第167話 オリヴィアからの依頼と、共通クエスト-1!

 ジークの街に戻り、冒険者ギルドで『サイクロプスの討伐』と『コカトリスの討伐』のクエストを受ける手続きをする。

 このクエストは、王国より発注がある『共通クエスト』と呼ばれる各拠点のギルドに向けて一斉に出されたものらしい。

 受付にユカリが居たので、手続きを頼んだ。


「タクトさん、高難易度の共通クエストですね。 何人で行かれるんですか?」

「ひとりだ」

「そうですか、ひとりなんですね……ひとり?」

「あぁ、ひとりだ」

「無茶ですって! 死にに行くようなものじゃないですか!」


 ユカリが大声で叫んだ為、何が起こったのかと皆こちらを見ている。

 奥から、イリアが何事かと出てきた。

 ユカリは、事情をイリアに説明した。


「相変わらず無茶しますね」

「そうか?」

「一応、ランクBのクエストですが、単独討伐となると見過ごせませんね」

「なんでだ?」

「冒険者ギルドとして、そのような行いを承認出来ないという事です」


 冒険者ギルドとしては、冒険者のサポートもしている為、無茶なクエストは発注はしない。


「ん~、無茶か? 因みにどっちのクエストの事だ?」

「……両方です」

「そうか。 それなら、シロを一時間自由にしていいからダメか?」

「えっ、シロ様を! ……嬉しい申し出ですが、規則ですのでダメです」

「しかし困ったな、この街の冒険者でランクB以上なのは俺と上のふたりだけだろう?」

「そうですね。 確かにあのふたりとであれば受注出来ますね」

「……頼んでみるか!」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「おぅ、いいぞ!」


 ムラサキは即答だったが、シキブは渋い顔をしている。


「私も手伝ってあげたいけど、ギルマスの仕事が溜まっているしね……」

「ただその場に一時間居るだけでいいから、頼む!」

「……一時間居るだけって、一時間で単独討伐するって事!」

「あぁ、簡単だろう?」


 いつもの可哀そうな子を見る目で俺を見ている。


「分かったわよ。 けど危なくなったら手を貸すわよ!」

「恩にきる。 報酬は全て持っていっていいから」

「……タクトの金銭感覚が分からないわ」


 ムラサキは、戦えないと知ると寂しそうだ。

 すぐには用意できない為、一時間後の出発で約束した。


 この間に、街の道具屋を回り全ての鏡を買い占めた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 一時間後にシキブとムラサキで、サイクロプス討伐に来た。


「すぐに済ますから、座って待っていてくれ!」

「……分かったわ」


 シキブは、諦めた顔をしながら樹にもたれ掛かった。



 サイクロプスの足元まで【神速】で移動して【威嚇】をする。

 三体ともこちらを見ているが【威嚇】の効果で動けないでいる。

 その隙に、【風刃】で三体の両手足を切り落とす。

 しかし、一体は【威嚇】の効果を破り、攻撃をかわした。


 攻撃を仕掛けようとしてくる前に、【光球】を眼に投げつける。

 当たったと同時に、眩い光を放ちサイクロプスから視界を奪った。


 持っていた大木を闇雲に振り回すが、足を【風刃】で切り落とすとバランスを崩して前のめりで、倒れこんだ。

 そこから両手を同じ様に【風刃】で切り落とす。


 地面に転がり動けなくなった先の二体を、【魔眼】でコアの場所を確認して、拳を突っ込みコアを取り出した。

 最後の一体はコアを取り出すのに苦労したが、攻撃される事は無い為、時間優先で強引に取り出した。


 討伐終了したので振り返ると、シキブとムラサキが呆気に取られていた。


 大型の魔物なので量は多いが、いつも通り【解体】して、【アイテムボックス】に仕舞う。


「待たせたな」


 作業も終わったので、シキブ達の所に戻る。


「タクト、いつもこんな感じなの?」

「ん~、まぁそうだな」

「……正直に言うけど、貴方の攻撃を目で追うのがやっとだったわ」


 シキブが俺の戦闘の感想を口にする。


「確かに、ランクBいやランクAでも、何が起こったか分からない奴が多いだろうな」


 続けて、ムラサキも感想を言った。


「まぁ、無職だからこういう戦い方しか出来ないんだ!」

「違うのよ。 貴方の戦い方が凄すぎて……言葉が出てこないわ」

「そうか? 照れるな!」

「……」


 シキブは何も言わなくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る