第80話 ゴブリンロード!

「タクトは、レベル一〇くらいの時は何してたの?」


 シキブは、話のついでに軽く聞いてきた。


「たしか、ゴブリンに寝床を襲われたので反撃したついでに、そのゴブリン達の集落を襲撃して全滅させたかな」

「……興味本位で聞いた私がバカだったわ。 小さな集落とはいえ怖い物知らずよね。 もし迷いの森にある大規模集落だったらどうするつもりだったのかしら……はぁ」


 大きくため息をついた。


「全滅させたの、その迷いの森の集落だぞ!」


 暫く沈黙の後、シキブとムラサキは立ち上がり、


「はぁ~お前! あの集落はゴブリンだけでなくホブゴブリンも居るし、武器の扱いに関しても珍しく斧や弓に槍を使う奴も居るって噂だ。 それに、人をさらったりして知能高い。 ただでさえ、方向が分からなくなり、抜け出すのも一苦労だ。 しかも、オークの集落もあるのでこの辺りでも、危険度高めの場所だぞ!」

「あっ、そうなの。 俺、暫くあの森で生活していたし、オークもちょっとした事情で、仲間と全滅させたぞ!」


 ふたり共、言葉が出ずに黙り込んだ。


「ランクの昇級試験の時に出したゴブリンのコアは、その時のだぞ!」


「本当に貴方は……それ誰かに報告した?」

「いや、冒険者ギルドに登録する前だったし、ゴンド村の住民や一緒にこの街に来た奴は、知っているがどうしてだ?」


 シキブとムラサキは顔を見合わせて、


「タクト、ゴブリンとオークのコアは、まだ持っている?」

「全部は無いぞ」


 テーブルの上に残っているコアを全て出した。

 シキブは、スグに鑑定士のカンナを呼び出して、全てのコアを確認させていた。


「タクト、戦闘した際に変わったゴブリンやオークは居なかった?」


 真剣な顔で聞いてきた。

 変わった奴ね……

 オークは、アルとネロが殆ど倒したから記憶が無いけど、


「そういえば、ゴブリンは他の奴より体が一回り大きくて、やたらと知能が高い紅い目をした奴が一匹居たかな?」

「……そいつも倒したのよね」

「ひとりで戦ったからかなり大変だったぞ! 当たり前だけど、他のゴブリンと連携して襲ってきたから強かったし、本当に死ぬかと思った」


 シキブが可哀そうな子を見る目で俺を見ている。


「シキブさん、見つけました。 これがそうです」


 何かを発見したのか、カンナが先程出した核の中からひとつを、別の場所に置いた。


「理由は不明だけど、ゴブリンやオークは約五年周期にロードを出現させているの。 今年は、前回のロードが出現してから、もうすぐ五年目なので、ギルドとしても警戒態勢を取っていたのよ。 このギルドとしては『迷いの森』が最有力候補にしてたの。 先程の冒険者の底上げの話も、ロード討伐に向けての事なのよ」


 なるほど! それでひとりでも多くの冒険者が必要だった訳か。


「しかも、最近は最強と言われる魔王ふたりを倒して、その魔王たちを配下にした者まで現れたって噂だし……」


 あぁ、多分それ俺だ……


「だけど、あなたが全滅させた魔物の中にロードもしくは、ロードになる過程に魔物が居たのよ」


 ロードって馬鹿デカくて、何十体も引き連れているんじゃないのか?

 話の流れから、紅目がそうなのか?


「急を要するので、今から私と領主の所まで一緒に来てくれる」

「分かった」

「ありがとう。 ムラサキは本部に連絡をして、その後の対応を聞いておいて。 詳細が分からないのであれば、内容を聞いて私から後で連絡します」

「おぅ、任せとけ!」

「タクト、このコアは一旦預からせて貰っても良いかしら?」

「あぁ!」


「あの~」


 カンナが、恐る恐る俺達を見ながら話そうとしている。


「どうしたの? なにか気になる事あった?」

「いえ、そのですね……」


 俺の顔色を窺っている。

 なんでだ?


「気にするな!」


 良く分からないので、元気づけに声を掛けてみる。


「……いいんですね」


 カンナは、大きく深呼吸をすると、両目を瞑り大声で、


「オークのコアを鑑定した結果ですが、倒したのはタクトさんと魔王アルシオーネ、魔王ネロのパーティーなんです!」


 ……あっ! 完全にやらかした。

 カンナが俺の顔色を窺っていたのは、そういう事ね。


 シキブと、ムラサキの動きが止まった。

 無理もないだろう……

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