五線譜は五本 ギターの弦は六本

作者 SET

疾走感と観察眼

  • ★★★ Excellent!!!

序盤からこの小説のいちばん動きのあるシーンであるゲリラライブへの疾走を描いてしまう、挑戦的な構成の短編です。
読者は主人公の魂に乗ってクモノキレマを見に行く。主人公を応援するというよりも、一緒に見に行く。その一体感の気持ち良さは優れた筆致の賜物です。
ゲリラライブの出来事をきっかけにして、主人公・黒川くんの高校生らしい純真さや自意識や清々しさがくるめき、こっちまで恥ずかしくなってくる。これぞ青春小説の醍醐味だなぁと思います。
また「山賊みたいなヒゲのそのスタッフ」が「にこっとかわいらしく笑」うなど、こういう人いるわ!と膝を打ちたくなる人物描写がところとごろに散りばめられていて、日常的な作者の観察眼にハッとさせられます。
一粒で二度も三度も美味しい小説でした。

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