最終話 「ならシュウを賭けて勝負デス!」

 あれからトモに案内されながら色んな場所を回った。トモの気さくさもあり、雨宮達ともすんなり打ち解けたよ。

 でも何故かアトラクション系のものにはあまり手を出さず、基本的に食べてばかり。視界に入ったものはひとつは食べる、みたいな固い決意を雨宮達からは感じたね。

 今日はよく食べるな的な発言をしたところ雨宮さんからは……


『甘いものは別腹。これは女子の常識』


 と返ってきました。

 別腹というものが存在するみたいな話は聞いたことがあるが、それを女の子の常識を断言してしまうのはどうなのだろう。甘いものが苦手という人だって存在するわけだし。

 ちなみに今日はシャルも雨宮ほどではないけど食べてます。でも太るぞなんてことは言いません。女の子にそういうこと言ったらダメだって知ってるから。

 言ったところであの金髪メガネさんは、笑いながら自分は太らないとか言うんだろって? ふ、残念だったな。確かに言いそうではあるが、今日あいつが言っていたのは


『問題ありません。だってシュウは肉付きが良い女の子の方が好きですから。なので太ってもシュウには需要がありマス。シュウには責任を取ってもらえマス!』


 だったよ。

 確かに俺は肉付きの良い子の方が好きだ。ガリガリより健康的に見えるし、巨乳好きとしては触った時の心地良さを重視するから。

 それに体重ばかり気にして苦しそうな顔で食べられるよりは、好きなものを好きなだけ笑顔で食べてもらった方が見てても安心するしね。

 だがしかし、俺が食べろと言ったわけでもないのに責任を取ってもらえるってのは違うと思う。

 自分達の意思で食べてるんだから太った場合の責任は自分で取りなさい。太っても接し方を変えるつもりはないけど、俺は責任を取るつもりありません。


「食べ物を売ってるところは大体回りましたけど、このあとはどうします?」

「はい! ワタシは漫研に行ってみたいデス。いったいどんな同人を売っているのか気になりマス」


 自己主張するのは良いけど、もう少し声を抑えなさい。周り人が驚くでしょ。

 トモは店の宣伝のために執事服を着たままだし、マスコットみたいな雨宮は顔色ひとつ変えずに延々と何か食べてる。シャルは見た目だけで人目を引きやすいし、俺も場所が場所なだけに目立ってしまう。

 ただでさえ、周囲から視線を向けられやすいんだからもう少し自重して欲しいところだ。


「ワタシとしては『くっころ』なものを所望し……」

「やめい」


 軽くシャルの頭にチョップを入れる。


「何するんデスカ!」

「いや分かるだろ。むしろ何でそこまでお前はキレてるんだよ」

「ツッコミが優しいからデス。もっと強く厳しく激しく来てくれないと反応が取りにくいじゃないデスカ!」


 いやいや、芸人みたいな反応とか求めてないから。

 何よりそんなツッコミ入れたらあなた喜ぶでしょ。『喜ぶ』より『悦ぶ』って表現が合いそうな表情を浮かべかねないでしょ。

 だから俺はあなたが望むようなことはしてあげません。風紀を乱さないためにも絶対に死守してみせます。


「やかましい。その手にあるタコ焼きでも食べて大人しくしてろ」

「嫌デス。大人しくするのはマイさんの専売特許、ワタシがそれを取るわけにはいきません」


 別に雨宮は大人しくしたくて大人しいわけではないと思う。単純に根が大人しいというか口数が少ないだけで。個性といえば個性だけど専売特許というのは雨宮にも悪いのではないだろうか。


「食べる?」


 ごめん雨宮。

 俺はお前の持ってる大学イモが欲しくてお前を見てたんじゃないんだ。シャルの言葉でお前が機嫌を悪くしてないかって見てただけで。

 その様子だとシャルの話は聞いたない感じですね。それならそれで良いです。あなたは好きなだけ食べててください。


「シュウ、言いたいことがあるならはっきりと言うべきデス。小腹が空いたと素直に言えば、ワタシのタコ焼きを分けてあげマスヨ」

「いやいい。見てるだけで十分食欲満たされてるから」

「ワタシのタコ焼きが食べられないって言いたいんデスカ!」


 何でキレるの?

 は? いらねぇよ。そんなもの食えっか。

 みたいな暴言を吐いたわけでもないのに。今日のこの子、少し情緒不安定じゃないかな。そういうキャラが出てくる作品に今ハマってるのかな。


「言っておきますけど、別のワタシのおっぱいを言い換えた表現じゃないデスヨ」

「そんなの言われんでも分かっとるわ。大体こんなところで平然とおっぱいとか言うな」

「アウチッ!? 二度も叩いた……親父にも叩かれたことないのに!」


 やった、言えた!

 って顔するんじゃない。やるならもっと原作に似せなさい。声質はともかく表情くらいは寄せられるでしょ。


「というわけでシュウ、はいあ~ん♪」

「話をぶった切った挙句どうしてそこに繋がる? というわけでって言葉はそれほど万能な言葉じゃないぞ」

「シュウ、女の子が人前でここまでやってるんデスヨ。男ならつべこべ言わずに食べるべきデス」

「羞恥心の欠片もない顔で言われてもグッと来ねぇよ。というか、もう食べられないから俺に食わせようとしてるだけじゃないのか?」

「ソ、ソンナコトアリマセン」


 誤魔化すならもっと上手く誤魔化せ。

 いや……誤魔化す気がないだけか。本気で誤魔化すつもりがあるなら俺が反論できないような展開にするはずだろうし。


「やれやれ、仕方ありません。シュウがそこまで言うならシュウがワタシにあ~んしてください。それで手を打ちましょう」

「それだと俺がわがままみたいに聞こえるんだが?」

「まあまあ良いじゃないデスカ。幼馴染なんですからちゃちゃっとワタシに餌付けしちゃってください」


 病人の看病でもないのに何で俺が食べさせる必要があるのだろう。箸とかが使えない幼児とかならまだ分かるのだが。

 とはいえ、これ以上のやりとりは身の危険を招く恐れもある。

 だって……シャルさんには決戦兵器があるわけだし。こんなところで俺に胸を揉まれたことがある、とか声高らかに言われたら俺の人生終わりじゃん。

 なので受け取ったタコ焼きをシャルさんの口に運ぶことにします。危険回避のためにやってるだけで、別にシャルさんに甘いわけじゃないからね。


「ほれ」

「あ~ん……う~ん♪ シュウの球体状のものがワタシの口の中で」

「ほれ次だ」

「え、まだ食べ」

「大丈夫大丈夫、お前なら行ける」


 何か言いたげなシャルの口に次々とタコ焼きを入れる。

 ちょっと詰め込み過ぎて泣きそうな顔をしているが、食べさせて欲しいと言ってきたのはあちらなので気にしない。


「秋介さん……意外と鬼畜だね」

「失礼なことを言わないでくれ。こいつに好き勝手しゃべらせると危険なのはトモだって分かってるはず。塞げるなら塞いでいた方が世の中のためだ」


 だからね雨宮さん、シャルだけ良いなって顔をするのは間違ってるよ。

 俺はシャルとイチャイチャするためにこんなことをしてるんじゃないの。あくまで人聞きの悪い言葉を封じるためにやっただけで。お行儀良くしてるあなたにはする必要がないんだ。


「どうへふはぐならしゅうのしゅうでふはいで」

「黙らないとそのメガネかち割るぞ」

「まひめなはおでいはないでふださい! じょほはんにひほえないじゃなひでふか!」


 冗談で言ってないからね。

 というか、口にものが入った状態でしゃべるのやめさない。行儀が良くないよ。君のご両親はそんなレディに育ててはいないはずだ。自分をイギリス人ではなく日本人だというのならもっと淑女になりなさい。


「ガイさん達から聞いてはいたけど、本当に秋介さんはシャルさんと仲が良いんだね」

「ん」

「えっと……何でマイさんはあたしの袖を引っ張ってるのかな」

「ワタシが説明しましょう! マイさんはワタシやシュウと仲良しなのデス。なので自分だけハブられたような発言をされると寂しく思っちゃいマス。つまり今のマイさんの行動は、トモさんの発言に訂正または追加を求めているのデス!」


 さすがはシャル、雨宮のことをよく分かっている。でも


「ん……んぅ……」


 今の発言で雨宮が恥ずかしそうだよ。

 否定したそうにしてるけど、否定すると訂正や追加を求められずハブられそうだからって葛藤しちゃってるよ。

 こうなることはシャルだって予想出来ただろうに……まさかこいつ、雨宮を辱めるためにわざとやったのか!?


「ふ……」


 クールにメガネをクイってしやがった!

 こいつわざとだ。わざと友達を辱めやがったぞ。無邪気な笑顔を振りまくくせに何て腹黒い奴なんだ。

 雨宮を辱めやがって……可愛い雨宮を見せてくれてありがとうございます!


「え、ちょっマイさん、何でチョコバナナを構えてるんデスカ? まさかそれをワタシの口に入れ」

「ん」

「うぅ……!?」


 チョコバナナを高速で突っ込まれたシャルは抵抗する。

 しかし、雨宮は小柄ながら雨宮式ストライクを始めといた絶技の持ち主。並みの腕力で敵うはずもない。

 また……シャルはこれまでにMッ気がありそうな発言をしていた。

 無論、ただのノリや冗談で言っていただけかもしれない。が、現状で漏れている息遣いに興奮が混じっているように思えるのは俺の気のせいだろうか。

 はたから見る分には、小柄な女の子が悪ふざけでチョコバナナを食べさせようとしているだけなのに……何かエロい。見てたらいけないんじゃないかって思う程度にはエロい。でも見ちゃう。だって僕、男の子だもん。


「秋介さん、冷静に見てないで止めて欲しいんだけど」

「そういうトモちゃんだって冷静に見ているじゃないか」

「いやだって……何かエッチだし。あのふたりってそういう関係だったりするの?」

「そういう関係とはどういう関係?」

「それはその……お、女の子同士で」


 カザミンとは反対にこの手の話題も平気かと思いきやトモちゃんも恥ずかしそうだ。まあ頭の中の妄想を口にするわけだし、羞恥心を刺激されるのはむしろ当然なのかもしれないが。

 つまり……平気でおっぱいだとか口にしちゃう奴は一般からずれてる。シャルだけでなく、俺も一般とかずれてしまっているということか!?

 いやそんなことはない。俺は至って普通の高校生のはずだ。イギリス人の幼馴染が居ることを除けば、二次元好きなどこにでも居る高校生のはず。おっぱいのこととか考えちゃうのも性欲があるんだから当然であり必然なんだ。


「もう、秋介さんだって分かってるくせに。もしかして好きな女の子には意地悪したくなるタイプなのかな?」


 反撃のつもりなのか恋バナを仕掛けてきたぞ。

 冷静にこれまでの自分を振り返ってみると、別にそういうタイプではない気がする。わざと辱めようとする相手なんてカザミンくらいだし。

 でもそれはカザミンの可愛いところを見たいのでやっているだけ。

 いやシャルとかに振り回されるからそのストレス発散も入ってるかもしれないけど、だけど好きな女の子に意地悪したいってわけでは……

 カザミンは良い奴だけど。おっぱいとか脚とか魅力的だけど。でも頑なに真友としての関係を求めてくるし。それはつまり特別な意識は持つなというわけで。

 結論、俺は好きな子に意地悪をしたいタイプではない。

 親しい相手とは時としてそういうスキンシップを取るってだけだ。そういうことにしておこう。

 だが日頃異性から口でも剣でも負けることが多いだけに、このまま普通に返すのも少し癪だ。

 仕掛けていいのは仕掛けられる覚悟を持つ者だけ。雨宮が落ち着くまであっちには触れたくないし、ここはトモとの勝負に準じるとしよう。


「その理屈で行くと俺は、トモちゃんのことが好きということになるのだが?」

「え……そ、それはこっちに聞かれても困るよ。秋介さんの気持ちは秋介さんにしか分からないわけだし」

「まあそれはごもっとも。個人的にはそういうタイプではないと思うんだが……ただトモちゃんはそういうタイプだろうな」

「いやいやそんなことは……ないとも言えないけど」


 よし、勝った!

 俺が一方的に勝負認定しているだけかもしれないけど。でもそんなこと気にしない。だってトモちゃんが俺のことをからかおうとしたのは事実だから。俺はそれに反撃しただけだから。


「あっ……秋介さん、その顔は真面目に答えるフリしてあたしのことからかったでしょ。女の子の心を弄ぶなんて」


 弄ぶという言い方をされると人聞きが悪いのですが。

 そういうこと言われると反射的に「女の子?」って言いたくなってしまう。だって今のトモちゃん男装してるし。

 でもそんなことを言おうものならきっとトモちゃんは怒るだろう。トモちゃんは容姿的に時折男の子のような扱いをされてもおかしくないだろうし。まあ俺からすればどう見ても女の子なんだが。

 故に気になってしまう。トモちゃんのバストサイズは何カップなのか。

 考えろ、考えるんだ俺。こんなことでも考えてないと、あっちで卑猥な感じにチョコバナナを食べてる金髪メガネに意識が行ってしまうぞ。


「ちょっ、ちょっとダメだよ。あなたがおっぱい好きなのは知ってるけど、でもだからってマジマジと見られると恥ずかしい……シャルさんみたいに立派じゃないし。多分マイさんよりも……って何言わせるのさ!」


 え、俺が悪いの?

 確かにあなたのお胸を見ちゃいましたよ。ある思考を頭の隅に追いやるためにお胸のサイズどれくらいだろうって考えちゃいました。それは認めます。

 でもさ、別に俺はあなたのお胸が雨宮さん以下だとか言ってないよね。

 シャルさんより小さいのは見た目で分かるけど。いくら着痩せしてもさすがにシャルさんサイズがトモちゃんサイズになるとは思えないし。

 だが……今の発言からしてサイズ的には雨宮より下なのか。雨宮がDカップくらいだろうからそれより下ということはC、またはB……膨らみはあるからAということはあるまい。

 だけど、バストサイズってトップとアンダーの差だとか言うよね。

 つまり純粋にアルファベットだけでは見た目と一致しない可能性が……考えるのはここまでにしよう。

 あとで調べれば分かるだろうし、多分シャルに聞いたら嬉々として答えてくれるはずだ。


「まったく……そっちがその気ならあたしだって容赦しないからね」

「執事姿という人の目を引く格好なのにその解釈とは。すでに容赦がないと思うんですが」

「そうやって逃げようとしてもダメだから。やられてばかりなのは癪だし、絶対秋介さんのことを困らせてみせる」


 何て俺にとってメリットのない覚悟。

 その気合は自分のクラスに客を呼ぶことに使いなさい。変なところで頑張り過ぎ……

 いや、この学校の生徒はそんな感じか。クラス単位で人の関係性を調べようとしてたし。そういう意味ではトモも立派なあのクラスの一員だと認定できる。

 下手にかわそうとすると後々面倒なことになるかもしれないし、ここは受けて立つことにしよう。


「いいだろう。その勝負、受けて立つ」

「あなたのこういう時のノリの良さというか、男気は嫌いじゃないよ。むしろ好きだとも言える。でも勘違いしたらダメだよ。あたしがあなたのことを異性として好きになるには、まだまだ好感度が足りない」

「そういうのいいから話を進めて」

「その返しは減点だよ。女の子は自分の話を聞いて欲しい生き物。あたしみたいなおしゃべり好きは特にね」


 これは純粋な指摘なのか、はたまた勝負を仕掛けてきているのか。

 どっちにも取れるだけに反応に困ってしまう。なのでここは黙って次の言葉を待つことにしよう。


「さて、本題に入らせてもらうよ。あたしから投げかける言葉、それはもう決まっている。秋介さん、あなたの本妻はマイさんとシャルさんどっちなのかな!」


 ……ん?


「なあトモちゃん……俺も勝負を受けた以上、この手の話を振られるのは仕方がないと割り切ろう。だがしかし、普通今の質問するなら本妻ではなく本命では?」

「そうだね。でも世の中には色んな愛があると思うんだ。高校生でハーレムを築いている人が居てもおかしくないと思う」


 それはそうだけど、本妻ってことは結婚してるってことだよね。高校生で結婚している人はほぼいないんじゃないかな。

 そもそも、この国では一夫多妻制は認めてないです。かつては認められていたわけだけど、現代でハーレムを築くと浮気してるってことになると思うんです。


「さあ秋介さん、あたしの質問に答えてもらおう。秋介さんの本妻は、マイさんとシャルさんどっちなのかな!」

「そんなの決まってマス! シュウの本妻はワタシ、デス!」


 突然のシャルさんのカットイン。

 話が聞こえる距離だから乱入もおかしくないけど……でもさ、こういう話題に自分から入ってくる? 普通は聞き耳を立てるんじゃないの?


