第170話 族長としての威厳!

 アラクネ族の集落に戻って来た

 クララを呼ぶと、上から糸を伝って下りてきた。


「これが依頼の品だ」


 【アイテムボックス】から、街で買い占めた鏡を十七個出した。


「これで信用してもらえるか?」

「信用しよう。 因みにこれは全部貰ってもいいのか?」

「あぁ、全部やる!」


 俺の言葉に反応して、一斉に上からアラクネ達が下りてきて、鏡を奪っていった。


「こちらからの制作依頼だが、聞いてくれるか?」

「約束だからな。 しかし何故糸だけなんだ?」


 クララが言うには、アラクネ族には【魔裁縫】や【魔力付加】のスキル持ちが多数いるので、服製作も含めて魔人族からは、依頼を受けることが多い。

 因みにデザインも話し合って、決める事も出来る。


「全部の工程を依頼してもいいのか?」

「あぁ、構わん。 その代わり報酬は貰う」


 一気に悩みが解消した。

 あれこれと悩んでいた自分がウソのようだ。


「それじゃあ、頼む」


 今回の発注は全部で六着。

 ウェディングドレスとタキシードのバージョン違いを三種類。それにカンナの師匠の服だ。

 それに俺の服もだ。


 いつまでも村人の服だと、色々と不便なのは分かったし……


「納期は、どれ位だ?」

「大体、一着三日ってところだ」


 ……物凄く早いな。


「それが、人族に出回っても問題無いのか?」

「そうだな。 私達が関係している事が分からなければ良い」

「出来るだけ努力はする。 報酬はなにで支払えばいい?」


 ……森の中で生活するなら人族の金は不要だと思う。

 魔族ならではの報酬になるのか?


「人族の食べ物や品物を持ってきてくれれば良い」

「……よく分からんな」



「もういいのですよ」


 後ろからオリヴィアが現れた。


「クララ、そんな毅然とした態度取らなくても、タクトさんは大丈夫ですよ」

「……どういうことだ?」

「クララは、馬鹿にされない様に必死で、強い族長の振る舞いを演じているんですよ」


 笑顔で解説してくれた。


「オリヴィア様が、そうしろって言うから……」

「今回は、相手が悪すぎますよ」

「相手が悪いって、どういうことですか?」


 クララが聞き返した。


「タクトさんは、噂のアルシオーネ様とネロ様の師匠になられた方です」

「……え~!」


 魔族の間で、俺ってどんな噂をされているんだ。



 俺がアル達の師匠だと分かると、クララはひたすら謝ってきた。

 先程までの毅然とした族長の姿は無かった。


「アルとネロの服も作っているのか?」

「はい、定期的に同じデザインの物を作らせて頂いております」


 ……あいつ等に、最初から聞けば良かった。


「とりあえず報酬は、人族の生活用品やらを持ってくればいいのか?」

「はい、服とかあれば参考にも出来ますので、御願いします」


 急に喋りやすくなったな。


「そっちの喋り方の方が可愛いな」


 褒めてやると、クララは照れていた。


「参考の服やデザインは、すぐに持ってくるので準備だけ頼む」

「分かりました」


 これで、ドレス問題とカンナのプレゼント依頼は解決した。



「次は、私の番ですね」


 オリヴィアは分かっていたようだ。

 まずは、ドライアドの実を三つ受け取る。


「ユニークスキルですが、【偵察】【転送】【分身】です」


 ……三つか!

 リラと同じ二つと勝手に考えていた。


 【偵察】は、自分の体液(血)を対象者に付けておくと、対象者の行動や、会話がイメージとして伝わってくる。


 【転送】は、認識出来ている物限定だが百メートル以内で、その物を別の場所に移動したり出来る。

 認識出来る物になる為、魔物のコア等の転送は出来ない。

 触れたりすれば認識したとなるので、転送は可能になる。

 魔法発動後の、転送も可能のようだ。

 レベルに応じて、転送出来る数が変化する。


 【分身】はそのままだが、自分そっくりの幻影を三体まで作成する幻術の一つだ。

 幻影とはいえ、意思を伝えることが出来るので、魔法や攻撃も出来る。

 ただし、ダメージを受けると本体にも同様のダメージを受けることになる。


 たしかに、今後使えるスキルばかりだ。

 樹海という場所だから、こういったスキルが必要なのは、何となく感じた。


「確かに凄いスキルだな」


 最後に、『大樹の祝福』を重ね掛けしてくれた。


「意味あるのか?」

「はい、私達の姉妹がこの世界には五人居ます。 二人からの信用があれば協力もして貰いやすいですよ」

「なるほどな!」

「これからも、森やアラクネ族等を宜しく御願い致しますね」

「俺の出来る事であればな」

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