第97話 鬼姫の恋!
領主の屋敷を出て、ギルド会館まで歩く。
先程の、リロイの真っ直ぐな気持ちが忘れられない。
俺が真剣な顔で考えているので、シキブも気を使って話しかけてこない。
「なぁ、シキブ。 ムラサキの何処に惚れたんだ?」
「んっな! いきなり何を!」
沈黙の後、いきなり意表をつく質問をする。
俺自身も何故、聞いたのか不思議だ。
シキブは顔を真っ赤にして、無言のままだ。
「悪い。 今のは忘れてくれ!」
人の色恋に、土足で踏み入るような最低の行為だ。
「……助けてくれたの」
シキブが、小声で話始めた。
シキブは昔、パーティーでも指示を無視して、ひとりで突っ込んで行くタイプだったそうだ。
ある時、そんな行動が原因でパーティーが全滅しそうになったが、その時は何とか生還をする事は出来た。
しかし、それ以降は今までの行動もありギルド内では、厄病神扱いされた。
パーティーを組んで貰えず、暫くソロでやっていたがダンジョンで『リッチ』と『グール』の大群に襲われてしまい、魔法攻撃のダメージや麻痺攻撃で体が動かなくなり諦めかけた時、他のパーティーで探索していたムラサキが助けてくれたそうだ。
同じギルドだったから当然、シキブの悪い噂は知っていたが、その後もムラサキは一緒にパーティー組んでくれたり、他の冒険者との確執を少しづつ取り払ってくれてた。
シキブの話からもムラサキが昔から変っていない事が分かる。 男前と言うべきだろう。
シキブも少しづつだけど、無茶しなくなって他の冒険者からの信用も取り戻していった。
後で聞いた話だと、ムラサキは自分のレベルも上げずに、ギルド内でシキブは信用出来るから今度パーティー組んであげてくれとか、根気よく皆に説得していたそうだ。
ムラサキ、流石だ! と感心した。
「私が信用取り戻した頃に、急にムラサキが居なくなってね」
「なんで?」
「他の都市で、超難関クエストに誘われたんだって」
ん? 恥ずかしがって赤かった顔が、頬だけでなく全体が赤くなっていないか?
「それで、私も彼を追いかけてそのクエストに参加したの。 そしたら、ムラサキなんて言ったと思う!」
「さぁ?」
「邪魔だから帰れって! 私よりレベル低いのに邪魔者扱いって酷くない!」
「……そうだな」
シキブ、怒りモードか?
「そこからはもう喧嘩よ! ただ、ムラサキがね」
あれ? 急にモジモジし始めたぞ!
喜怒哀楽が激しいな!
「好きな女が居たら戦闘に集中できないって言うのよ!」
思いっきり俺の背中を叩いた。
……俺じゃなかったら、吹っ飛んで死んでいたぞ!
「それは、良かったな」
「えぇ! もう嬉しかったわよ」
シキブがデレデレの顔になって続きを話そうとするが、聞いといて申し訳ないが長くなりそうだったので、
「ありがとう、ちょっとカンナの所に寄っていくわ」
「えぇ~、これから良いところなのよ!」
シキブは、ムラサキとの恋話をしたいのか?
「今度、ゆっくり聞くよ」
「絶対ね!」
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