第417話 最後の一人
「サイマルティニアスインタープリターちゃんは、ネイティブかってくらいに英語ペラペラだから本物だろう」
「すごいよね。綺麗なクイーンズイングリッシュに、アメリカのフランクな英語、第二言語的なちょっと堅い言い回しの英語まで使い分けちゃうし。バリバリに仕事ができる素敵な女性って感じで憧れるよね」
「ネイマール・チャレンジちゃんも球技大会のフットサルで、空気読まずにやりすぎってくらい点を獲りまくってたから本物だろう」
「決勝だけで10得点だからねぇ。草サッカーに一人だけワールドクラスが混じってたっていうか? しかも絶対に手抜きはしない主義」
「球技大会といえば、ケンセーは意外とフットサル下手だったな。最強S級チート『剣聖』なんだし運動は得意そうだったから、もっと動けるのかなーって思ってたんだけど、へっぽこだったからちょっと意外だった」
「う……それはその……うん、あれというか……」
「あれってなんだよ?」
「その、えっと……」
なぜか急にあたふたしだしたケンセー。
小刻みに体をゆすったり、視線があちこち行ったり来たりと、小動物みたいですごく可愛いんですけど!?
「もう、いいでしょ! 私は剣を持たないとへっぽこぴーなの! だいたい足で剣が持てるかー!」
「わかった、わかったから暴れるな」
「うがー!」
とまぁそんな感じで。
2年S組の全チート少女への能力チェックはついに今、最終盤を迎えつつあった。
「というわけでだ」
「うん、残るは一人、だね」
「ああ、ミロノヴィーナスちゃんただ1人だけだ!」
「やったねセーヤくん、ついに犯人にたどり着いたよ」
「ああ、たどりついたぜ」
この半月、地道な内偵捜査でチートっ子たちをモニタリングしていった結果、ついにミロノヴィーナスちゃんを一人、残すだけとなったのだ。
「ミロノヴィーナスちゃんのチート能力は知っての通りその無敵の美貌だよ。特に何かのモデルになった時は、相手の心を直接鷲づかみするような問答無用の魅力を発揮する、まさに美少女なミロノヴィーナスちゃんらしい能力だね」
「なにせアイドルが霞むくらいの超ド級の可愛さだもんな。しかも明るくて性格もいいときたもんだ。これで好きにならない男はいないだろ――っておいおいケンセー、むくれんなよ。お前も十分可愛いんだから。ただま、ちょっと相手が悪かっただけだ」
「む・く・れ・て、なんかいません!」
「いや、めっちゃむくれてるじゃないか……」
「ふん! セーヤくんのばーかばーか! ぬるぽ!」
「おまえは子供かよ……ガッ! ……まったくしゃーねぇな」
俺はケンセーの頭に手を伸ばすと優しく頭をなでてあげた。
「そうやればごまかせるとでも思ったか! ――ふぁ」
とか言いつつ嬉しそうな顔をするケンセー。
見事にごまかされてくれたようだ。
「でも少し意外だったな」
「と言いますと?」
ケンセーがかわいらしく人差し指を唇に当てて小首をかしげた。
くっ、こいつはこいつで仕草がいちいちあざと可愛いくて、俺の萌えポイントを的確についてくるんだけど、なんなの?
さりげなくドキドキさせられちゃうんですけど?
「ミロノヴィーナスちゃんは最初から魅力全開で、しかも自他ともに認めるクラスのまとめ役だっただろ? だから俺的にはかなり早い段階で容疑者から外してたんだけど」
「うーん、チート能力を使わずに自力でまとめ上げてたのかな?」
「まぁ、人心掌握なら専用のチートじゃなくてもできなくはないよな。目に見える何かしらの技能が必要なわけでもないし」
フットサルや英語の能力は誤魔化しがきかないが、そういうのとはちょっと方向性が違うからな。
「というわけで。白黒はっきりさせるためにも、ミロノヴィーナスちゃんには絵のモデルにでもなってもらいましょう」
「どうやって声をかけようか?」
「そーだね……夏休みの自由研究で人物画に挑戦ってことでいいんじゃない? 絵のモデルをぜひやってほしいってセーヤくんが頼めば、まちがいなく引き受けてくれるよ」
「オッケー、さっそく頼んでみよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます