第217話 せーれーしんりゅー

「そういやエルフ村ってかなり暑いよな? もう夏みたいだ。おっぱ――クレアもかなり薄着みたいだし」


「んーとね、《精霊神竜せーれーしんりゅー》の加護でこのあたりは夏に気温が保たれてるんだー」


「《精霊神竜せいれいしんりゅう》……」


 またこれ、どうみてもSS級っぽい名前が出てきたな。

 よし、あまり関わりたくないからスルーしよう……。


 もちろん《精霊神竜》ってのが気にならなくはないんだけれど、なんせ俺は10日で3体のSS級と遭遇してみせた『SS級ほいほい』の疑いがあるからな。

 またもや新たなSS級とのフラグが立っちゃいそうで嫌なのでござる……。


 というわけで、


「つまりここは常夏とこなつエルフ村なんだな」

 俺は見えてる地雷原を華麗にスルーした。


「もともとエルフは自然を感じられる薄着が好きなんだー。でも冬は寒いから厚着してたんだよ」


「そりゃまぁそうだよな。冬は薄着ではいられない」


「でね、昔のはおーさまはそれを聞いて、《精霊神竜せーれーしんりゅー》を倒して常夏エルフ村になるように精霊契約せーれーけーやくさせたんだってー」


「おおっ! めっちゃ意外だ、《神滅覇王しんめつはおう》は好き放題やってたイメージだったのに。ちゃんと誰かのためになることをしてるんだな」


「んーと、昔のはおーさまは薄着の女の子が好きでー、ずっと夏ならみんな薄着になるっておもったみたいー」


「……やっぱ想像通りのアホだったわ《神滅覇王しんめつはおう》。そしてその無駄すぎる行動力には驚かされる……」


「でもおかげで薄着でずっといられるんだー。はおーさまには、かんしゃだよー」


 そう言って巫女エルフちゃんが笑うと、ぷるんとおっぱいが揺れた。

 何もしてないのに笑っただけで揺れてしまったのだ。


「まるでおっぱいがドヤ顔ってるようだ……」


 理不尽なほどの圧倒的ドヤがおっぱいの前に、言語機能が崩壊寸前の俺だった。


「はおーさまは、そのあともよくエルフ村に遊びにきてたみたいー。ここにくるとパワーぱわーが回復したんだって。それでその時にやった色んな回復方法ほーほーとか決まりごとが、いまも巫女エルフに伝わるしきたりなんだー」


「そっか、そういう理由もあったのか……」


 ここは《神滅覇王しんめつはおう》にとって一種の回復スポットだったってわけだ。

 ただの女の子大好きなエロ覇王じゃなかったんだな……。


「はだかで添い寝してたのも、パワーぱわー回復の方法ほーほーの一つなんだー。ほら、倒れてたはおーさまはパワーぱわーがすっかすかだったんだけど、だいぶ回復してるはずだよー?」


 アレにはそんな意味があった……のか?


「っていうかそんなことまで分かるんだな」


「うん、だって巫女エルフだからねー」


 すごいな、なんでも巫女エルフで済ましちゃうこの適当な感じ……。


 しかし改めて意識してみると、確かにぶっ倒れる前にあった身体の重さ・倦怠感けんたいかんは完全に消え失せていた。


「うん、確かにリフレッシュ感があるというか。まだ全快じゃないけど、力が戻ってる気がする」


「よかったー。でね、ほかにもエルフの村はいくつかあるんだけど、そういう縁もあって『エルフ村』っていったらはおーさま御用達ごよーたしのここをさすんだー。《精霊神竜せーれーしんりゅー》の加護もあるから、自然とみんな集まってくるしねー」


「へー」


 とまぁ、あれこれ話しているうちに朝食の時間は終わりを告げて。


「じゃあ朝ごはんもすんだことだし、パワーぱわー回復プログラムをはじめよっかー」


「パワー回復プログラム? ってさっきの添い寝? だよな?」


「うーんとね、昔のはおーさまが残してくれたのが他にもいろいろあるんだー。どうかなー? ためしてみないー?」

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