第21話 娘たちの帰還!

 助け出した女性にゴンド村まで道案内をして貰う。

 遠くに複数の人影を発見する。

 その奥には、村らしきものも見える。

 近づくと向こうもこちらに気付いたようだ。

 ひとりが慌てて、村の方に戻って行った。


「お前たち、無事だったのか!」

「うん」


 助け出した中の、村の女性達三人は泣いている。

 村の中から、村人たちが次々と集まってくる。

 彼女達は、家族らしき人達と抱き合って喜んでいる。

 お互いにもう、生きて合う事は無いと覚悟をしていたのだろう。

 喜びの最中、俺達の存在を確認したのか、彼女達が説明をしている。

 他の女性達はともかく俺は右肩にはクロ、左腕にはシロを抱えている為、警戒されているのだろう。

 魔物と密接な暮らしをしていれば、魔物に警戒するのは当たりまえだ。

 村長らしき老人と、数人が俺たちの方に歩いて来た。


「この度は、村の娘達を助けて頂いて有難う御座いました」


 深々と頭を下げると、他の村人も頭を下げる。


「気にするな、それより詳しい話を聞きたい」


 敬語が使えないのは、やはりツラいな。

 なにか対策を練らないと、その内大きな問題になりそうだ……。

 助け出した女性達は、村人の案内で別の場所で休憩して貰う。

 村以外の女性も居るし、聞かれたくない話も有るだろう。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 俺は、村長の家で村の男性達数人と話を聞くことにした。

 シロとクロは、家の外で待機している。

 村人達から改めてお礼を言われた。

 俺は、【呪詛】の為、丁寧な言葉使いが使えないことを伝える。

 皆、驚いていたが他人には影響が無い事を伝えると、落ち着いてくれた。


 この村は、昔より森(現:迷いの森)から樹木を伐ったり、木の実を売ったりして生活をしていた。

 しかし、五〇年程前から森の中に多数の魔物が住み着き、森の中に入った者が帰って来なくなったりと、生活の基盤となっていた森との共存が出来なくなり困っていたそうだ。

 更に、ここ近年はゴブリンやオークなどに襲撃されて、若い女性や数少ない貴重な食べ物等を奪われていたらしい。

 たしかに、村人は皆痩せていたな……。

 この状態が続けば、いずれ村が無くなる覚悟はしているが、生まれ育った土地を離れるのに抵抗もあり、その葛藤の中、必死で生活しているようだ。


 俺は森の中央の強力な魔力は無くなった為、魔物も昔通り森の奥での生活に戻る事、その魔力が方向感覚を狂わしていた原因だった事そして、ゴブリンの集落は全滅させた事を伝えた。

 その場にいた者達は驚いていたが、数人は信じていない者も居た。

 今迄、散々な目にあわされた魔物が、突然居なくなったと言っても信じられないだろう。


「森の魔力の件は、森の入口まで行って証明する。ゴブリンの件は、先程の娘達に詳細を聞いてくれ」


 これが、精いっぱいの丁寧語だな。友達口調の線引きが、曖昧過ぎて良く分からん。

 村長は、村人に戻ってきた娘を連れてくる様に指示した。


 暫くすると、赤髪の女性が家に入ってきた。

 ゴブリンの集落で、俺に姉達を殺すように泣きながら話した彼女だ。

 彼女の名は『フラン』といった。

 フランは時折苦しそうに、捕まってからの話をしている。

 先程のアル達の事は、喋って欲しくないな……。

 俺達が救出に来た時には、以前から捕まっていた女性達は既に死んでいたと、泣きながら話した。

 多分、あの場にいた女性達で口裏を合わせる事にしたのだろう。

 殺すという選択肢をしたのは彼女達だから、負目もある筈だ。

 村人達は、驚いていた。

 フランは今迄我慢していたのか、話した事で気が楽になったのか分からないが、両手で顔を覆い泣き続けている。

 少し落ち着きを取り戻したフランは、「すいませんでした」と、皆に謝罪をした。

 続けて、俺が危険人物ではない事。

 シロやクロも魔物だが、協力してゴブリン退治してくれた事を懸命に説明してくれた。

 シロとクロに対しては、納得出来ていない者も数人いたが、村長が村の中に入れる許可した為、渋々納得した形となった。

 俺は、シロとクロの許可をくれた事に対して、「ありがとう」と感謝の言葉を告げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る