第83話 村を守る代償!

「本当に、貴方は……」

「なんか、スマン!」


 よく分からないが謝っておくべきだと思った。


「魔王の師匠って、お前は何者だ!」


 トグルは、この世の者では無い者を見るような目をしている。


「タクトは、本当に面白いの~! ますます興味が湧くわ!」


 ローラには完全に研究材料と認定された。


「とりあえず、危害が無いのは分かったわ」

「あぁ、しかしあの小さいのが魔王とは信じられん……それよりもタクトが俺の常識の範疇を超えている!」

「まぁ、俺もそれなりに苦労しているけどな……」

「そもそも、魔王の師匠という時点で、人族の規格外だろうが!」


 まぁ、言う通りだが……



 扉を叩く音がしたので、シキブが返事をするとフランとマリーが入って来た。


「このギルドのマスター、シキブと申します。 急にお呼びだてして、申し訳御座いませんでした」


 挨拶をして、ふたりに座るように促す。

 シキブが、フランとマリーに質問をする。


 先程の内容と一致をするかの確認だ。


 フランとマリーは、アルとの出会いからゴンド村で過ごした数日間を事細かに話してくれた。

 皆、数日とはいえ魔王達と村で共存していたのだから、驚きを隠せない様子だ。

 アルとネロは村人達と一緒に食事をしたり子供達と遊び、更に神祠を建てたりしていたのは信じられないだろう……


「アルシオーネ様もネロ様も、とても良くして下さいました」

「はい、最初はショックで村長なんか驚きすぎて死にそうでしたし!」


 笑いながら答える姿に、嘘が無い事は分かる。


「それに大変申し上げづらいのですが、いままでゴンド村は何処からも守って貰えず、常に魔族に怯えて生活をしていました。 作物も育ちにくい為、飢餓もあり常に死と隣り合わせのつらい生活でした」


 シキブとムラサキが申し訳なさそうにしている。

 ゴンド村は防衛都市であるジークの管轄内に入っているので、冒険者ギルドとしては領主と連携して、派遣者を送る等の対策をして、村の安全をある程度確保しなくてはいけないからだ。


「アルシオーネ様とネロ様、それにタクトが来てくれたことにより、村民皆が笑顔で暮らせる村に生まれ変わりました。 私だけでなく村民皆が、本当に感謝しております」


 フランの言葉には重みがあった。

 今迄、生きるだけで精一杯だった村人が、その先の希望を持てるようになったからだろう。


「それで、ドラゴンに守って貰える代償として、村では何を貢物にしているの?」


 シキブは、守って貰っている代償について質問をした。

 魔王だから、法外な要求であればギルドとして動かなければならないと判断したのか?


「いえ、何もです」

「えっ! 何も?」

「はい、何もです。 あえて言うなら、今はドラゴンの子供と遊ぶくらいですかね?」

「えっ! ちょっと待って、村を守る代償がドラゴンの子供の相手って事?」

「はい、皆楽しく遊んでいますよ!」


 シキブがあまりのショックで塞ぎこんだ。

 ムラサキも、心ここにあらずといった感じだ……


「俺の居ない間に、そんなことになっていたのか!」

「えぇ、最初は子供のドラゴンが迷って飛んできたんだけど、それからは頻繁に他の子も連れて遊びに来るようになってね!」

「そうそう、親ドラゴンも来てびっくりだったよね! 背中に乗せて貰った時は皆、感動してたもんね!」

「ちょ、ちょっと! 今ドラゴンに乗ったって言いましたか!」


 イリアが驚き、フランとマリーに聞く。


「えぇ、今では大きなドラゴンが何体も、村に遊びに来ますよ!」

「言葉がアルシオーネ様しか分からないから、意思の疎通が難しいよね!」

「そうそう!」

「子供達は言っていることが少しだけ、分かるみたいだけどね」

「大人は、頭が固いから理解しづらいんだよね」

「それに今度、ドラゴンが滞在しやすいように、村の中に休憩場所を造るって言っていたしね!」


 フランもマリーも懐かしそうに話す。

 しかし、その話す顔は生き生きとしている。

 その姿を見ていると、俺がしてきたことは間違いじゃないと確信する。


「ふたり共ありがとうな。 詳しい事は又、連絡する」


 呼ばれた理由はうすうす気が付いていたと思うが、どの様に話がまとまったかは気になる筈だ。

 結論だけでも教えておこうと思った。


 フランとマリーに、礼を言って退室して貰った。

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