第379話 リインカーネーション・システム

「ヒヒ……ッ、《神滅覇王しんめつはおう》、殺す!」


「お前さっきからそればっかりだな! 壊れたレコードかよ? あとティモテの身体で、俺を殺すとか言うなっつってんだろ! しばくぞこら!」


 押しては返す波のように次々と起こる爆発をBGMに、全力で切り結びながら俺と魔神は隙を見ては口汚くののしりあっていた。


「キヒっ……これは宿命。私は《魔神》。《魔神》とは《神滅覇王しんめつはおう》を殺す者だから――ッ!」


 《魔神》の鋭い横薙ぎを、上段から《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣クサナギノツルギ》を叩きつけて抑え込んだ。


「なにが宿命だよ、ストーカーかよ!? 俺は今日はじめてお前の存在を知ったっつーの! ぐぅ――っ!」


 互いの力がぶつかって小爆発が起こるたびに、小さくない反動が身体に返ってくる――!


「《魔神》はね、リインカーネーション・システムの終着点なの」


「だからそもそも、そのリインカーネーション・システムとやらはなんなんだよ!?」


 俺は前提条件からして分かってないって言ってんだろ。


 っていうか自分は知ってるからって、さも常識みたいに知識マウントとって偉そうにしてると、俺も俺の知恵袋ウヅキに聞いちゃうからな?


 ウヅキはマジで何でも知ってるんだからな?


 ウィキペディアで対象ページを読んでいるみたいに──いやそれ以上にかみ砕いてわかりやすく説明してくれるんだからな?


 最終兵器ウヅキを舐めんなよ?

 あんま調子こいてるとウヅキ大先生にご登場いただくからな??


 いやまぁさすがに《魔神》のなんちゃらシステム? ――のことはどんな本にも載っていないだろうし、知りようがないだろうけど――、


「――いや、ウヅキならワンチャン知ってるかもしれないな。軽々けいけいに断定するのは良くないか、うん」


 それくらい俺はウヅキの知恵袋ぢからを信頼しているのだった。


 虎の威を借る狐――ならぬウヅキの知恵袋を借る俺が、全力で他力本願しつつ切れかけていると、


「いヒッ、リインカーネーション・システムはね、文字通り、《魔王》が転生リインカーネーションを重ねることで《神滅覇王しんめつはおう》を超える究極存在へと昇華するための進化システム――ヒひッ」


 激しく《絶望ニ染メヌカレシ闇紅ノ魔神剣グリムヴェル》を振り回しながらも、


「く――っ、な、に――?」

 しかし、《魔神》はあっさりとその内容を教えてくれたのだった。


 ただ、その内容ときたら俺が思いもよらなかったもので──、


「キヒッ、すべては世界を滅ぼす《神滅覇王しんめつはおう》を殺すため。そのために《魔王》が転生リインカーネーションを繰り返し、代を重ねてたどりついた最強存在が《魔神》――つまり私、いヒッ」


 なんだ……そりゃ?


「いやいや待て待て、そもそも俺が一体なにしたっちゅーねん!? どう見ても人畜無害だろ? 世界を滅ぼすように見えんのかよ!? っ、そこ――っ!」


 わずかな隙を見出して放った渾身の突きを、《魔神》は簡単にひらりとかわしてみせた。

 くそ、さっきから俺の攻撃が当たらなくなってきている……!


「キヒッ、《神滅覇王しんめつはおう》はいずれ必ずそうなるの。《神滅覇王しんめつはおう》が《神滅覇王しんめつはおう》であるがゆえに、ね。ひヒっ!」


 逆に今度は、空ぶった俺に《魔神》の鋭いカウンターが放たれて――、


「ふんす――っ!」


 強引に引き戻した《天地開闢セシ神竜ヨリ産マレシ黄金神剣クサナギノツルギ》で、俺はギリギリのところでガードに成功した。


「いヒッ、だからその前に私が《神滅覇王しんめつはおう》を滅ぼし、その後……その後……? 世界を滅ぼす……?」


 あれっ? ――と《魔神》が首を傾げた。

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