第140話 領主リロイの友!

「タクト殿、どうされましたか?」


 リロイとスラムの件で、連絡を取る。


「領主、悪いな。 少し聞きたい事があるがいいか?」

「はい、大丈夫ですよ」


 スラムの管轄について、確認をする。

 リロイの説明だと、前領主が廃墟になって元持ち主から税金等も取れない為、かなり安く買い手のつかないスラムを、特別に買い取ったそうだ。


「それは、買い手があれば売るのは可能という事か?」


 俺の問いに対して、可能だと答えた。


「タクト殿、買われるおつもりですか?」

「あぁ、予算もあるが買えるなら買いたい」


 話の内容からも、俺が購入の意図があるのが分かったのだろう。


「そうですか……」


 不安な口調だ。


「なにか、心配事か?」


 リロイは、ゾリアスやスラムに住む住人達の事を心配していた。

 俺が購入の意思を示した事により、スラムからの無理な追い出しによる抗争等の事だろう。


 やはり、リロイは優しいし尊敬できる領主だな。


 ゾリアスとは知り合いだし、簡単だが今度話をする事は伝えた。

 スラムの住人達と、面識がある事を驚かれるが、納得した様子だ。


「流石、タクト殿ですね!」

「領主のおかげだよ!」

「えっ? 私のおかげ?」


 リロイは何のことか分からないようだったが、後でそちらに行くのでその時に話すと伝える。


「タクト殿、お願いがあるのですが……」

「なんだ?」


 後で会うのに、改まってどうしたんだ?

 ……こういう時は、厄介事か恋愛事のような気がする。


 「申し訳ございませんが、領主と言う呼び名を止めて頂けないかと……」

 「いや、ダメだろ! 俺、これ以外だと呼び捨てしか無理だから!」

 「……その、リロイで結構ですので!」

 「いやいや、領主を呼び捨ては流石にマズイだろう!」

 「その特別に許可致しますので、御願い致します」

 「突然、なんでだ?」


 リロイが、突然こんなことを言い出した理由が知りたかった。

 理由は簡単だった。

 俺とニーナのやり取りが羨ましく思っていた事と、友と言われる存在を子供のころより居なかった為、目の当たりにしたことにより、余計とその気持ちが大きくなったと、恥ずかしそうに話した。


「分かった。 これからはリロイと呼ぶ! その代わり、俺の事もタクトと呼べよ!」

「ありがとうございます!」


 顔は見えないが、声だけでも笑顔になっているのが分かる。


「地位は異なるが友として、これからも宜しくな!」

「友ですか!」

「あぁ、友だ! 嫌か?」

「いえ、そんなことありません! 友と呼べる人は、今まで居なかったので嬉しいです」


 先程よりも、声が若干高い。

 余程嬉しいのだろうな。

 俺もつられて笑みがこぼれる。

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