第3話 「それで鴻上はどうするの?」

 後日、我が家には3人の女子が集った。その3人とは……


 無邪気な笑顔で時に俺をどん底へと誘う幼馴染、シャルロット・バウンディ。

 腐りかけ中二病だが最近は常識的発言が目立つ真友、風見悠里もといカザミン。

 無表情ながら素直な言動で可愛さを振りまく雨宮式の使い手、雨宮舞。


 この3人である。

 えーと、何か物々しく紹介しましたが、シャルさんとカザミンに関してはアキラさんとの一件をすでに知っているので正直どうでもいいです。

 問題なのは雨宮さんですね。

 だって雨宮さんはあの現場にも居合わせちゃったし、俺が雨宮さんにICOの指南を頼んだのはアキラさんに再度近づくためだったわけで。

 すでにそのこと含めて一切合切説明したわけですが……気まずい、超絶気まずい。雨宮さん黙ったまま俯いてるし、雰囲気としては負のものが漂ってるし。

 いやね、俺も男です。だから雨宮式ストライクまたはバウンサーを受ける覚悟はしてます。

 でもさ、やるならさっさとやって欲しいと言いますか……何が来るか分からない時間が最も怖いわけです。お願い雨宮さん、何でもいいから行動起こして!


「……鴻上」

「な、何でしょう!?」

「今の言葉が本当だとすると……鴻上は川澄が好きだったと」

「は、はい」

「それで終業式に告白したと。それで微妙な感じに断られたと」

「……はい」

「でも諦めきれなくて、再度アタックするためにICOを始めた。少しでも早く強くなるためにわたしに近づいた。その解釈でオーケー?」

「は…………はい」


 行動は起こしてくれたけど、さっきよりも怖いです。

 まるで魔王様からゆっくりと尋問されてる気がします。殺すなら早く殺せ、そう言いたくなる圧力が雨宮さんの小さな体から放たれてますよ。

 どうやら雨宮さんは英雄だけでなく、魔王にもなれる素質があったようです。


「……鴻上」

「な、何でございましょうか雨宮様」

「これからする質問に正直に答えて。少しでも嘘吐いたら」

「はい、雨宮式ストライクですね」

「違う。しばらく鴻上と口聞いてあげない」


 なっ……なんだとぉぉぉぉッ!?

 いつもクールな顔をしているのに甘えん坊というか構ってちゃんな一面がある雨宮さんが、自分から他人との繋がりを拒絶する言葉を口にするなんて。

 それだけの覚悟があるということか。ならば俺も誤魔化しや嘘は言えない。正真正銘の本音で望むしかない。


「分かった。それで雨宮、お前は何が聞きたいんだ?」

「風見さん、何かシリアスな空気になってきましたね!」

「バウンディさん、もう少し黙っておこうか。今はふたりだけの時間だから」

「分かりました。じゃあ風見さんのおっぱい揉んでもいいデスカ?」

「ダメに決まって……ちょっダメって言ってるでしょ。何で近づいてくるのさ!? 私は腐ってるけど、恋愛対象は普通に男の子だから!」


 デュフフフと気持ち悪い笑みを浮かべるシャル。必死に自分の胸を隠しながら後退るカザミン。今、Fカップを巡るふたりの壮絶な戦いが始まろうとしている。

 とナレーションしてみたけど、やるなら別の場所でやってくれないかな。こっちはとても真面目な話をしているんで。


「ふたりともうるさい」


 今日は友人にも雨宮式ストライクを辞さない。

 そう言いたげな雨宮さんの言葉に風見はおろか、シャルさえその一言で黙った。

 ただ……体勢だけはシャルがカザミンを押し倒している状態になっている。Fカップの上にGカップが乗っているその光景は、形容しがたいほどエッチだと思った。あの間に挟まれてぇ……


「鴻上」

「な、何も見ておりません! 私は雨宮さんだけを見ております」

「ん……」


 この顔は凄く疑ってますよ。この目は非常に僕の言葉を信じていない目ですよ。

 嘘を言ったり、誤魔化したりしないってさっき誓ったけど……それは雨宮さんの質問に対してであって。今の一件とは別と言いますか……。

 だって仕方ないじゃん!

 Fカップのカッコいい系女子がGカップの金髪メガネ女子に押し倒されてるんだよ。すぐそばでおっぱい押し付け合うような体勢になってるんだよ。男なら誰だって見ちゃうって。生物として当然の反応じゃないですか!

 だから悪いのは俺じゃない。俺の傍でイチャコラするシャルとカザミンが悪いんです。つまり俺が悪いんじゃなく『俺達』が悪いんです。断じて俺だけが悪いわけじゃありません。


「そ……それで雨宮さんの聞きたいことというのは何でしょうか?」

「仕方ないから話を進めてあげる。わたしが鴻上に聞きたいことはただひとつ」


 ご……ごくり。


「鴻上は……わたしと一緒にICOしてて楽しくなかったの? 川澄のためだけにプレイしてたの?」

「風見さん、何か凄くドキドキしてきました。マイさんか川澄さんか。シュウはそのどちらを選ぶのか。まるでラブコメ最終巻のエンディング付近を見ているような気分デス!」

「うん、その気持ちは分かるけど。でもやっぱり黙ろうか。今とても大切な話をしてるから。茶々を入れていい空気じゃないから。私のおっぱいを揉んでもいいから少し黙ってて」


 カザミン、ありがとう。

 お前が常識人で良かったよ。腐りかけ中二病って一面はもう捨てていいんじゃないかな。その方がきっとお前にも友達が増えると思うし。

 ただこれだけは言わせてくれ。

 何おっぱいを安売りしてるんだ! お前の胸はそう簡単に触れるものなのか。俺なんか少し見ただけで見るなって怒られるのに。シャルにだけ簡単に触らせるとかずるいぞ。俺だってお前のおっぱい触りたいんだからな!

 ……なんて考えている場合ではないな。今は風見のことより雨宮だ。嘘や誤魔化しは出来ない。周囲の状況に心を惑わされることなく、俺の本音を雨宮に伝えなければ。


「鴻上……どうなの?」

「それは……正直雨宮の特訓はきつかった。何度も心が折れそうになったこともある。最強のプレイヤーを目指せば目指すほど、アキラから遠のいていた気にもなった。でもアキラに再度アタックするためだと思って耐えた」

「……そっか」

「ただ、俺だってそこそこゲーマーだ。みるみるスキルが育つのは嬉しかったし、雨宮にどうやったら勝てるのか考えるのは楽しかった。雨宮と一緒に遊べて良かったと思ってる。決してアキラのためだけにやってたわけじゃない」


 まだゲームの中で雨宮さんの生足を拝んでないし。

 それを除いても一撃どころか1ダメージすら与えられないというのはゲームをしている人間からすれば屈辱ですよ。何としても雨宮さんに……マイさんに一矢報いたい。

 出来る事なら……マイさんよりも強くなって、マイさんの防具類だけを耐久力ゼロにする技術を身に付けたい。そうすれば合法的にマイさんの裸を見ることが出来る。


「鴻上……何かわたしを見る目がやらしい」

「え、いや、その……僕も男の子なので。目の前に可愛い女の子が居たらつい見てしまうというか……すみません、以後気を付けるので勘弁してください」

「ダメ」

「ですよねー」

「以後気を付けちゃダメ。いつもはダメだけど……たまにはやらしい目を向けていい。女の子として見られない方が困る」


 ……コフッ。

 近くにシャルや風見だって居るというのに何て大胆発言を。まだ完全に立ち直っていない俺の心にはクリティカル過ぎる。


「マイさん堪んねぇぇぇッ! ワタシなら抱き締めて押し倒したくなる可愛さデス。キスだって強引にでもしちゃいマス。嫌がっても舌まで入れちゃいマスネ!」


 何か俺以上にクリティカルしてる人も居るけどね。

 いやまあ気持ちは分かるんだけど……あんな風に自分を完全開放することは俺には出来ないかな。

 カザミンほど羞恥心があるわけでもないけど、シャルさんほど羞恥心を捨ててるわけでもないし。


「えっと……雨宮さん、それで俺の処遇の方は?」

「鴻上にはこれまで良くしてもらったし、川澄との一件はわたしも悪いところがあったから今回は許してあげる。鴻上と口聞けないのも嫌だし」

「雨宮……」


 何この子、超可愛いんだけど。可愛さだけで言えばアキラさんより上なんですけど。今のアキラさんって女ってものを捨てちゃってるし。

 でも本人のためにこれだけは言っときます。今はあれだけど、アキラさんにも可愛いところはあるんですよ。今説明すると場の空気が崩れそうだから言わないでおくけど。


「それで鴻上はどうするの?」

「……と言いますと?」

「川澄にまたアタックできるように頑張るのかってこと。もしそうなら……わたしは鴻上のこと応援しない」

「そ、それは何故でしょうか?」

「だって……」


 い……いったいどんな理由が。


「だってわたし……川澄のことあまり好きじゃないもん」


 ド直球な理由来たぁぁぁッ!

 まさかあの雨宮さんが誰かに向かって嫌いと取れる発言をするなんて。いや全ての人間を好きになれる人もいないと思うけどね。性格とか考え方とか千差万別だし。中には生理的に無理な人も居るだろうし。


「はい! 正直言えばシャルさんも応援したくないデス!」

「シャルロット、お前もか!?」


 空気を読まずに自己主張する幼馴染に感化されて、ついシャルさんのことフルネームで言っちゃった。

 別に問題があるわけじゃないけど、何かシャルさんをシャルロットって呼ぶのって抵抗があるよね。だってシャルロットだとさ、シャルさんの中身に何も問題がないように思えちゃうし。


「当然デス。だって川澄さんルートが確定するとワタシの安泰ルートがなくなるじゃないデスカ。やはり幼馴染は外国人でも負けヒロイン、みたいになるじゃないデスカ」

「なるじゃないですかってラノベのタイトルみたいに言われても……」

「何より! シュウと川澄さんがくっついちゃったらシャルさんが自由にシュウの部屋に入れなくなっちゃいマス。さすがのシャルさんにも恋人の居る幼馴染の部屋に無断で入るような真似はしちゃいけない、という良心はありますから」


 何だろう、個人的な理由なのは雨宮さんと変わらないのに……こいつの理由は何か納得できない。

 あと偉そうにしないでください。グレートなお胸が際立って話が入ってこなくなりますから。


「じゃ、次は風見さん。どうぞ」

「……え、え? もしかして私も何か言わないといけないの?」

「当然デス、ここはそういう流れデスヨ。さあ風見さん、思う存分胸に秘めた想いを言っちゃってください!」

「いや別に秘めた想いとかないんだけど……私としては、鴻上くんが川澄さんを諦めないということなら応援するだけだよ」


 風見……お前って奴は


「何ひとりだけ良い子ぶってるんデスカ! ひとりだけ点数稼ぐとかずるいデスヨ。これだとワタシとマイさんが悪者みたいじゃないデスカ!」

「何で怒られるの!? 自分の考えを言えって言ったのはバウンディさんだよね。ちょっとそれは理不尽過ぎないかな!」

「何を仰いマス。風見さんは学校の屋上で趙雲のようになりたいと槍の練習をしちゃうような痛い人じゃないデスカ。趙雲に転生したら劉備×関羽を見たいとか言っちゃう腐女子じゃないデスカ。そんな人に誰も常識染みた発言なんて求めてません」

「人を変態みたいに言わないでくれないかな! 確かに私は痛くて腐ってるけども、時と場所を選ぶ常識は持ってるから。存在そのものが変態染みてるバウンディさんにだけは言われたくないから!」

「そ、そんなに褒めないでくださいよ。照れちゃいマス」

「褒めてない!」


 なあみんな、俺は思ったのだが……カザミンの真友は俺よりもシャルさんの方が良いのではないだろうか。何というか相性的に最も噛み合っている気がするし。


「それで鴻上はどうするの?」

「何か話がループして……いえ何でもないです。えー鴻上さんとしてですね」

「ここに居る全員とのハーレムエンドを目指し、毎晩酒池肉林を楽しみたいと思いマス」


 そこの金髪メガネ、ちょっと黙ってなさい。

 想像力豊かなカッコいい系女子は別に胸を隠さなくていいです。誰もハーレムエンドなんて目指してません。そもそもここは日本です。一夫多妻は認められておりませんよ。


「えー鴻上さんとしましては……アキラさんと結ばれたら嬉しいとは思います」

「くっ、やはり幼馴染は負けヒロインだったんデスネ……」

「そこうるさい。まだ終わってないから黙ってなさい。続きですけど……まあアキラさんには一度フラれてますし、私自身が失恋したと思っちゃったこともあって、前ほど好きな気持ちで溢れているかと言われると怪しいところなんですね」


 情熱の炎が弱まったというか、精神的に大人の階段上ったというか。


「なので……また再熱する可能性はあるとは思うんだけど、今のところ何が何でも恋人になりたいとは思ってないのが本音ですね。ただ今の関係のままというのも気まずいので、出来れば前のように気軽に話せる関係に戻れたらと」

「ふむふむ、つまりシュウはやはりハーレムエンドを目指したいと。ハーレムエンドを迎えるためには好感度管理が重要ですからね。さすがはワタシの幼馴染、最も厳しく険しいルートを選択するとは」

「現実の恋愛はゲームほど簡単じゃないよ。好感度の動き方なんて決まってないんだよ。二次元脳で恋愛を考えるのはやめなさい」

「ぐのおぉぉぉぉぉおッ!? 一度フラれた人物からの言葉は重みが違いマス」


 こいつ、ケンカ売ってんのかな。

 いじめて欲しくてわざと癪に障ること言ってるのかな。

 いいかねシャルさん、人っていうのはちょうだいちょうだいアピールされると逆にしてあげたくなくなるもんなのさ。だから俺はあなたのことを無視します。


「それが鴻上の本音?」

「まあ今のところ」

「そ……まあ友達に戻るくらいなら手伝ってあげる」

「雨宮……」

「でも、そろそろ《決闘王国デュエルキングダム》に向けて追い込みかけないといけない。だから鴻上の手伝いばかりは無理。鴻上のスキル上げや対人訓練も前ほど手伝えない」


 じゃあ何で手伝うとか言ったんですか。

 いや、雨宮さんはICOの準最強プレイヤーだし決闘王国が大切なのは分かるよ。準最強プレイヤーとしての立場や責任があるのは十分に理解できる。

 でもさ、何か言い回しに悪意があるよね。

 もしかして怒ってます? 怒ってますよね? いやまあ怒っても仕方がないとは思いますが。だって悪いの完全に俺だもん。


「鴻上くん、大丈夫さ。君のことは私が雨宮さんの分まできっちりサポートするよ。何たって私は君の真友だからね」

「風見」

「何かな雨宮さん?」

「そのおっぱいで鴻上のやること邪魔したらオコ。その大きなおっぱいで鴻上を誘惑したらオコ」


 雨宮さんが黒いオーラ放って威嚇してるよ。

 でも仕方ないのかな。雨宮さんって自分より胸が大きい人にはこういうところあるし。カザミンはシャルさんには負けるけどFカップだからね。雨宮さんより身長も高いからね。きっと雨宮さんには二重でダメージだよ。


「な……ななななな何を言ってるんだッ!? わ、私がそんなことするわけないだろう。私と鴻上くんの関係はそういうものではないんだ。もっと清らかで尊いものなんだぞ!」

「風見がそう思っていても鴻上はそう思わない。鴻上はエッチ、とてもエッチ。大きなおっぱいにはすぐエッチな目を向ける」


 こらこら、人を性欲魔人みたいに言わないでくれ。

 確かに大きなおっぱいはすぐ見ちゃうけどね。エッチなことも考えちゃうけどね。でもそれは男子高校生なら普通のことじゃないか。


「なら悪いのは私じゃなくて鴻上くんの方じゃないかな。それに私は何度も私をエッチな目で見るなと注意している」

「ダメ。それだと逆効果。人はダメって言われた方がしたくなる。それに風見は恥ずかしがり過ぎ。それだと鴻上はかえって興奮する」


 ふむ、それは否定できない。


「風見のおっぱいは大きい。女のわたしから見てもとても魅力的。せっかく大きなおっぱいしてるんだから堂々としてるべき。大きなおっぱいは立派な女の武器」

「理屈は分かるけど、言ってることは分かるけど……大きい大きいって何度も言わないでくれないかな! 世の中にはおっぱいが大きいことを気にしてる女の子だって居るんだぞ!」


 カザミン、ちょっと涙目である。

 そっか……カザミン、いや風見さんって自分の胸をコンプレックスに思ってたんだね。まあ大きくなればなるほど可愛い下着もなくなるって言うし、人の目も集めちゃうからね。

 でもその割に風見さんってボディラインを隠すような服装ってしないよね。下手に隠すより自分に似合う恰好をしている方が目立たないって考えなのかもしれないけど。

 だけど、これだけは言っておきたいな。

 俺は風見さんのような大きなおっぱい好きだよ。大好きだよ。それは女としての立派な武器だから。だからもっと自分の胸に自信持って。


「大丈夫デス風見さん」

「……バウンディさん」

「そのうち見られるのが気持ち良くなってきますから!」

「私が見て欲しいのは好きになった人だけだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」


 カザミン、魂の叫びと共に逃走。

 中身に近いところがあるカザミンとシャルさんだけど、根っこが違い過ぎてこういうときの相性は最悪のようです。

 いや~カザミンって乙女だよね。雨宮さんとは別ベクトルで可愛いかも。


「風見帰っちゃったし、今日は解散」


 雨宮さんってこういうとき全然ブレないよね。

 今後どうなるかは分かりませんが、色々と手伝ってもらえるようなので精一杯頑張りたいと思います。

 待ってろよアキラ、俺はお前と友達に戻ってみせる!



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