第201話 友の友は、友!

 ルンデンブルクに戻ると、ミラとミクルは用意が終わっていた。


 ダウザーの着替えている間に、写真の事を説明した。

 ミクルは、実物を見ているのでミラに向かって、いかに綺麗で素晴らしいかを熱弁している。


 やはり、突然ダウザー達を連れて行くのは気が引けたので、リロイに連絡をする。


「リロイ、もう少ししたら客間に【転移】するから、待っていてくれ」

「はい、お待ちしております」

「それと、リロイ達に直接会いたいと言うから、ルンデンブルクの領主とその家族を連れて行くから!」

「えっ! いまなんとおっしゃいましたか?」

「領主のダウザーと、夫人のミラに娘のミクルを連れて訪問する」

「そ、そんな、突然! なにも用意が出来ておりません」

「あぁ、そこは気にするな!」

「いや、しかしですね」

「大丈夫だって、俺を信じろ!」

「……はい」


 リロイとの連絡が終わると、ダウザーの着替えが終わって戻って来た。


「じゃあ、行くぞ!」


 リロイの屋敷へ【転移】した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ルンデンブルク卿、お初にお目に掛かります。 ジーク領主のリロイと申します。 この度は御足労頂き誠に感謝致します」

「リロイ殿、突然の訪問申し訳なかった。 使者であるタクト殿には大変世話になったので、どうしても礼をと思い、無理を言って連れてきてもらった」


 その後も、家族同士で会話をしているが、ニーナの緊張が半端ないのは伝わって来た。

 今後も、こういった交流があるのだから、いい練習になっただろう。



「それが、結婚指輪というものですか?」


 ミラが、ニーナに尋ねる。


「はい。 たかが指輪かも知れませんが、不思議とお互いの気持ちが繋がっている感覚になります」

「それは、羨ましいですね。 私達も欲しいくらいですわ」

「私達と同じデザインで宜しければ、タクトの所で販売してます」

「そうなんですか!」


 ミラがこちらを見るが、内容は聞こえていたので、「あとで売ってやる!」というと、嬉しそうにしていた。


 ダウザーが公私を切り替えているのは、正直凄いと思った。

 あれだけ、砕けた喋りをしていたのに、今は完全に貴族の振る舞いだ。


 貴族同士の座談会なので、特にする事もない。

 暇なのが伝わったのか、ダウザーが俺を席に呼んだ。


「貴族同士の所に、俺を呼んでなんだよ!」


 嫌味っぽく話をするとリロイが、


「ルンデンブルク卿が、タクトの友人だと伺ったので、私とも友人だと仰っていただけたのですよ」


 友人が増えた事が嬉しい様子だ。


「貴族の派閥争いにならないのか?」

「それは大丈夫だと言いたいが、正直約束は出来ない。 元々、私の派閥なんてものは無いし、あえて派閥と言うのなら国王派になる。 しかし、私としてはジーク領主であるリロイ殿に、不利な事はしないと何にも優先して約束をしよう」

「それは、ありがたい事です」

「そうなのか、よく分からんが俺に危害を加えるなよ!」

「それは、大丈夫だ。 お主の怖さは知っているからな!」


 笑い話にしているが、事態が変われば笑い話では済まなくなる。

 そういった事態が来ない事を祈るだけだ。


「お主らに、これを渡しておこう」


 ダウザーは、紋章の入ったボタンの様な物をテーブルに置いた。


「何かあった時に、ルンデンブルク家の後ろ盾がある証明になる」

「こんなものまで、有難う御座います」

「良かったな、リロイ」

「タクト、ひとつはお前のだ」

「……俺?」

「あぁ、その変な格好だと目立つから、身分証明も含めて服に付けておいた方がよいぞ」


……変な恰好って、失礼な。


「いや、さっきも言ったが貴族の争いに巻き込まれる面倒事は、ゴメンだ」

「……別に身に着けなくても良い。 何かの時に役に立てば良い位だ」

「……もう一度確認するが、この紋章のせいで派閥争いに巻き込まれないよな」

「多分、大丈夫だ。 何かあれば、その場で踏みつけて否定してくれて構わない」


 ……いや、この紋章を踏むなんて、国家反逆罪に等しいレベルじゃないのか?

 この調子で行くと、俺が受取るまで同じ会話になる気がした。


「……とりあえず、貰っておくが俺が悪事に使っても文句言うなよ!」

「お前が、そんなことしないだろう!」


 ダウザーが少し口角を上げながら話す。


「……ダウザーの評判が下がるような事はしないとは言えないけどな」


 早速、上着の襟に付ける。

 魔法が施してあるのか、何もせずに襟に引っ付いた。


「これ、取れるのか?」

「あぁ、付けた本人であれば脱着可能だ」


 便利な魔法だな。

 ダウザー達には気づかれないように【隠蔽】で隠す。

 必要な時だけ解除すれば問題ないだろう。

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