第263話 グラマスへの報告!

 国王一家の五人も、一番控えめな服でも十分に王族のオーラを出している。

 護衛三人衆は、着替えてさえいないが、国王一家よりも目立たない服装だ。


「本当にそれが、一番目立たない服なんだろうな!」

「そもそも、王族が目立たない服なぞ持っている訳無いだろう」


 確かに、正論だ。

 王族の衣装は、国の繁栄を象徴する物であるので、豪華な服しかないだろう。


「そうだな、持っていないなら仕方ないな」

「そういうことだ」


 ……なんか、負けたみたいで悔しいな。


「ジラールも突然、呼び出して悪かったな」

「いや、こちらこそ気を使ってもらい、すまない。 それにオークロード討伐感謝する」


 ジラールも突然、呼ばれたので急いで来たので、一応謝っておいた。

 そういや、ジラールは俺が魔王になった事を、知らなかったな。

 ギルドを束ねている責任者であれば、報告の義務があるよな。


「ここにいる皆は知ってるが俺、魔王になったから!」

「……はぁ?」


 何をこんな時に冗談を言っているんだという顔だが、そう思われても仕方が無い。


「本当の事だ。 先程、第一級極秘事項に決定した」

「そういう事だ。 今迄通りに冒険者のままだから、宜しくな!」

「宜しくなって、ほんの数日でオークロードを討伐した事も信じられないのに、いきなり魔王だと言われても……」

「まぁ、信じられないかも知れないが、そういう事だ。 それと、昇級試験も受けるから頼むぞ!」

「昇級試験と言ってもな……魔王の相手が出来る試験官なんて、そうそういないだろう」


 ジラールは困った様子だ。


「それなら、私達が相手を務めよう」


 ロキとカルアが名乗り出た。


「国王様より、タクト殿にランクSSSまで試験を受けさせるように言われています」


 そういえば、そんな事を言われた気がするな。


「しかし、ランクSSSのふたりはロキ殿とカルア殿としても、ランクAからSSまでは別の試験官が必要になります」

「それなら、ランクAはナイル、ランクSはコスカにすればいいだろう。 奴らにもリベンジの機会が必要だしな!」

「成程、確かに試験官としては申し分ありません。 そうすると残りの試験官は、もしかして……」

「あぁ、『三獣士』に任せる」

「しかし今、三獣士は別の指名クエスト中では?」

「先日、完了してこちらに帰還中だ」


 俺の知らない所で、話が勝手に進んでいるな?


「ちょっと、いいか?」


 俺は幾つか質問をしてみる。


 まず、試験官が何故、そんなに多く必要なのかだ。

 俺が知識不足だけのようで、ランクAとSはそれぞれのランク以上の試験官ひとりと対戦する。

 ランクSSは、同ランク以上であるランクSS以上の試験官をふたり相手に対戦。

 ランクSSSは、ランクSSSの冒険者三人相手の対戦になる。

 勝敗でなく実力を見極める為の対戦になる。


 次に、『三獣士』についてだ。

 国王を守る『護衛三人衆』に対して、国に不利益を与える魔物の討伐や、他国からの侵略の情報があれば、国境で待機をする。


 守りの『護衛三人衆』に対して、攻めの『三獣士』と言うところか。

 当然、実力もロキや、カルアと同等。 攻撃に関しては、実力は上かも知れないらしい。


「なんで、そんな特別待遇なんだ? もっと、普通の冒険者でいいだろう?」

「そもそも、ランクSSSの受験者は、年に一回いるかどうかだ。 それに普通は順を追って昇級する。 一回の昇級試験で、いきなりランクSSSまで受けようとする奴なんて前代未聞だ」


 ジラールは、俺が非常識な事をするかのように話すが、別にルールから外れた事をしている訳でもない。

 冒険者として、正当な権利だが、ジラールの苦労も分らなくはない。


「そうか、なんか面倒なんだな」

「ルンデンブルク卿のお言葉を借りれば、タクト殿は規格外なのですよ」


 ターセルが、会話に入ってきた。

 規格外という言葉は別に、ダウザーの言葉でもないけどな。

 とりあえず、昇級試験が受けられる事は確定した感じなので、ゴンド村への移動の説明に入る。


「ゴンド村近くまで移動するが、アルはダウザー達とジラールとソディックを、ネロは護衛三人衆を頼む。 俺は国王一家を【転移】させる」

「場所は、入口前で良いのか?」

「もう少し先だ。 村を外からも見て欲しいからな。 先に俺が行くから、場所は特定できるだろう?」

「問題ない。 多少の誤差は【転移】した後に調整して、近くまで行く」

「頼んだぞ!」


 国王一家を近くに呼ぶ。

 何故か、ユキノが腕を組んできた。


「いや、つかまらなくても大丈夫だぞ」

「えっ!」


 ユキノは、恥ずかしそうに、俺の腕から自分の腕を外した。

 下を向いてはいるが、恥ずかしがっているのが良く分かる。


「相変わらずユキノは、早とちりだな」


 ルーカスは、半分呆れた様子だ。


「転移魔法なんて初めてですので、どうしていいか分からなかっただけです」


 ユキノは反論していた。


「とりあえず、俺から五メートル以内にいれば俺と接触していなくても大丈夫だ」

「妾は、十メートルでも大丈夫だぞ!」

「私は、十二メートルでも大丈夫なの~!」


 魔王ふたりが俺に対抗するかのように言ってきた。


「控えめに言っただけだ。 十メートルでも十二メートルでも、問題ない」

「そうなのか、つまらん」

「師匠に勝てると思ったのに、残念なの~!」


 アルとネロとの会話が、より俺を最強魔王ふたりよりも強い魔王だと思わせている。


「とりあえず、ゴンド村には何も話していないから、権力をかざすのは止めてくれよ」

「大丈夫だ。 これでも温厚な国王で親しまれているつもりだ」


 回答に、やや不安があるがルーカス達を信用するとしよう。

 本当は、事前に連絡をしておきたかったが、ゾリアスが俺たちが到着するまで、どういう気持ちで待っているかを考えると、知らせるのを躊躇った。

 それに、村長のゴードンは緊張で死ぬかも知れない。

 俺なりに考え抜いて出した答えだ。 間違っているかも知れないが、それは仕方ない。

 文句は甘んじて受けよう。

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