第91話 初の指名クエスト!
リロイの症状は、色々と謎が多いな。
「シキブ、この件だが、少し調べていいか?」
「別にいいけど、常識外れの事は止めてよね」
「いや~、それは約束できないかも……」
「そうよね。 貴方の常識が、私たちの常識外れですもんね……」
「ははは……」
笑うしかなかった。
「タクト様、御願いしても良いのですか?」
「あぁ、一週間調べてダメだったら、その時は俺の手に負えなかったと諦めてくれ!」
「はい、それでも結構です。 早速指名クエストを発行させて頂きますので、宜しく御願い致します」
「指名クエストって何?」
シキブの方を見ると、例の如く可哀そうな子を見る目をしていた。
指名クエストというのは、冒険者を指名するクエストで、その分報酬内容も通常のクエストよりも高めだ。
……そういえば、カンナもそんなような事を言っていたな。
「分かった。 では、領主に【治癒】と【回復】を掛けさせてくれ」
リロイ様とは言えず、リロイさんになってしまうが『領主』はそのまま発言出来る事に、さっき気が付いた。
シキブと一緒にリロイの寝室に案内される。
マイクに事情を説明して貰う。
「色々と迷惑をお掛けして、申し訳御座いません」
リロイは床から起き上がろうとするが、俺がそのままで良いと起き上がるのを止めた。
まず【鑑定眼】でリロイのステータスを確認する。
『HP』が半分以下。
『MP』に至っては、殆ど無い。
ユニークスキル【人望】持ちだった。
これを習得出来たことは、大変助かるな。
今の俺は、バケモノ扱いだから……
「シキブ、ちょっといいか?」
シキブと、マイクに現状のリロイの状態を告げる。
この症状は、街中で起きている冒険者狩りの症状と同じでは無いかと確認をする。
「確かに、似ているわね……」
「冒険者狩りだけど、一般の住民にも被害は出ているのか?」
「……少数だけどその報告はあるわね」
「しかし、領主は屋敷から出ていないんだろう?」
「はい、リロイ様は公務以外では外に出る事は御座いません。 ここ数ヶ月は外出しておりません」
……流行病の一種か?
それなら、もっと多人数の被害者が出てもおかしくはない。
ギルドの報告だと、複数の被害にあった冒険者も数人だという。
しかし、リロイは毎晩という位に被害にあっていると推測される。。
とりあえず『HP』だけでも全快にするか。
「じゃ、始める」
リロイの胸に手を当て【治癒】と【回復】を掛ける。
「終わった」
マイクは呆気に取られている。
俺が胸に手を当てて、数秒で終了したからだ。
シキブは下を向いたままだ……
「これは、凄いですね! 力が戻ったようです!」
リロイが身体全体を確認している。
顔色も先程とは違う。
しかし、『MP』は回復していないので、頭痛や吐き気の症状は残っている筈だ。
「タクト様、【治癒】と【回復】を掛けられるとおっしゃっておりましたが……」
「そうだ」
「無詠唱の様にも思えましたが、魔法名も聞こえませんでしたし……」
「あぁ、俺は念じれば魔法掛けれる特殊体質だ」
「なんと!」
シキブは、下を向いたまま目を合わそうとしない……
リロイは調子が良いのか、窓辺に歩き外を見ている。
「領主、聞きたい事があるのだがいいか?」
「はい、なんでしょうか?」
「窓から見える風景が好きなのか?」
「はい、毎回見える景色は少しづつではありますが違いますし、風が心地良いですから」
「そこから、気になる女性は見えたりするのか?」
一瞬、驚いた様子を見せたが、
「ははは、マイクですね。 確かに、少し前ですが夜にここから景色を見ていたら、丁度あの噴水の辺りで踊っていた女性に、心を奪われましたね!」
「顔も見えないのにか?」
「はい」
ここから噴水まではかなり距離があり、姿は確認出来るが顔まで確認出来ない。
「彼女が噴水の前で踊っていたのが、とても綺麗でしたので見惚れてしまいました」
「マイク、使用人に心当たりないか?」
「いえ、心当たりはありません」
ここに入って来れる人物は限定される。
たとえ、侵入しても衛兵達に見つかってしまう。
「ありがとう。 あまり無理するなよ」
「こちらこそ、有難う御座います」
マイクの案内で部屋を出るが、リロイは外を見たままだ。
「なにか、分かりましたか?」
マイクが期待した様に声を掛けてきた。
「いや、気になる点は幾つかあるが、確証が無い」
「そうですか……」
「明日の朝に、もう一度邪魔する」
「御願い致します」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます