★★★ Excellent!!!
一人きりの世界に入り込んできたのは、あの子の消毒薬の匂い。 近藤近道
人との距離を取りたがり、塞ぎ込んでいる主人公、牧原陵。
陵は高校に入学しても「私の世界」に誰も入れる気はありませんでした。
しかしクラスメイトの男子、水戸部空からたちこめる消毒薬の匂いが、陵を「私の世界」から引き離します。
消毒薬の匂いがする彼の右頬は腫れあがっており、大きなガーゼで覆われていました。
そして空もまた陵と同様に人を近寄らせないような態度を取っており、そんな彼に陵は興味を抱きます。
読者としても、空くんの存在はインパクトがあり、目が離せません。
彼のことを注意深く見ようと、陵ちゃんと一緒の気分になって読んでいくのが楽しい小説です。
そして空くんの存在が陵ちゃんにどのような影響を与えるのかが非常に気になって、どんどん先を読みたくなります。
「私の世界」に誰一人も入れるつもりのない陵ちゃんの心はどのように変わっていくのか?
そして陵ちゃんを変えるきっかけとなるのは、空くんのどのような姿なのか?
とてもとても興味の引かれる物語です。