第39話 小さい子でも意外とオッケーかな、なんて……
ぶっちゃけ、どうすればいいかって問われてもだよ。
娘どころか、その前段階として女の子とお付き合いすらしたことない俺に、ちゃんと説明して、誤解を解いて、納得させて。
そうしてこの難局をクリアするってのは、あまりにハードモードすぎると思うんだ。
だったらもうこれしかない――!
どうしようもなくなった俺は、言葉という人類が生み出した究極のコミュニケーションツールを諦め、もっとも原始的な方法を選択する。
つまり――ギュッとハヅキを抱きしめたのだった。
抱きかかえたままで、頭を優しく撫でてあげる。
「あ……」
言葉で示せなくとも、行動では示せるはず。
いたわるように、慈しむように、心配なんてなくなるようにと、ゆっくりと、優しく、そっと頭を撫で続ける。
「……ぁぅ」
数分間そうやって抱きしめながら頭をなでなでしていると、次第にハヅキの身体からは力が抜けていって。
「どうだ、まだ信じられないか?」
俺は頭を撫で続けながら、一番穏やかな笑顔と優しい声色でもって、ハヅキの心に語りかけるように、そっとそう囁いた。
「ううん、しんじられる、まなしーのきもち、かんじた……まなしーのこころ、はいってきて、ぽかぽか、する」
抱きしめた腕の中で脱力し、俺に体重を預けるようにしてくっつきながら、ハヅキが答える。
「そうか、ならよかった。じゃ、もうちょっとこうしてような」
「うん……」
ぶっちゃけ言葉で説明できずに、とりあえず抱きしめて誤魔化す的な不誠実男みたいな気はしなくもない。
ある程度ごり押しが通じるラブコメ系S級チート『ただしイケメンに限る』の支援があるから、余計にそう感じてしまうのかもしれないな。
「語った気持ちに少しの
でもさ。
『ただしイケメンに限る』の本質はさ。
もちろん俺がいいカッコしたいってのはあるけれど――本当はこういう時のために、女の子の心を優しく解きほぐしてあげるためにあるチートだろ?
俺の気持ちをちゃんと伝えてくれて、ありがとな――。
「よし、絶体絶命の大ピンチから、最後はすごくいい感じに締めくくったぞ……!」
――とまぁこれで終われば良かったのだが。
「ね、まなしー」
「うん?」
ハヅキは俺の腕の中で伸びあがるようにして顔を寄せてくると、
「……ちゅっ」
と、俺の頬にキスをしたのだ。
「……は?」
今、え? ちょっと、なにが、いや、え? キスされた? ハヅキに?
ほっぺにちゅー……いや唇の端、口角のあたりにキスされた!?
ギリくちびるじゃないけど、かなりきわどいところに!?
「ハヅキ、まなしー、すきだから」
「お、おう……」
「だめ、だった?」
「ぜんぜんダメじゃないよ――ないんだけどね!」
ただ32年もの間、キスなんてしたことがなかった草食系ヘタレにとって、この不意打ちちゅーはまさに青天の
「落ち着け、落ち着くんだ
まぁ俺は日本人だからアメリカの話は関係ないんだけどな!
おっと、今は異世界人か?
……おっけー、ちゃんとセルフツッコミができている。
俺は微塵も動揺していないし、落ち着いてもいるはず……!
これは関西人特有の自己分析方法なのだ。
ちなみに東日本の友人数人に聞いてみたところ、本気で理解できないと怪訝な顔をされたものだが、関西では極めて当たり前に行われている精神分析の手法なのである。
「よかった、じゃあ……ちゅっ……もっとする」
「いやあの――」
再びハヅキが口元を寄せてきた。
「ちゅっ、ちゅっ」
何度も、何度も。
可愛らしく甘えながら、ハヅキは唇を寄せてくる。
その間の俺ときたら、どうしたらいいのか分からずにちゅっちゅされるがままで――。
そうしてしばらくの間、温泉にハヅキがちゅーをする音が続いたのだった。
ちなみに最後のあたりで、下半身が少しだけむくっと反応しつつあったのは、俺の心の中だけの秘密である。
「……いやほら? これだけ可愛かったら小さい子でも意外とオッケーかな、なんて……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます