第24話 四葉の使徒!

「皆さん、タクト様がオーク討伐を快く了承して下さいました」


 リラが清々しい顔で、村人達に話す。

 歓喜に湧く村人達。

 微妙に納得いかない俺。


「タクト様、御受け頂きありがとうございます」


 村人は口々に感謝言う。


 ……まだ、倒してもいないのだけど。


「では、私はこの辺で」


 そう言うと、リラは森の中に消えていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 嬉しそうにしている村人達と、村に戻る。

 今日は、村長の家の客間で泊まることになった。


 シロとクロには、オークの集落まで偵察を頼んだ。

 「夜にまで働かせて申し訳ないな」というが、なんか逆に張り切っていた。


 今日だけで、恩恵ユニークスキルが一気に増えた。

 とても喜ばしい事だ!

 エリーヌに、お礼を言うと調子に乗るのが手に取るように分かったので、あえて黙っておくことにした。


 扉を二回叩く音がした。

 「どうぞ」と声を掛けると、夫婦が入ってきた。

 「こんな夜分にどうしましたか?」と言いたいが、


「こんな夜に何か用か?」


 となってしまう。

 一応、村人は【呪詛】の事を知っているので、不快感は与えていない。


「実は、折り入って御相談なのですが……」


 夫婦の相談は、ゴブリンの集落を襲撃した際に、さらわれた女性の所持品等を持って来なかったかだった。


「特に心当たりは無いが、調べてみるので外で待っててくれ」


 夫婦を部屋の外に出して【アイテムボックス】で、宝物庫から盗んで来た物の中を確認する。

 それらしい物といえば、五十センチくらいの木箱だ。

 蓋を開けてみると、髪飾りや貴金属が入っている。

 さらわれた女性達の物だと、一目で理解出来た。


「他にもさらわれた人がいる家族を、全員呼んできてくれ」


 夫婦に集合の連絡を御願いした。



「何かあったのですか?」


 騒がしさが気になったのか、村長が寄ってきた。

 魔物の襲撃とかでない事を説明する。

 関係者が集まったみたいだったので、


「これは、ゴブリンの宝物庫で見つけたものだ。 もしかしたら、あんた達の家族の物もあるかも知れない」


 皆の前に木箱を移動して、蓋を開けて中身を出す。


「関係の品物は、全て持って行っていいから」


 俺はそう言って、木箱から離れる。


 村人達は、妻や娘の関係の品が無いかを必死で探している。

 早々と見つけた者は涙している。


 全員になにか見つかれば良いのだが……。


 最後、交尾所にいた彼女達の遺品は持ってきていないので、あの九人の遺品は無いだろう。


「ありがとうございます」


 フランは礼を言いに横まで来た。


「……姉の件は悪かったな」

「いえ、あれが姉の希望でしたから」


 寂しそうな横顔だ。

 兄弟のいない俺には、兄弟の関係性が良く分からない。

 しかし、大切な人が居なくなるのが寂しい事くらいは、俺にも分かる。


「オークの集落に行くそうですね」

「成り行きでな。 明日の夜にでも行こうと思う」

「そうですか」


 女性とふたりっきりなんて、いつ以来だ。

 会話が続かない。


 俺ってこんなに『コミュ障』だったか?


「シロちゃん、可愛いですね」

「ん? そうか?」


 俺達がリラとあっている間、クロは上空で監視をしていた。

 シロは子供達に人気だったので、そのままにしておいた。


 シロは、だいぶん疲れていたみたいだったが……。


「怖くないのか?」

「魔物が怖くないと言えば、嘘になります。さらわれましたし……でも、全ての人間がいい人で無いのと同じで魔物も、全てが悪い訳では無いと思うんですよね」


 こう思ってくれる人がいるのは、ありがたい。


「タクト様の衣服についている、そのマークは何ですか?」

「あぁ、これか」


 このマークは『四葉』といい、信仰している神のマークで御利益がある様に常に身に着けている。

 本来の目的は、この世界が平和になる事と少しでも神を信じてくれる為に、旅をしている事を伝えた。


「そうなんですね。 タクト様が信じているという事は、その神様は余程凄い方なんですね!」


 俺の評価があがれば、エリーヌの評価も上がるのは良い事だ。

 だが、何か腹が立つ。

 エリーヌは、別次元で凄い神なのも間違いはない。


「神を崇める事が無くなってしまった今、その考えは素敵だと思いますよ」

「そうか、ありがとう」

「さしずめタクト様は『四葉の使徒』ですね」


 『四葉の使徒』か!

 なんか、カッコいいな。

 これから、この名称を使っていこう!

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