第153話 ギルマスの襲来!
ゾリアスの家に戻る途中に、イルティーが凄い勢いで走って来た。
「ゾリアス、大変だ!」
何かあったのか?
「どうした!」
「ギルマスが独りで乗り込んできた!」
「なんだと!」
シキブが独りで? どういうことだ?
ゾリアス達は急いで戻ると、家の中でシキブは大人しく椅子に座っていた。
スラムの住人達も、警戒しているのか遠巻きに見ているだけだ。
「ギルマスが直々に何の用だ?」
ゾリアスは明らかに警戒している。
反対にシキブからは、殺気が全くない。
シキブが椅子から立ち上がり、ゾリアスの前まで来る。
「今日はギルマスとしてでなく、シキブという一人の冒険者として来ました」
そういうとシキブは頭を下げた。
「五年前の件、スラム襲撃に関してギルマスの立場上断ることは出来ませんでしたが、私的には納得出来るクエストではありませんでした。 許してもらうつもりはありませんが、ここを出て行くとタクトより聞いたので、最後に私の気持ちを伝えておかないと後悔すると思い、こちらにお邪魔致しました。 あの時は、申し訳ありませんでした」
話し終わってもシキブは頭を上げようとはしない。
「……頭を上げてくれ」
ゾリアスの言葉で、シキブは頭を上げた。
「あんたの立場も分かるし責めるつもりも無い。 俺達が望むのは同じ惨劇を繰り返して欲しくないという事だけだ」
「……はい」
シキブの姿に昔の自分を照らし合わしているのか、悔しそうに話していた。
「スラム出身の方々が、冒険者になられる時も差別が無いように注意致します」
「あぁ、それは助かる」
そうか、ゾリアス達が冒険者になる前に、批判を一人で受け止めるつもりだったのか。
このタイミングで言うのは、若干気が引けるが仕方ない。
「緊迫した会話のところ悪いが、ゾリアス達は冒険者になるの止めたってよ」
「えっ!」
「あぁ、タクトの言う通りだ」
シキブは緊張の糸が切れたかのようだ。
大きく深呼吸すると俺に向かって、
「タクト、騙したわね!」
「騙してないって、俺もさっき聞いたんだから!」
「あぁ、昨晩結論出したからな」
「ほらな」
シキブは何も言わなくなった。 すぐに俺を疑うのは、やめて欲しい。
「あんたが、ギルマスであれば安心だな」
「いえ、私なんか……」
先程まであった会話の壁が無くなったかのように話している。
とりあえずは解決したという事だろう。
「ところで、ムラサキは一緒じゃないのか?」
「違うわよ、イリアにスラムへ行ってくると伝言はしておいたわよ」
「……シキブ、お前やらかしたな」
「何がよ?」
何のことか分からないシキブだが、次の瞬間に扉が勢いよく開いて、戦闘態勢のムラサキが息を切らして立っていた!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「悪かった」
ムラサキが俺達に謝る。
「半分以上は、シキブの責任だ」
「何でよ!」
シキブは納得いっていない様子だ。
「そりゃあ、愛する奥さんが、たった一人でスラムに行くなんて聞かされたら、残された旦那としたら心配するだろう!」
俺の言葉に気付かされたのか、二人して急に照れ始めた。
二人で、小声でなにか言っているが、俺的にはいつもの事なので気にしていなかったが、
「あの二人は、いつもああなのか?」
ゾリアスが聞いてきた。
「あぁ、そうだな」
軽く返すと、ゾリアスは笑っていた。
その後シキブとムラサキは、何度も頭を下げて帰っていった。
ゾリアスに、反対派との話し合いの件を伝える。
「今夜、反対派と話をするから伝えといてくれ」
「明日じゃなくてか?」
「あぁ、今晩だ」
ゾリアス達が居なくなった瞬間に、何をするか分からないので事前に対処することにした。
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