第410話 これはこれで良し!

「そして私はS級チート『剣聖』です」


「そうだったのか……」

「騙しててゴメンね。こんなことして、セーヤくんに嫌われてもしかたないと思う」


 ケンセーがしっかりと深く頭を下げた。


「そっか……そうか……そうだったのか……まさか『剣聖』が幼馴染で従兄妹な感じの美少女だったなんて……イメージ的には黒髪ロングの清楚クール系日本刀使いだったんだけど、でもこれはこれで良し!」


 俺はこぶしを握って親指を立てるとグッとした。


「あはは、セーヤくんはほんとブレないねぇ」

 それを見て苦笑いするケンセー。


「ははっ、それほどでもないさ」

 められたので謙遜けんそんしておいた。

 俺は奥ゆかしい日本人であるからして。


「うん、でもそれでこそセーヤくんだよね! ちなみに私は剣を持つと、上から目線で最強さんな性格に変わります」


「普段のケンセーからは想像もできないな……見てみたいような、見たくないような……」


「ふふっ、機会があればご披露しましょう――それで話の続きなんだけど」


「おっと悪い、話の腰を折っちゃって」


「ううんいいよ、それでね。セーヤくんが《精霊神竜》と《精霊融合-エレメンタル・フュージョン》したり《全チートフル装備》したでしょ。あれが引き金になって、S級を中心にいくつかのチートが自我を持ったんだ」


「チートが自我を持った!? そんなことありえるの!?」

 なにそれスゴくない!?

 いきなりさらっと、とんでもないこと言われちゃったんだけど!?


「チートと精霊がエネルギー体って意味で近いことは、セーヤくんも感じてたでしょ? だったらチートが精霊のように自我をもったって、ぜんぜん不思議じゃないんだよ」


「あ、確かにそう言われると納得ではあるな……同じような存在なんだもんな……でもそっか、精霊=自我を持ったエネルギー生命体って言われてそんなもんかと納得しちゃってたけど、精霊さんって考えてた以上に異質な存在なんだな……」


 俺は精霊さんの特異性について改めて認識させられたのだった。


「そういう意味では、《精霊融合-エレメンタル・フュージョン》で《精霊神竜》の力を使うことができて。同じように『固有神聖』《全チートフル装備》もできたってことは――」


 ケンセーのつぶやきに、


「――ってことは?」

 さっきの逆で、今度は俺が聞き返した。


「うん。もしかしたらその2つと性質が似ているアストラル界っていう『もう一つの世界』そのものだって、なんらかの力とかエネルギーとして使える――かもしれないかなって」


「アストラル界の力を使う――ってどうやるんだ?」


「いや、私に聞かれても……あくまで可能性の話だし?」

「あ、そう……まぁそうだよな……」


 アストラル界は俺たちがいる物質世界とは違うエネルギー世界みたいなもんだから、そういう可能性もあるかもってケンセーも単に思ったことを言っただけなんだろう。


「でも精霊さんはなぁ……もうちょっと言動が超越存在っぽければなぁ……。壮絶な勘違いをさらしたばかりのアホの俺が言うのもなんだけどさ? 精霊さんってば言動が軽すぎて、なんかもう半分ノリで生きてるみたいな感じというか……」


 人生を楽しく生きたいパーリーピーポーっていうの?

 一緒にいると楽しいんだけど、時々テンション高すぎてついていけないこともしばしばです。


「なんていうか自由の申し子だよね……そういう意味では、《神滅覇王しんめつはおう》によく似ているかも」


「あはは、それは言えてる。いつもポジティブ&どこまでも前向きだしな。うん、

オッケー、俺が置かれている状況は分かった。じゃあ最後の質問だ。なんでこんなことしたんだ?」


 それが一番の問題だった。

 なぜ俺を騙してまで、こんなことをしでかしたのか?


 もし何らかの危害を加えようっていうなら――うん、チートがない俺には何もできないぞ!?


 ふえぇ、どうしよう!?(現実逃避で可愛く言ってみた)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る