第316話そこまで言います!?

 ▶ハクアのレベルが6に上がりました。


「おっ?」


 本を読みながら優雅に食後のティータイムをしていると私のレベルが上がるアナウンスが聞こえた。


 よしよし。上手く行ったみたいだね。それにしても白滅鬼になってからレベルがなかなか上がらんな。まっ、当たり前だけど。


 ▶称号【毒使い】を獲得しました。

【毒使い】の称号によりスキル【毒威力増加LV.1新】獲得しました。


 おっと、こんなものまで増えたか。やべぇ。私ますます堅気っぽくなくなっていってるよ!? このままだとステータス見られた時捕まるんじゃないだろうか?


 と、そんな事を考えていると終わりかと思ったアナウンスがまだ続く。


 ▶称号【悪逆非道】を獲得しました。


 そこまで言います!? なんなの!? こっちは命懸けなのに正々堂々と挑まないといけない訳!? 手持ちの札を使いきってこその本気でしょうよ!

 良いだろう。次の階からは誰が見ても納得するような正攻法で攻略してやるよ! ……くっ! 私一人だから誰も応えてくれない。ちょっと寂しいぞ。てかこれ。称号だけでスキル貰えない奴じゃん! マジ要らねぇ。


 システムからの無慈悲な謗りを受けた私は、がっかりしながらも土魔法で固めた扉を元に戻して、そろ~。と、中を覗き見る。


 よしよし。予定通り全滅だね。


 この最下層の広間のコンセプトはあくまでもモンスターハウスだ。階層ボスを倒したした直後の大量モンスター。そう、強いモンスターであって階層ボスではない。と、いう事はボスには効き難い私の状態異常攻撃が通じるのだ! そして結果はこの通り。


 インプにグレムリン、ミニデーモンとそれらを統括するデーモンがぎっしりと広間には転がっていた。


 これ全部と戦ったら大変だったろうなー。てか、勝てる気がしない。しかし、なかなかの惨状だな。


 毒に侵された者、石化した者、体が溶けた者、麻痺したまま苦しみに暴れた仲間に殺された者、実に様々な死に方をしている。


 酷いな……なんて凄惨な現場なんだ。でも、それでも悪逆非道は酷いと思うの。


 そんな事を考えながら私はスキルを使いモンスターを回収していく。


 因みにこの階層で上がったスキルと手に入れたスキルはこんな感じ。

 幻惑魔法LV.6新、空間魔法LV.8

 火炎魔法LV.6、闇魔法LV.7

 新しく手に入れた幻惑魔法は相手に幻覚を見せて惑わせたり、脳に直接痛みを感じさせたりも出来る魔法だ。レベルが上がるとより強力な幻覚が使えるらしい。


 使い勝手も良いし。今後が楽しみだ。


 全てを終わらせた私は次の階への階段を登って行く。登りきった所から見えるのは一面水に浸されたダンジョンだ。


 うーむ。魚影とかが見えるよ。あっ、蛇? ウツボ? なんか向こうの方にはフォルムおかしい人形っぽい物も見えますよ。あれ? これ全部モンスターです?


 非常に嫌な予感がした私は素材に使えないかとしまっていた、比較的綺麗な状態だったインプを空間から取り出しボチャンッと水の中に投げ込む。そして直ぐ様気配を消して階段へと身を隠す。


 そのまま覗いていると、私が投げ入れたインプへピラニアのような大量の魚が一気に群がり、インプの肉を貪っていく。

 そのまま黙って観察すれば、一分もする頃には全ての肉が無くなり骨と内臓等が残りピラニアモドキが居なくなる。

 しかし、そのピラニアモドキが居なくなると、今度はチュカパブラのようなモンスターが現れ、脳と内臓、流れ出たインプの血液を啜り去っていく。

 すると今度はワニのようなモンスターが現れ、骨を一気に噛み砕き僅か五分ほどでインプの痕跡は跡形も無く消え去っていた。


 うーん。マジふざけんな♪ なんだこの嫌すぎる食物連鎖! どいつもこいつも一連の流れが手馴れてやがるのがすげー怖いわ!?


