第8話 行動力のある子ってたまに凄いことするよね

「じゃあ、ちゃんと留守番してるんだぞ」

「……分かってるし」

『ぴゃう……』


 スズメさんの家の前でメイと彼女の抱えるざくろに言い聞かせる。一人と一体は不服そうにだが了承した。

 借りた部屋で留守番をさせてもよかったのだが、スズメさんの家の方が人通りのある道に面しているので念の為というやつだ。


「おい、もうすぐ船が出る時間だぜ」

「これ逃したら着くの明後日になっちゃうよ」


 くどくどと注意すべき事を言っていると後ろからスズメさんとランに急かされてしまった。もうそんなに話していたのかとはっとする。


「とにかくっ! 危ないことは絶対にしないように! いいな!!」


 こくりと頷いたのを確認してから少し歩いた先で待っている二人の元へ行く。


「待たせて悪いな」

「かまわねぇけどあんまり言い過ぎると嫌われるぞ、オニイチャン?」

「余計なお世話だっ!」


 スズメさんと軽口を交わしながら数歩歩いて、未だ歩き出さないランを振り返った。彼はメイの方をじっと見ている。


「ラン? どうした」

「いや……。何でもないよ、行こう」


 へにゃりと笑った彼は何事も無かったかのように駆けてくるが、やはり何か気になる事があるのかもしれない。


「気になる事とかあったら教えてくれたら嬉しいんだが……」


 自分より高いところにある彼の目を覗き込んで言ってみると大した事じゃないよ、と微笑まれる。

 ぐっ……。慣れてはきたけどやっぱりこいつ顔がいいな……! もう俺イケメンアレルギーになりそう。

 自分が悲しくなってきた俺は彼への追求を止めて港へと向かったのだった。



 さて、時は進みアカリ達が出発したその日の夕方。

 まさにその時スズメの家でメイは外出する準備をしていた。行き先は勿論、アカリ達が向かった集落である。

 アカリは忘れていたのだ。

 自分の義妹が決めたことをやり通す行動力の塊であるという事を。独学で魔術を呪文詠唱の域まで使用可能とさせたのにはセンスの他にも彼女のただならぬ実行力にあるという事を。

 彼女はガッツのある人間に行動力を与えたらどうなるか。そんな実験の結果のような少女である事を。


「よし、ざくろ。準備はいい?」

『キュイ!』


 自身の頭の上に乗ったざくろに言ったメイはその返事に満足げに笑う。兄とは違う空色の瞳が細められた。


「船の時間は調べてあるし、ちょこちょこお手伝いとかして貯めたお金もあるし! 行き先への乗り換えもちゃんと把握済み! ふふふ……我ながら完ッ璧な計画……!!」


 ガチャガチャと家の鍵を閉めながら自画自賛をする彼女に紅い子竜は同意するように頭をこすりつける。

 鍵がしっかりと閉まったことを確認したメイはそんなざくろに微笑んで軽やかに港へと駆けて行った。


 そのある意味で称賛に値する行動力にアカリが本気で頭を抱えるまで、あと数日。

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