第318話あ~、もう! くっそ! 何してんだ私!
「はぁ、美味しかった」
全自動おかわり機能が付いたイカは端的に言えば自害してしまった。しばらくの間は色々と足掻いていたが、どうやらそれを無意味と悟り私に殺られるくらいならと自害したのだった。
惜しい。非常~に惜しかった! これだけ美味しかったのだから是非とも私の非常食兼おやつとして勧誘、テイム、捕獲したかったのに!
まさかゲソを炙るのに夢中になってる隙に自害するとは……。私、君となら良い関係が築けると思ったのに残念だ。
そんな事を思いつつ解体作業に勤しむ。現在はゲソを回収して墨袋を取り出している最中だ。
ふふふ、これで帰ったらイカスミパスタが食べられる♪
本来なら足はそのままにワタを出すが如何せん大きさが違う。なので最初に足を取ってからワタを取り出す。取り出したらすぐに胴の部分を水魔法で洗浄しつつ、くちばしと目を切除して墨袋を剥がす。
ふう。重労働。
墨袋を取り出した後は本体も回収。皮を剥いで水気を取り適当な大きさにカットする。なんとこいつには骨もあったので何かに使えるだろうと一応取っておいた。そんな作業をしていると不意に頭の中にシステム音が聞こえてくる。
▶スキル熟練度が一定に達しました。スキル【解体LV.1】を獲得しました。
おおう!? ビックリした。え~と、どれどれ?
技能スキル【解体】
効果:ドロップアイテムの獲得確率アップ。使用者の補食可能なモンスターの場合下処理済みの食材として入手。食材の品質アップ。レベルにより効果アップする。ソウルテイカー【喰吸.魂】との併用可能。
神スキルキター!!
これでいちいち自分で解体する必要無くなる! しかもアイテムとしてゲットしたら、下処理済みの食材になってたり、品質アップしてるとか! もう、神スキル過ぎでしょ!!
それと食事の最中にこんな物も手に入れた。
称号【悪食】
あらゆる物を食べた者に与えられる称号。
効果:消化能力アップ、酸強化
獲得スキル:【強酸】
属性スキル【強酸】
相手を溶かす酸攻撃が可能になる。
補助スキル【過食】
限界を超えて食べ、エネルギーを蓄える事が出来るスキル。蓄えたエネルギーで食事を取らない事も可能。
食事の最中にガダルに言われたが、どうやらここ最近異様にお腹が空くのは進化のせいらしい。
曰く、急速に力を付け進化した私は常にエネルギーが足りていない状態なのだそうだ。
その為不足しているエネルギーを食事で摂取しようとしているらしく、食事をしてお腹がいっぱいと感じていたのは人間としての理性と本能で、実際、体はまだまだエネルギーを欲していたのだとか。
そんな私が進化を繰り返して食事量が増えていった結果としてこのスキルが増えたんだと思う。
因みに普通のモンスターなら倒した相手の魔石を食べるので、通常は一度多くの食事を取れば大丈夫らしい。
私はモンスターの肉は食べても魔石までは食べないからね。しかし、このスキルのお陰で私はより多くご飯が食べられるようになる。ふふふ、私の異世界食事ライフは順調だね!
【強酸】のスキルは、前からある毒系のスキルのように指先から出す事も可能だし、ウォーターボールの要領で飛ばす事も可能だ。
残念な事にこのイカでは【喰吸.魂】が振るわずに、新しいスキルもレベルアップも無かった。やはりこいつは私の非常食としてしか役に立たなかったようだ。つくづく惜しかった。
イカの解体を済ませ空間にしまった私は周りの水で汚れを落として次の階層への階段を慎重に登る。
何故かと言うと、事前に次の階層をチェックしようと魔領を使ったのだが、どうやら次の階層への入り口に結界のような物が張られていた為に情報が得られなかったからだ。
そのまま進むとやはり結界が私の視界に映る。その向こうには荒野のようなフィールドと、そこを埋め尽くす大量のオークの群れが闊歩していた。
……マジかよ。
見渡す限りのオークの群れを前に呆然とする私。ステータスは平均三百程と、今の私なら簡単に倒す事が出来るだろうが如何せん数が多すぎる。
数というのは理不尽な程の暴力だ。
長時間の戦闘は肉体的な疲れもあれば、精神的な疲れもある。集中も落ちれば相手を倒す事も容易ではなくなっていく。そうでなくても数に圧殺されればそれだけで死んでしまう。何せ私は弱いのだから!
