360度広がる空と、そこに浮かぶ色褪せた構造物たちから成る世界。
『実体女子高生』である主人公とナツは、駅のホームや道路が『切り取られた』不思議な空間を空飛ぶママチャリで渡っていく──
一見奇想天外な世界観ですが、真に魅力的なのは地に足のついた流れるような描写でしょう。優しく澄んだ文章が、アスファルトの手触りや駅のホームに落ちる陰影さえも、私たちの目の前に鮮やかに届けてくれます。
同じ作者様が描かれる不思議と有機的な質感のSF作品群。その中でも本作は、主人公ふたりの性質のためか、ことさら生き生きとした視界を届けてくれます。
”屈折率の違う輪郭、水に沈めたガラス瓶のような質感”──作中からの引用ですが、物語の纏う雰囲気をまさに表しているように思います。
このレビューを書いている時点で、物語はまだ8話。
透明な輪郭に目を凝らして、それがどこまで続いて、どのような形を描くのか。
共に見届けてはみませんか。