第233話 狐人族達の処分!

 翌日、ライラから連絡を貰ったので、シキブ達と合流してからスグに向かう事を伝える。


「うん、待っている」


 と元気な声で答えた。

 話し方から空元気では無い気がするが……



 約束通りシキブ達と『狐人の里』に戻って来た。

 入口に着く前に俺を見つけると、ライラが駆け寄って来てくれた。

 腰を下ろして、目線を合わす。


「大丈夫か?」


 俺の問いに、小さく頷く。


 里の入口の方に目を向けると、他にも数人の狐人が俺達を待っていた。

 その中に、ジェロも居た。

 昨日と違い、友好的な雰囲気が漂う。


 ライラに、被害の無かった住居に案内される。

 顔見知りという事で、ジェロから昨日の話し合いの結果を教えて貰う。


 本家と取巻きの者達の処分は、この里と関係する集落からの追放と出入り禁止。

 他の場所に住んでいる分家達の集落にも、この事を伝えるので、必然的に分家の集落にも出入り禁止になる。

 他の派や領主にも、今回の事を連絡する。


「ちょっと、いいか?」

「はい、何でしょうか」


 気になっていた事を聞いてみる。


「狐人族は、どこの集落でも本家やら分家といった制度を導入しているのか?」

「はい、基本的には本家を中心に、里や集落で生活します」

「他の派ってことは、幾つもあるのか?」

「はい、大きな集落から小さな集落までありますので、正式な数まで分かりません」


 狐人族は、こういう感じでの暮らしが普通なのか。

 群れで過ごすといった感じなのか?


 俺は礼を言って、話を続けてくれるように頼んだ。


「今後、この里では本家や分家関係無く暮らす事で皆、納得しました」

「そうか。 それで、新しい頭首は決まったのか? 尾の本数で決まるんだろう?」

「はい、今のところはライラになりますが、まだ幼いので代理を立てる事になります」

「ジェロが代理になるのか?」

「いえ、僕も補佐的な事はしますが適任者がいますので、そちらにお任せしようかと思っています」

「適任者?」


 ジェロが合図をすると、入口からラウ爺が申し訳なさそうに入って来た。


「……ラウ爺?」


 明らかに敵意が無い事が分かったので、普通に接する。


「なんで、ラウ爺なんだ?」


 ラウ爺に代わり、ジェロが説明をする。

 ジークから戻って来くると、ライラの報告や里の拡張の件を報告した。

 しかし、森で問題を起こしたのも取り巻きの者らしく、身内の恥なので口外禁止とされていたので、何度も前頭首と話をしていたが、相手にして貰えなかったらしい。

 最後には、「黙っていれば気付かない」と俺に事情を話さないように言われたが、本家という事もあり逆らえなかった。

 ライラの教育係という事もあるが元々、分家に対しても陰ながら援助をしたりとしていた為、頭首代理として皆からの推薦があったので、罪滅ぼしも含めて受けたそうだ。


「タクト殿、本当にすまなんだ」


 ラウ爺は、深々と俺に向かって頭を下げた。

 話をしていた時の違和感の理由は、これだったのか!

 ラウ爺も、俺と前頭首の板挟みで大変だったのだろう。


「俺の方こそ、事情を知らなかったとはいえ、悪かったな」


 一応、ラウ爺に詫びておく。


「いえ、今回の件は全て我々、狐人族に非があります」


 再度、頭を下げると他の者も同じ様に頭を下げた。


「気にするな。 それよりも里の復旧や拡張を急ぐんだろう?」

「確かにそうですが……」

「俺がやってやるから、安心しろ!」


 狐人達は、驚きながらも喜んでいる。


「……しかし」

「気にするなって、言っているだろう」


 暴動の後始末をする為に立ち上がる。

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