第120話 お嬢さまとメイドさん
しかもである。
いけないミリアちゃんときたら、弱った獲物に狙いを定めた肉食獣のごとく、さらなる追い打ちをかけ始めたのだ。
「ちゅぱ、れろ、れろ、ちゅ、ちゅぶ――」
俺の命令を待ちきれなくなったのか、ミリアちゃんは根元までずっぽりと口に咥えこんだ俺のモノを、唾液を絡めた舌で一心不乱に舐め上げはじめたのだ……!
「ちゅ、ちゅぶ、れろ、ちゅ、ちゅぱ、ちゅぷ――」
口をすぼめて唾液をたっぷり乗せて、執拗に俺のモノを攻め立てるミリアちゃん。
室内には淫猥な水音だけが鳴り響き、口内に押し入った俺のモノを、柔らかい舌の感触が根元から先っぽまで余すところなくこれでもかと舐めまわすのだ……!
「くっ、もはやこれまで……!」
24時間近くぶっつづけで働いて疲れきった身体と心が、理性というタガを外しにかかる……!
なにより可愛い女の子に、これ以上の恥をかかせていいはずがあろうか?
いや、ない!
事ここに至っては、漢・
――そう思った瞬間だった。
「申し訳ありませんの! ひよこが一羽こちらに逃げてきてはおりません――くわっっ!?」
ガラッと扉を開いて顔を出したのは、なんと金髪ぺたん娘ことサターホワイト・マテオ・ド・リス・トラヴィス=愛称サーシャだった。
サーシャは壁際でくんずほぐれつ身を寄せ合う俺とミリアちゃん見て、口を大きく開けたまま固まってしまっている。
「あ、あああ、あの、セーヤ様!? どうしてここにセーヤ様がいらっしゃるのですか? いえ、それよりも今、一体二人で何をされていますの……!?」
「え! いや、ナニってその、それはですね、あの……」
浮気を現行犯されちゃった亭主のごとく、今まさに32年間眠りつづけた童貞という名の
「私が危うくひよこを踏みつけてしまいそうになったところを、マナシロさんに助けていただいた次第でして」
本当に何事もなかったかのように、俺の腕の中からすり抜けるようにして身体を離すと、さらっと『状況』を説明してみせたミリアちゃん。
「あら、そうでしたのね。わたくしてっきり、いかがわしい情事が行われているものだとばかり……。も、もう、びっくりさせないでほしいのですわ」
「勘違いさせてしまい申し訳ありません、お嬢さま」
「いいえ、ミリアこそ気にしないでくださいな。夜通しずっとお手伝いをしていたと聞いておりますわ。お勤めご苦労様でした。お父さまの計らいで特別給金と2日の休暇を与えることになっておりますわ。存分に羽を伸ばして疲れた身体を癒してくださいな」
優しい笑みを湛えながら労をねぎらうサーシャは、優しくて素敵なお嬢様って感じで。
「特別のご高配をいただき、誠にありがとうございます。それでは最後にご当主さまに終了の報告を行ってから、
対するミリアちゃんもメイドらしくぺこりと品よく腰を折って頭を下げると、さらっとこの場を後にしたのだった。
「うーむ、この変わり身の速さ……。さっきまではあんなにえちえちだったのに女の子は色々と凄いな……」
感心すると同時に、ちょっと怖さも感じた俺だった。
ちなみに両手を腰の前で組むことで、さりげなく膨張したアレを隠している。
かっこわるいことこの上ないです……。
「セーヤ様?」
そんな俺にいぶかしげな顔を向けてくるサーシャ。
「いやいやなんでもないよ、なんでもない、うん」
「ふふっ、そうですか。セーヤ様も夜通しの初生ひな鑑別、大変お疲れ様でしたの。食事の用意ができておりますわ。それでその、せ、せっかくなので……」
「ん?」
急にもじもじ照れ照れし始めたサーシャ。
ずっと強気な感じだったのに、急にそんな態度見せられたらドキッとするだろ……。
「あの、わ、わたくしもぜひセーヤ様とお食事をご一緒させていただければと、その、思っているのですけれど……」
「え? ああうん、一緒に食べよう……えっと、サターホワイトさん」
まだ俺はサーシャと呼んでいいとは言われてないからね。
当然の対応である。
女の子に優しくされるとすぐに勘違いして馴れ馴れしくするのは童貞の悪い癖だと、インターネッツのいたるところに書いてあったし。
「――サ、サーシャでよろしくってよ」
「え、ああ、そう……?」
なんかサクッと許可が出てしまいました。
「だ、だって友人はみなそう呼びますわ。セーヤ様はウヅキのお知り合いなのですから、セーヤ様も……わ、わたくしの友人ということですし? ……であれば当然とサーシャと呼んでいただいて、その、全然構わないのですわ!」
途中ボソボソ、最後はクワッ!って感じでまくしたてるサーシャ。
「呼んでいいっていうなら、これからはサーシャって呼ばせてもらうよ……サーシャ」
「や、やたっ! やりましたわ!」
「うん、なんか嬉しそうで良かったね」
愛称で呼んでもらうだけでこんなに喜ぶなんて、ちょっとボタンの掛け違えがあっただけで、やっぱ根はいい子なんだよな。
この様子だとあの後、ウヅキと仲良くやってくれているのはまず間違いないだろう。
確認しておきたかったけれど、いちいち蒸し返すのはこれはもう野暮ってなもんか。
「ああ、そういえばさ。やっぱここはサーシャの実家だったんだな。トラヴィスのお屋敷&本店だって聞いてもしかして、とは思ったんだけど」
「セーヤ様こそ、凄腕の初生ひな鑑別師がまさかセーヤ様だったとは、わたくし思いもよりませんでしたわ」
「ふっ、俺は割と何でも器用にこなせるのさ。ああ、あと『様』はやめてくれないかな?」
まったくもって言われ慣れていないし、むしろ本来ならサーシャ様と俺が呼ぶ方がしっくりくるんじゃないだろうか。
「いいえこれは、『セーヤ様』という呼び名は、わたくしにとって特別で格別でオンリーワンなのですわ。……そう、特別ですの。この胸の奥にずっと居座る黄金馬車の王子様……あぁ~~♪ その熱くたぎる瞳の、ほんの片隅で構いませんわ~~♪ わたくしの居場所が~~セーヤ様の中にありますように~~♪」
なぜか左手を胸に当てると、右手を斜め前方に伸ばして高らかに歌いはじめたサーシャ。
「あ、はい……なんかこう、急にミュージカルし出すところとかインパクトありすぎて、片隅にいるどころか忘れることはまず無いんじゃないかと思いますです……」
あと黄金馬車だけは記憶から除外してほしい。
あれは本気で俺の趣味じゃないんだよ……完全な風評被害なんだよ……。
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