第381話 重なる力

 完全にヘバりきる前に、なにがなんでも打開の糸口を見つける――見つけてみせる!

 ――そう、俺が強く決意を固めた時だった。


主様ぬしさま、少々苦戦しているようじゃの?」


 背後から《神焉竜しんえんりゅう》の温かく、そして力強いセリフが聞こえてきたのは――!


「この声は《神焉竜しんえんりゅう》! もしかしてなにか策でもあるのか!?」


 わらにもすがる思いで即反応してしまった俺に、


「なーに、策などと深く考える必要はあるまいて。ここにわらわたちがおるじゃろう、わらわたちが!」


 《神焉竜しんえんりゅう》は謎かけみたいな答えを返してくる。


「《神焉竜しんえんりゅう》たちが……? どういうことだ……?」


「もう、相変わらず察しが悪いわね! つまりは融合するってことよ!」

 会話に割り込むようにして、精霊さんの元気な声が聞こえてきた。


「融合って、俺と精霊さんとでか? でも《精霊融合エレメンタル・フュージョン》は《天照アマテラス》が熱すぎて無理なんじゃ――」


「アタシだってSS級だし、ティモテとは友達なんだもん! 為せば成る! 熱さなんてなんぼのもんじゃーい! ファイトー、いっぱーつ! おらおらー、どんとこーい!」


「ま、まさかの根性論……!」


 だがしかし!

 精霊さんに尋常ならざるやる気がみなぎっているのが、手に取るように伝わってくる――!


「これなら――今の精霊さんなら、きっと可能だ!」

 どんな障害も、根性で乗り越えてくれる――!


「きヒひッ、まだ何かあるの? いいよ、このまま終わってもつまんないし、ほら、もうちょっとあがいてみなよ?」


「にやけた上から目線で慢心かましてチョーシこきやがって――」


 でもわざわざ待ってくれるってんなら、ありがたくその慢心、有効活用させてもらうぜ――!

 

「よし、行こう精霊さん! エレメンタル――」


 キリッとしたおとこのキメ顔で宣言しようとした俺を――、


「待つのじゃ主様ぬしさま! それだけではないのじゃ! わらわの黒粒子も使わねば、SSS級には届かぬじゃろうて!」


 《神焉竜しんえんりゅう》の言葉が押しとどめた。


「《神焉竜しんえんりゅう》の黒粒子を――?」


「《精霊神竜》と戦った時にわらわの力を使用したであろう? それの応用なのじゃ。《神滅覇王しんめつはおう》の状態で、わらわの黒粒子と――」


「アタシの《精霊融合エレメンタル・フュージョン》でブーストすれば!」


「「SSS級の《魔神》にも届くはず――!」」


 《神焉竜しんえんりゅう》と精霊さんの声が、打ちあわせでもしていたかのように見事に重なった――!


「それは確かにすごいパワーになるだろうけど。でもそんなこと、できるのか? SS級の力を3つ、いや4つ融合させるなんていくら巫女エルフちゃんでも――」


 《神滅覇王しんめつはおう》、《神焉竜しんえんりゅう》、《精霊神竜》だけじゃない。

 《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣クサナギノツルギ》だってSS級だからな。


「これだけの強大な力を一つに束ねるなんて、さすがに――」

「そこはそれ、クレアがちゃんと再調整してくれたから、短い間なら大丈夫!」


 クレア……?

 あ、巫女エルフちゃんのことか。


「この子ほんとに優秀なんだから」

「いやほんと、マジですごいな巫女エルフちゃん、もう何でもありだね!」


「巫女エルフですからー」


 おおっ!

 おなじみのフレーズが、今日はいつにもまして心強いぞ……!!


「そういうわけなら、悩む必要はないよな――!」


 俺はみんなとアイコンタクトをして呼吸を合わせると、声を高らかに宣言する――!


「「「「《最終融合》――ファイナル・フュージョン!」」」」


 4人の声が重なって――、


「……4人?」


 《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣クサナギノツルギ》はしゃべらないから3人じゃあ――、


「なに、SS級というのならワシの力も使えないかと思ってな」


「おまえ、グレン――!」


 そこには、さっきまで俺と戦っていた《剣の魔将》グレンがいたのだった――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る