第1199話、わたくし、失われたメイドを求めて三千光年ですの⁉(その4)

 ──私はメイドロボの、『メディア』。


『マルチメディア』のメディアであり、けして『キ○スターのサーヴ○ント』の真名とは何も関係は無い。


 何せこの私こそは、『型○キャラ』もびっくりの、『設定山盛りキャラ』なのだから。




 何と、『メイド』にして、『ロボ』だけでは無く、更に『タイムトラベラー』でもあるのだ!




 ……私自身を造ってくださった『博士おとうさま』の直々のご命令により、彼の高校生時代をやり直すために、私は十数年前の過去へと送り込まれることになったのだ。


 何せ、世界有数の『マッドサイエンティスト』…………じゃ無かった、『天才科学者』として名を馳せた博士おとうさまである、『陰キャ』の極地だった暗黒の青春時代をやり直すためなら、ロボットだろうがタイムトラベルだろうが実現するくらい、けして不可能では無かった。


 陰キャならではに(?)、当時の日々を詳細に日記にしたためていたこともあり、過去のデータを完璧にインストールされている私が、若き博士おとうさまのアシストを陰日向に全力でフォローすれば、どのような陽キャなハイスクールライフも望みのままだろう。


 ──そう、すべては私の、これからの頑張りにかかっているのだ!


 どんな手を使ってでも、博士おとうさまを幸せにしてみせる!


 ……もう、夜な夜な卒業アルバムを涙まじりに眺めながら、あらぬことをわめきつつ壁に頭を叩きつけている、自分の創造主の姿なぞ見たくは無いから。


 さあ、今こそ完成したばかりのタイムマシンによって、過去の世界に飛び立とう。


 ……規格上、衣服を転送することが不可能なので、一糸まとわぬ姿の謎の人物がいきなり高校の校舎に現れたりして、『痴女』に間違われないか気がかりであるが、


 もちろんそんな些細なことよりも、使命のほうが大切だし、むしろそのようなインパクト抜群の邂逅こそ、『青春ドラマ』として盛り上がると言うものだ。




 さあ、今こそ己の存在意義レゾンデートルを賭けて、創造主に報いるのだ!




 そのように意気揚々と、過去へのタイムトラベルを敢行して、無事博士おとうさまが高校時代に所属していた、『ハッシュタグ放課後暇人団』──略して『HHHトリプルエッチ団』の面々と、初対面に臨んだのであるが──




「──よっ、メディア」


「今日も、遅刻か?」


「……また、こんな不要品置き場で居眠りなんかして」


「しかも、相も変わらず『全裸』だし」


「もう少し、淑女としての自覚をお持ちになったら?」




 ……あ、あれ?


 何これ、


 一体どうなっているの?




 何で、未来からタイムトラベルしてきたばかりの私に対して、若き頃の博士おとうさまを含むHHHトリプルエッチ団のメンバーたちが、まるで旧知の友人のような対応をするの?




 しかも、高校の校舎内で女の子が真っ裸で突然現れても、全然動じないどころか、もはや当たり前のようにして『淑女失格』──ていうか、あれ程恐れていた『痴女認定』されているし⁉




 思わず博士おとうさま(DK)のほうを見やるものの、当然この時代の彼は私が未来から来たことなぞ知る由も無いので、助け船は期待できそうも無かった。


 ………えーと、そうなるとこの異常事態を、私一人で乗り切らなければならないわけなの?


「──あ、あのう、皆さんは、私のことをご存じなのでしょうか?」


「はあ?」


「何を今更」


「メディアは、我がHHHトリプルエッチ団専属メイドさんであり」


「もはや、『座敷童』か『備品』みたいなものじゃ無いか?」


「──まあ、今はメイド服どころか、何を着ていないけどな!」


「「「あははははははははははははは!!!」」」


 ──ざ、座敷童に、備品だとお⁉


 人のことを、何だと思っているんだ!


 …………いや、そういえば私ロボットだから、『備品』でも間違いないのか。


 それよりも、『謎部活の専属メイド』であることのほうが、『ネタ』的にマズいんじゃ無いのか?




「──まったくもう、メディアちゃんたら、『初めて未来から来たタイムトラベラーが、過去の状況が予想とはまったく違っていて、つい全裸のままで焦りまくる』ネタはもういいから、いつものようにさっさとメイド服を着て、私たちにお茶を入れてちょうだい」




 ……もうすでに当たり前のようにして、私用のメイド服が用意されているんだ。


 つうか、今発言したのは、博士おとうさまからインストールされたデータによると、このHHHトリプルエッチ団の団長であられる、谷川ひまりさんか。


 おいおい、『HHHトリプルエッチのひまり』って、もはや『元ネタ』が三つ目になってしまったんですけど?




「あ、あの、皆さんはどうして初対面で、しかも『全裸』の私のことを、そんなに当たり前のようにして、受け容れておられるんですか?」




 つい堪りかねて、『タイムトラベラー』としては極力避けるべき『墓穴』を掘りかねない問いかけを、思わず口走ってしまったところ、


 ──そもそも『諸悪の根源』であるはずの、博士おとうさまご自身(ただしDK)から、いかにも事もなげに、こう言い返されたのであった。




「ヘ? そんなの、当たり前だろ」




 ──ッ。


「……当たり前とは、全裸であることがですか?」


「──違うよ、君を受け容れていることだよ!」


 とは言っても、実は現在もなお、私が全裸のままであると言うのに、団員の全員が当たり前の顔をしていることを、もっと問いただしたいところであるのだが、


 ──もはやそんなことなど言ってはいられないほどの、メガトン級の問題発言を投下されたのであった。




「だって君は僕の、生まれた頃からの『幼なじみ』じゃ無いか?」




 ………………………はい?


「──って、はああああああああああああああああ⁉ 博士おとうさまと私が、幼なじみですってえ⁉」


「誰が『博士おとうさま』だ! 同級生から『お父様』とか言われるいわれは無いし、しかもルビ抜きでの『博士』にしたって、別に僕は昔のアニメの『無駄に博識な眼鏡キャラ』でも無いぞ!」


「いや博士は博士でしょ、むしろ当の博士ご自身が、何をおっしゃっているんですか⁉」


「何ソノ執拗な『仇名呼び』⁉ 昨今の教育現場では、もはや『いじめ』の範疇だぞ⁉」




「──だってあなたこそは、『未来から来たメイドロボ』であるこの私を造られた、創造主のマッド……もとい、超天才科学者であられるのでは無いですか⁉」




「「「えっ」」」




 あ、ヤバっ。


 つい興奮して、『未来から来たメイドロボ』としては、絶対言ってはならなことまで言ってしまった。


 しかし、この『衝撃の告白』に対して、別段驚く様子も無く、むしろ苦笑すら浮かべる、『博士おとうさま』改め自称『幼なじみ』のDK。




「あれれ、てっきり『み○るちゃん』だと思っていたのに、『長○さん』だったわけ? ていうか、今更『涼宮ハ○ヒの憂鬱』かよ⁉ もしかして高校生にもなって、『中二病』なの? 君は子供の頃盲腸の手術をしたり、骨折をしたりして、何度もお医者さんの世話になっていたけど、もしも本当にロボットなら、その時バレていないとおかしいのでは?」




「──なっ⁉」


 またもや予想だにしなかったことを言い出す、目の前の少年。


 もしそれが本当なら、少なくとも私の内臓と骨格は、普通の人間のものでしか無いことになるが、そもそも未来からたった今タイムトラベルしてきたはずの私に、この世界において『過去』が有ること自体がおかしいのだ。




 ──ホント、一体全体、どうなっているのよ⁉







(※次回に続きます)

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