さて、それを踏まえた上で作戦を立てなければいけないがどうしたものか?
悩んではみてもシンプルな数の暴力は、対応もシンプルな物になってしまう。しかもこのフィールド、遮蔽物が無いからゲリラ戦にも持ち込みにくい。
アリシアが居れば一気に殲滅出来る魔法を頼むんだがなぁ。私の魔法は基本圧縮して威力高めてるのばっかりだから多数の敵は相性悪いんだよな。
あれ? でも、これってこっちから見えてて向こうから見えないって事は。
思い付いたら即実行!
私は即座に目の前を通り過ぎようとしてるオークに向かいファイアーボールを放つ!
向こうから見えてないなら一方的に攻撃しちゃえば良いじゃない!
私の放った攻撃は予想通り壁をすり抜けオークを襲い炎に包まれ絶命した……なんて事にはならず結界に阻まれその場で爆発しやがった。
「うわっちゃい!」
そうだよ。結界あるんじゃん! 普通に見えてるし【鑑定士】のスキル使えたから忘れてたけど、魔領も阻まれてたじゃん! そりゃこうもなるさ!
どうやら私も大分焦っていたようだ。【鑑定士】を使い結界を調べると、どうやら魔力や攻撃等は通さず一方通行で通り抜けられる物らしい。
さて、それじゃあ出来る事は一つしか無さそうなので少し休むかな? と、腰を落ち着けようとした時。私の目に少し不思議な光景が映った。
「あれは、スライム?」
某、クエストに出てくるようなスライムではなくて、丸い寒天、もしくはゼリーの中にゴムボールのような物が浮かんでいるスライムがオークに追われているのだ。
上の階から迷い込んできた? いや、それよりもなんでモンスター同士で争ってるんだ? どれどれ。
【鑑定士】スキル成功
スライム
HP:50/100
MP:50/50
物攻:10
物防:20
魔攻:0
魔防:5
敏捷:15
知恵:5
器用:35
運 :10
スキル:【体当たり】【物理耐性】【分裂】【適応進化】
スライム:魔法生物
説明:基本的なノーマルスライム。ゴブリンと並ぶ最弱のモンスター。レベルの概念が無くどこにでも生息している。未だに解明されていない事が多く、進化、種別も多岐に渡る。
何かの罠かもと考えた私は、スキルを使いスライムの事を調べてみるが特に変わった所は無し。むしろHPが減っている事から本当に襲われているようだ。
しかし、最弱のモンスターって書かれてても最初の私よりも強いし【物理耐性】まであるじゃん! まっ、モンスター同士の争いなんて知ったこっちゃないし、最初の私よりも強いから良いでしょ。
そんな事を考える私の前では未だにスライムはオークから攻撃を受けつつも必死に逃げている。
……あれ。明らかに追い込んでるだけだな。
オーク達がその気になればスライム一匹すぐにでも倒せるだろう。
しかしそうはせず攻撃をわざと外し、カスらせるだけにしたりと追い詰めて遊んでいる。
そんな逃走劇もスライムが壁際に追い詰められ終わりを迎えようとしていた。追い詰められたスライムはゼリーのような体を震わせ、オークに向かい必死に【体当たり】を繰り返すがやはり通じず、こん棒の一撃でその命を散らそうとしている。
しかし、そのオークの一撃がスライムに届く事は無かった。それもその筈、スライムを狙っていたオーク達はそれを為す前に私によって倒されたからだ。
「あ~、もう! くっそ! 何してんだ私!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます