第434話 隣にいられる特別な権利
「ま、バカ話はそれくらいにして」
そう言うとケンセーはキリッとすごく真面目な顔をした。
これから大切なことを言うよって気迫がこれでもかと伝わってくる、そんな強い意志を感じさせる表情だった。
「私はね、セーヤくんと過ごすうちにもっとセーヤくんと一緒にいたくなったんだ。セーヤくんの隣にいられる特別な権利を、失いたくないって思っちゃったんだ」
「あ――」
「だから嘘をついて、この素敵な時間を引き延ばそうとしたの。もっともっとセーヤくんと一緒に居たかったから。一緒に過ごして、一緒にどーでもいいような馬鹿なお話をして、いつかは結ばれたかったから――」
「ケンセー、お前……」
突如として訪れた本気の告白タイム。
それはウソ偽りのないケンセーの本心で。
「そういうこと、だったのか……俺を嫌っているんじゃなくて、俺のことを好きだったから……それで俺と一緒にいるために、そのために自分は『剣聖』だって嘘をついていたのか……」
実のところ、騙されていたことにショックはない。
何か理由があるんだろうなとは思っていたから。
その理由が俺を好きだったからで、しかもケンセーみたいな可愛い子に思いを告げられて。
俺は素直に嬉しかった。
一緒にいたかったって言われて、本当に心の底から嬉しかったんだ。
『従兄妹で幼馴染』なケンセーと過ごした日々が、走馬灯のようによみがえってくる。
同じ家で寝起きして、一緒に遊んだり、プール掃除をしたり、2度にわたる全チートっ子モニタリングをやったりいろんなことを二人でやったんだ。
垂れ目で童顔でおせっかいでやきもち焼きなケンセーとの思い出は、俺の心の中にしっかりと深く刻み込まれていた。
「ケンセーの気持ちはすっごく嬉しいよ」
――だけど俺は告げなければならない。
だってこの世界は現実世界ではないのだから。
俺とケンセーのこのくすぐったい関係も、いつかは終わらせないといけない淡雪のように
「でも……だけど……それでも俺は――」
「ねぇセーヤくん。セーヤくんは私の正体にも気づいてたりするのかな?」
――と、別離の言葉を告げようとした俺の言葉を、ケンセーの質問がさえぎった。
まぁここまでくるのに結構な時間がかかっちゃったし、今さらちょっと話が長くなったくらいで大勢に影響はないだろう。
もう少しくらいなら会話に付き合ってもいいよな?
俺だってケンセーと一緒にいるのが嫌なわけではないんだから。
むしろケンセーとの別離が「悲しい」ではなく「辛い」と思うくらいに、俺の中でケンセーの存在は大きなものになっていた。
「そうだな……確信っていうか、多分これかなって思うのが一つある」
ケンセーについて特に気になったのが、ピンク色のモテかわオーラで相手の認識に干渉するチート能力だった。
こんな可愛いケンセーが言うんだからそうなんだろうな、っていつの間にか思ってしまう能力だ。
「聞かせてくれるかな?」
そして俺は、これにとてもよく似たそっくりのチートを知っていた。
今回擬人化していない、そして『剣聖』と並んで使用頻度が高かった――いやぶっちゃけ俺が使いまくっていたS級チートが一つだけある。
それは――
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