。
疲労困憊で今迄、気が付かなかったようだ。
シキブを静かにさせる時は、イリアが適任だと感じる。
「……どうして、ユキノ様が?」
信じられない様子なので、ゴンド村の視察の件を話す。
つまみが無いので、ポテトチップスとポテトサラダに、おでんを出して「新しい料理だ」と紹介する。
イリアは、丁重にユキノに挨拶をして、挨拶が遅れた非礼を詫びていた。
ユキノは、いつも通り微笑んでいた。
イリアとシキブにも、ポテトチップス等は気に入って貰えたようだ。
ロイドが料理を運んで来たので、俺達はカウンターに戻る。
ガイルとビアーノは、完全に酔っぱらっていた。
これ以上、呑ますと王都に戻ってからが大変そうなので、ビアーノとユキノを先に王都に送り届ける事にする。
ユキノは寂しそうだったが、仕方ない。
再び、ガイルの店に戻るとロイドはカウンターで、俺達が食べ終わった食器を洗っていた。
「本当に真面目だな!」
「そんなことないですよ」
笑顔で言葉を返してくれる。
ロイドが洗い物を終えると、イリア達が帰ると言うので、半分寝ているガイルを起こすが、今日はここに泊まると言うので、そのまま寝かしてやる事にして俺達も一緒に帰る事にする。
別れ際、シキブに明後日の朝に王都へ出発する事を伝えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます