第195話 領主ルンデンブルクと対面!
朝一番で、リロイの所に行き『お返しの品』と『手紙』を受け取る。
一応、リロイに服装的に問題無いかを確認するが、これがあれば大丈夫と『委任状』を貰った。
その場で、【転移】を使い、魔法都市ルンデンブルクの近くまで移動する。
脇見もせずに、目的地である領主の屋敷に向かう。
屋敷の門番に、『委任状』を見せて領主との面談を申し込む。
屋敷内の誰かと連絡をした後に、三〇分程度であれば今からでも良いが、それ以降だと夕方になると言われたので、「手紙と御返しの品を届けるだけだ」と多くの時間は必要ない事を伝えて、今からの面談で頼むことにした。
すぐに、別の衛兵三人が現れて、武器などが無いかボディチェックを受けてから、屋敷入口まで案内される。
屋敷の入口には、既に執事らしき人物が立っており屋敷内に案内された。
リロイの屋敷とは比べ物にならない位に広い。
すれ違う使用人も多く、改めてルンデンブルク家の権力の強さを思い知った。
案内して貰う途中で、『呪詛証明書』を提示して執事より説明して貰うように頼むと、承諾して貰えた。
大きな扉の前で執事が止まり、扉を叩いてから中に入る。
正面には領主。
その横には領主夫人と思られる女性が座っており、両側の壁沿いに数人の大臣らしき者と、衛兵が武器を持ったまま待機している。
領主の印象は、三〇代中頃で体が引き締まっており威圧感がある。
冒険者と言っても違和感がない。
執事の言われるまま、片膝をついて頭を下げる。
まず、俺の【呪詛】を話してもらい、領主にも納得して貰えた。
執事に『お返しの品』と『手紙』を渡すと、受取った足で領主の所まで行く。
下を向いている為、音と会話のみで手紙を読み始めたのを見計らう。
手紙を開く音がしたので【念話】で領主と夫人に話しかけた。
「誰だ!」
領主は、いきなり大声を出して、周りを見渡す。
領主婦人も同じ様子だ。
何事かと周りの衛兵が、身構えて周囲を警戒する。
警戒されているが続けて、領主と夫人にしか聞こえていない事と、会話の主が俺だと伝える。
そして、他人には聞かれるとマズイので、そのまま手紙を読むふりをして貰い聞いて欲しい事を伝えると共に、ミクルを先日助け出して保護していることを伝えた。
「何だと!」
再度、大声を出したことにより、部屋内に一気に緊張が走った。
大臣達は、手紙の内容が逆鱗に触れたと思っているようで、俺に対して手紙の内容についてや文句らしき事を言っている。
俺は、そんな事に構わず再度、他人に聞かれるとミクルに危険がある為、手紙を読むふりをして聞いて欲しいと伝える。
信用が無いのであれば、ミクルより聞いていた合図で確かめて貰っても良いので、俺に動いていい許可が欲しいと訴えた。
暫くすると、
「リロイ殿の使者、タクトと言ったか? 楽にしてこちらを向け」
領主が、俺の訴えに応じてくれた。
「何か披露したいものがあると書かれていたが、披露出来るか?」
「勿論だ!」
俺はその場で立ち上がり右手を差し出して、親指から『一・二・三』と数を数えた。
領主と夫人は、理解出来たようだ。
しかし、他の者は何の事か分からない為、馬鹿にしているような行為をした俺に対して罵声を上げる。
「静粛に!」
領主は、他の者を黙らせた。
「まだ、続きはあるか?」
静寂の中、領主は俺に問いかける。
「あぁ、今からが踊りだ!」
「分かった。 続けるが良い」
その後、教えて貰った人差し指を領主夫人に向けて、交互に出して「ツン、ツン、ツン」と言う。
領主夫人は、うっすら涙目になり口元を手で覆い、下を向いた。
領主は、一呼吸置いた後に大きな声で笑った。
「なかなか面白い踊りだな。 リロイ殿に返事があるので、後で部屋まで来るように」
信用して貰えたようだ。
「それと、この後の予定は全てキャンセルだ」
配下の者に伝える。
大臣らしき者達は慌てていたが、領主の言葉は絶対のようだ。
他の部屋で待機をするように命じられた。
部屋への案内途中で、執事が話しかけてきた。
「領主様が、あそこまで驚かれるとは、さぞかし素晴らしい手紙だったのですね」
「中身を見ていないから、分からないけどな」
「久しぶりに、活気のある領主様が見れた事だけでも感謝致します」
「あぁ、伝えておくよ」
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