第518話 幼女からドラゴンまで
「こほん、なぁサーシャ? 確か『《
「確かにそう申し上げましたわ」
「それにしては男女比が偏ってるかな、って感じるんだけど? 偏ってるって言うか、ほら、男しかいなくない?」
「そうですわね」
「だろ!? ――いやいやもちろんそれが悪いって言っているわけじゃないんだよ? ただ
「えーと、それにはその、大変深い事情がありますの……」
急にサーシャの歯切れが悪くなった。
いつもは俺の目を見て堂々と話すのに、視線が不自然に泳いでいる。
怪しい……めっちゃ怪しいぞ。
さては何か隠しているな?
「理由を聞かせてもらおうか。これは別に俺が女の子と握手できなくて不満だとかそう言うことじゃないんだ。ただ事前の情報と実際の結果とのギャップに困惑しているだけで、それ以上の意図はないんだよ? ほんとだよ?」
「それはその、セーヤ様のお耳には少々入れづらいことがありまして……ですから……」
「いいよ、言ってみて。俺は細かいことは気にしないから。むしろ俺のためとか言って隠されている方が、サーシャに信頼されてないみたいで悲しいかな」
「――っ! 申し訳ありませんでしたセーヤ様! で、では申し上げますの……」
サーシャは意を決したように俺の目を見ると、言った。
「若い女性の間で『《
「ならなんで――」
「ですが同時に、セーヤ様は幼女からドラゴンまで、穴さえあれば手あたり次第突っ込む《
「え? なんだって?」
帰ってきた答えのあまりのあまりさに、因果を断絶してやり直すディスペル系S級チートが『え? なんだって?』が激しく暴発した。
「セーヤ様は幼女からドラゴンまで、穴さえあれば手あたり次第突っ込む《
そしてサーシャの口から2度告げられた衝撃の事実……!
「な、なんだその事実無根の根も葉もない流言飛語はっ!?」
「あくまで噂ですの! ――ですがおそらくはその噂のせいで、特に女性から握手会というイベントが敬遠されてしまったのではないかと思いますわ。手を握っただけで妊娠させられるといった与太話も小耳にはさみましたの」
「な、なんということだ……」
こんなにも清く正しい未だ完全童貞の俺だというのに、特に若い女性からヤリチンスレイヤーな大公様などと思われてしまっているだと……!?
「ですがご安心くださいセーヤ様!」
「これの何をどう安心しろと!?」
「セーヤ様が紳士で素敵な殿方であることはわたくし、重々承知しておりますもの! たとえ誰になんと言われようとも、わたくしはセーヤ様の
「ありがとうなサーシャ。その気持ちはすっごく嬉しいよ……でもね?」
それとこれとは話が別なんだよ……。
ううっ、まさかこんなことになっているなんて。
あまりのことに、がっくり肩を落としてうなだれる俺だった。
当然のことながら、握手会は最後まで男ばかりであり、俺は人知れず心の中で涙したのだった。
ぐすん……。
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