第171話 異世界温泉~九日目、ウヅキとハヅキとサーシャと《神焉竜》と~

 帰宅後すぐにちゃちゃっと手際よく用意してくれたウヅキのおかげで、俺は今、温泉に浸かっていた。

 ――もちろん女の子たちと一緒にである。


「いやはや、奥方殿のおっぱいは想像以上の逸物いつぶつじゃのぅ。わらわもこれは素直に負けを認めるしかあるまいて。最強の《神滅覇王しんめつはおう》たる主様ぬしさまにも相応しい、実に素晴らしい乳房じゃて」


「そんなまじまじと見られながら言われると、とても恥ずかしいんですが……、えーとその、ありがとうございます……?」


「うむうむ、控え目なところもなお良しじゃ。主様ぬしさまはほんに幸せ者よのぅ」


 俺を挟んで右隣にウヅキ、左隣に《神焉竜しんえんりゅう》がピタリと身体をよせて、おっぱい談義・イン・温泉できゃっきゃうふふしている。


 左右どちらを見てもおっぱいが激しく自己主張していて。

 どちらの腕にもやわらかい感触がダイレクトアタックしてきていて。


「くっ、やはりここが……、この異世界温泉こそが天国だったのか……!」

 天国はあるよ、ここにあるよ――。


「この天国がずっと続けばいいのに――」

 そう思えるような温泉を、俺は今この瞬間、堪能していた――。


 そんな幸せ空間の中。

 サーシャが一人、離れたところでポツンと温泉に沈みかけているのが目に入った。


 ちなみにもう一人の女の子ハヅキはというと、最初こそ俺に抱っこされてたんだけれど、今はすいすいと平泳ぎで泳いで遊んでいた。

 まったくもって愛らしいことこの上ない(ほっこり)。


「ふふっ……、セーヤ様の両隣に、銀河級のおっぱいと神話級のおっぱいが並び立っておりますの……。わたくし、あそこに近づくなんてとてもできませんの……。もはやそれは勇気ではなく蛮勇、完全な自殺行為ですわ……」


 よく目を凝らして見てみると、いい湯加減の温泉に浸かっているというのに、サーシャは顔を真っ青にしてガクガクブルブル震えちゃっていた。


「ふふふ……お湯にぷかりと浮かぶあの4つの偉大な膨らみの前には、わたくしのぺたんこ大平原などもはや満月の下の月見草……。いえ月見草などと言うのもおこがましい……満月の下の惨めなありんこ……それがわたくし……。比べる以前の問題ですわ……」


「サーシャ……」

 胸のサイズのこと、めっちゃ気にしてるんだな……。


 でもこの二人は相手が悪いだけだから、そこまで気にしないでいいんじゃないか?

 サーシャには他にいいところがいっぱいあるんだからさ。


「いいえ、気を強く持つのですわ、わたくし……! わたくしのおっぱいがぺたんこなのは、かつて武門で名をはせた弓の名門トラヴィスの血統のなせる技……!」


「サーシャ!」

 そうだ、そうだぞサーシャ!

 がんばれ、がんばるんだ!


「そのことを誇りこそすれ、他人をうらやむ必要などないのですわ、ないのですわ、ないのですわ……ぐすっ」


「サーシャ……」

 だめ、だったか……。

 もはやかける言葉が見当たらない……。


 そもそもそれ以前に、

「ウヅキと《神焉竜しんえんりゅう》をはべらせて温泉天国を満喫しちゃっている俺に、いったい何が言えるというのか……」


 しかし気落ちしているサーシャの元に、


「サシャねぇ、げんきだす」

 ぺたんこ同盟のハヅキが励ましにむかった。


 すいーと泳いで行って優しい言葉を投げかける。


「ハヅキちゃん……、ええ、ええ! あなただけはわたくしの味方ですわね! はぅあぁっ!?」


「うにゅ?」

 突如として、ザバリと大きくのけぞりながら奇声を上げたサーシャ。


 なぜかと言うと、


「ふ、ふふふ膨らみが! ほのかな膨らみがありますわ!」

「ん? あんまり、かわらない」


 ぺたぺたと小さなおててで、自分の胸とサーシャの胸を触り比べるハヅキ。


「ハヅキちゃんとわたくしでは歳が、歳が違いますの……! これで既に完成系と言っても過言ではないわたくしと、ウヅキと同じ正統なる巨乳の血統に生まれ、これから発展すること間違いなしの未来形ハヅキちゃんとでは、もはや数年後の差は歴然……!」


「サシャねぇ、ぺたんこおっぱいも、かわいい……かも?」

「は、はわわわわわ……、ぶくぶくぶくぶくぶく……」


 ハヅキの放った無邪気すぎる一言によってとどめを刺され、意識を失ってしまったサーシャを、


「あ、おい、サーシャ! さすがに沈むと死ぬぞ!?」

 俺は慌ててお湯の中から引きあげたのだった。

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