第52話 竜の本能は舐めちゃいけない
「ぜぇっ、はぁっ……」
「まいたか……?」
あの後何度も竜に遭遇し、その度に走ったり戦ったりしながら竜玉を目指す。もう何体の竜に出会ったか覚えていない。てか数えるのを両手の指の数を超えた時点で諦めた。
「竜の数多くね……?」
「三体一緒にいた時は流石に肝が冷えたな」
主要通路と聞いて予想はしていたがこれは予想以上だ。うーんとランが唸る。
「本能で竜玉を守る為に集まってきているのかな」
「そう考えるのが妥当ですねェ」
「けっこう竜玉に近づいていってるみたいだし、これからもっと竜は多くなるだろうな」
ベネディクトが俺の抱えた子竜を撫でながら言う。つまりはさらに気を引き締めていかなければならないということだ。霊力はまだ残っているようでよかった。
「じゃあ一箇所で竜とゴタゴタやるより、駆け抜けた方がいいよな。……ラン、大丈夫か?」
「ふふ、大丈夫だよ。そこまでやわじゃないし。走ることぐらいは出来るさ」
この中で一番体力の無いであろうランに聞くとそう返される。けれどさっきまで息をきらしていたし、いざという時は無理矢理にでもおぶろう、と心に決めた。
ベネディクトがぐいと伸びをして微笑む。うんそろそろこいつの美青年っぷりにも慣れてきたぞ! もう目は眩まない! 眩しくない!
「ここまで来たらあともう少しだ。とっとと皆と合流しようぜ」
あ、やっぱマブいです。
太陽を背負っかたかのような笑みに目を細めながら、応と答えた。
ドゴォォォォォンッ!!!!
『ギャォォォ!!』
『グギヤァァァ!!』
チュドォォォン!!
ズギャァァァン!!
頭の上や身体のすぐ横をビュンビュン水球が飛んでいったり、ブレスが掠る。待って今耳元行ったビュオッて風来た! こっわ!!
「ちょっとコレは多すぎないか!?」
「ごめん竜の本能舐めてた! こんなオールスターズばりに来るとは思わなかった!!」
「何その全く嬉しくないオールスターズ!!」
全力ダッシュで走る俺たちの後ろを十体弱の竜が追いかけてくる。途中途中でそこらにいた竜も加わっていくもんだからどんどんその数は増える。
いや増え鬼かよ。ありえねぇ。
「もうすぐ曲がり角だよっ!」
「よっしゃ曲がる前に足止めするぞ! アカリ、手伝ってくれ!!」
「言われなくとも!」
そう声を掛け合って曲がる直前に足を止めて振り返る。雪華に霊力を流しつつ、抜きざまに振るった。
「
『グガァッ!?』
『ギャッ!』
先頭集団の竜たちがそれで足を止めた。すかさずベネディクトが魔銃を取り出して構える。その背後にも何十丁もの魔銃を浮かばせた。かなりの迫力だ。
「一斉掃射!
かけ声と共にけたたましい銃声が鳴り響き、先頭の竜たちはもちろん、その合間を縫って後ろの竜たちにも弾丸が命中し、それと同時に爆ぜる。それを確認すると素早く曲がり道に駆け込む。
背中で竜たちの怒りの咆哮を聞きながら、走り続けた。
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