 ずっと眺めてステータスを見ていたが、どれもインプと大差無い程の強さだった。

 特にあのピラニアモドキのスイーパーフィッシュなど、一匹一匹はゴブリンと同じくらいの強さだ。だとしてもそれが水の中というのが問題だ。そしてあの数。あんな感じで群がられたら一気に骨になってしまう。


 正直最初の一分程でマトモに攻略する気など一切無くなった私は途中から充電を始め、今ではもう十分に電気を溜めていた。


 そして私は全力で「鳴神!!」と攻撃を放つ。


 私の発した電撃がフロアの水を伝わり広がっていく。しかも今回は白雷のおまけ付きで威力が極限まで高められているのだ。


 ▶ハクアのレベルが7に上がりました……。


 私は若干非難がましく一気に上がるレベルアップの音を聞きながら一つ心に誓う。


 マトモに攻略を考えるのは止めよう!


 そもそもがこうやって攻略されるような設計が悪い! だから私は悪くない! 全部作ったガダルが悪いんだよ! 正攻法、ハッ! 馬鹿馬鹿しい。命あっての物種だってーの!?


 頭の中で悪態を尽きつつこんがり焼き上がったスイーパーフィッシュを回収。一瞬旨そうな焼き魚の匂いに釣られるも、そういえばインプ食ってんだよな。と、断念する。


 いや、もしかしたら内臓と頭部分だけ避ければいけるか?


 と、思い直し。半分程は食料として確保した。


 スイーパーフィッシュを回収したおかげで疫牙がLV.6に上がった。


 更に進むと辛うじて生きているワニっぽいモンスター。ボーンイーターが居たので止めをさして回収。ついでにワニの肉は鳥のささみに味が近いので捌いて回収した。


 ふふふ、鶏肉モドキゲットだぜ。


 残念ながらワニ四匹ではスキルは何も上がらなかった。無念。


 その後もモンスターを回収しながら先を進む。マグロのような巨大なモンスター、鮫のようなモンスター、なまこやイソギンチャクのようなモンスターもいた。


 しかし、どれもこれも大したスキルは無いようでスキルは上がらずガッカリである。食べ物としてはバラエティー豊かで大満足。


 更に進むと先ほどチラッと見えた人形の物が水にプカプカと五匹ほど浮かんでいる。どうやら半魚人のようだ。調べてみると名前はサハギョンというらしい。ステータスも中々だ。私よりも全体的に少し高い。


 こいつらは流石に食えないな。と、少しガッカリしながらスキルを使う為少し屈み、それと同時に首を横に傾げる。


 すると、私の後頭部が在った所を勢いよく銛のような物が通過していった。少しでもタイミングが遅れれば私は後頭部から刺し貫かれていただろう。


 通過した銛の先を左手で握り、右腕を銛に引っ掛け抱えるように回転すると、テコの原理で襲撃者は銛に押し倒され水飛沫を上げながら倒れる。


 それを確認した私は素早くクナイを取り出すと襲撃者の喉目掛け振り下ろし距離を取る。


 しばらく暴れた襲撃者はやがて動かなくなった。どうやら事切れたようだ。


 襲撃者はもちろんサハギョン。どうやら一匹だけ運良く生き残ったのが私を襲ったようだ。


 HPが無くなった事を確かめた私はサハギョンもスキルで取り込む。すると、今度は【水場適応】と言うスキルをゲットした。


 補助スキル【水場適応】

 効果:水場での活動が楽になる


 簡易的過ぎてわからない。ヘルさーん! ヘルさんのありがたみが良く分かるよ!!


 わからない物はしょうが無いと進むと、水を切る感覚が少なくなり水の抵抗が明らかに減っている。


 今いる場所はかなり深めで腰ほどまで水があるが、どうやらこれが【水場適応】の効果らしい。


 ふむふむ。なかなか使えるじゃないか。


 ボスが待っているであろう部屋の少し前にゲット出来たのは嬉しい誤算だ。


 そのまま何事も無く進んで行くと部屋の扉に辿り着く。今度はさっきのようには行かないので「ヨシッ!」と、気合いを入れドアを開ける。


 すると、私はいきなり触手のような物に足を絡み取られ水の中に引き込まれた。

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