第67話 戦闘バカは、脳みそも筋肉か!

 トグルは、街はずれの森に居た。

 俺に負けた悔しさからか剣を振り回している。

 修行という感じではなく、怒りに任せている感じだ。


 ……どうするか、声の掛け方が良く分からん。


「誰だ!」


 ……見つかったか!


 無言で手を挙げて姿を見せた。


「……こんな所まで、何しに来た」


 敵意丸出しで、突っかかってくる。


「用事も無いのに、わざわざ顔は見せに来るほど暇じゃない!」


 ……なんか、クレームで客先に謝罪に行かされた時を思い出すよ。


「俺は、お前に用事は無い」

「お前が、俺を嫌っていることはこの際どうでも良い。 個人的な話でなく、この街の冒険者として話がある」


 何回か剣が空気を切る音の後に剣を仕舞うと、こちらを向いた。


「シキブとムラサキの事は知っているか!」


 先程、ギルド会館に居たの確認出来なかったので、結婚の事を知らない可能性もある。


「いや、何のことだ」

「先程、結婚を発表した」

「……やっとか!」


 やはりトグルも知っていたのか。

 それなら話もスムーズに進む。


「実は、ギルドとしてふたりを御祝したいと思っている」

「それが俺に何か関係するのか!」


 なんで、コイツ喧嘩腰なんだよ!


「イリアや他の受付嬢にも協力はしているが、どうしても手が足りない。 そこでお前にも協力をして貰いたい」


 トグルは何で俺が! という顔をしている。


「イリアから、お前はこの街のギルドの三番目の地位だと聞いてる。 お前にしか頼めない事だ」

「フッ、今の三番目はお前だろうが!」


 もうコイツは、ひねくれ過ぎているだろう!


「いや、ランクの話をしている訳では無いんだ。 俺はこの街にきてまだ二日目だが、あのふたりには恩を感じている。 だから、出来ればその恩を返したいと思っている」

「それは、お前の自己満足だろうが、それに俺を巻き込むんじゃねぇよ」


 あっ、ダメだ。

 もうコイツ殴ろう。

 うん殴る。

 決めた!


「ただ、俺もあのふたりには世話になっている。 お前の為じゃなくて、俺の自己満足の範囲で協力してやる」


 あっ、殴らなくて良かった!


「それで構わない」

「何をすればいいんだ」


 トグルには、イリア同様に詳しく説明したが、イリアのように理解して貰えない。

 何回もふたりには、絶対バレてはいけない事を告げる。


 戦闘バカは脳みそまでも筋肉なのか……

 なんとか時間は掛ったが理解してもらった。


「ヨロシク頼む」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 酒場のガイルに事情を説明して、料理の作り置きや調達等を御願いした。

 結婚式をするにも、この世界では足りないものが多すぎる。


 しかも、この世界で今後広めていくには特別な材料とかでなく、どこにでもある物で祝える様にしなければならない。

 個人的には、指輪は必要だが他人が勝手に買った物を付けても意味は無い。

 指輪にも意味を持たせないといけない。

 この世界エクシズで多分、最初の結婚式だからインパクトが必要だ!


 【全知全能】に、この付近で宝石の取れる場所を尋ねる。


 回答された場所は、それほど遠くない。

 ただし、ドワーフの集落が近くにある。

 間違いなくドワーフの領地だろう。


 まだ、陽も沈みそうにないのでクロとシロに行先を告げて、ひとりでドワーフの集落まで、交渉に行くことにした。

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