「おい金髪メガネ、俺がいつお前を本妻だと言った?」

「ふ、何を言ってるんデスカ。そんなの言われたなくても分かりマスヨ。だってワタシ、シュウの幼馴染ですから。シュウの本妻ですから」

「いやいや、それ勝手に分かってるだけだから。勝手に自分の都合の良いように解釈してるだけだから」

「いやいやいや、シュウとワタシは小学校の頃からよく夫婦扱いされてますから。今日も夫婦漫才してるなとか、結婚式には呼んでくれと何度も言われてきたじゃないデスカ。ということは、シュウはともかく他人はワタシをシュウの本妻だと認めているわけデス」


 いやいやいやいや、それは認めてるんじゃなくてからかってるだけだから。

 この金髪メガネ、雨宮にいいようにされたから俺で発散する気だな。すでに両親は攻略され、外堀を埋められているようなものなのに。俺の未来をこれ以上固定化されてたまるか。

 なんて思ってた矢先……


「違う。シャルは鴻上の本妻じゃない」


 雨宮さん参戦!

 この入り方は俺の味方をしてくれるようです。いやぁ持つべきものは友達だね。


「シャルはどこまで行っても鴻上の幼馴染。周囲の認識もその域を出てない。わたしの方がまだ本妻扱いされてた」


 おっふ……まさかの張り合う方向での参戦。


「マイさん、現実はちゃんと見ないとダメデスヨ。マイさんはシュウの傍に居るマスコットみたいな認識をされていただけデス。カルガモの親子みたいで可愛いって感じなんデス」

「シャルこそ現実を見るべき。確かにそういう認識の人も居るけど、わたしと鴻上が付き合ってると考える人も居る。もう中学生じゃない。高校生。周囲の見方も変わってる。鴻上と別クラスなのに本妻とか片腹痛い」


 雨宮の言い分は分かるのだが……クラスがどうのってこの話に関係なくね?


「くっ……」


 何かシャルさん押されてるんだけど!?

 苦虫を嚙み潰したような顔をしちゃってるんですけど!

 そして、雨宮さん。はたから見たら無表情だけど、親しい人間には分かる。今かなりドヤってる。

 

「た、確かにワタシはシュウと別クラス……それは認めましょう。デスガ、ワタシはシュウと心で繋がってるんデス!」

「わたしだって鴻上とは仲良し」

「譲らないつもりデスネ」

「ん」

「良いでしょう……ならシュウを賭けて勝負デス!」


 何が良いの? 何で俺を賭けた勝負に発展するの?


「今度行われるワタシ達の文化祭、そこで売り上げが高い方が勝ち。勝った方がシュウと1日デート出来る。これでどうデスカ!」


 もう本妻って言葉すら出てないじゃん。

 いやまあ話が現実的になってるから助かるけど。デートと言っても買い物とか映画に付き合う程度のことだろうし。

 というか、その程度の話を賭け事にする必要あるのかな? ないよね。ふたりの中だけで燃え上がっちゃってるだけだよね。


「ん、分かった。受けて立つ」

「ではこの話はここでおしまいです。シュウ、そういうわけなので」

「あぁはい、もう勝手にしてください」

「トモさん、そういうわけなので当日はぜひワタシのクラスに来てください」

「あぁうん」

「こっちにも来る。じゃないと不公平」

「そ、そうだね……」


 ごめん秋介さん。あたしのせいで何やらおかしな流れに。

 といった視線を向けてくるトモに俺は気にするなと優しく微笑み返した。

 だって……言い出したのシャルさんだから。シャルさんなら当日言い出してもおかしくないし。前もって言われた方が当日慌てずに済むし、お金の準備も出来る。

 そういう意味では逆にありがたいことじゃないですか。

 でもきっとこれから大変だよね。文化祭当日は嵐が来ると思っておくべきだよね。それが過ぎれば俺の日常にも平和が戻ってくれるよね。

 この願いが神に届くことを祈りながらその後の西連寺祭を回るのだった。



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