第1173話、わたくし、『ちょい悪令嬢フライングクロスチョップ』ですの⁉(その10)
「……あなたが私だけでは無く、
「実はね、どちらかと言うと、あなたよりもお姉様の『望み』のほうが、正しかったのですよ」
「はあ? せっかく『予言の巫女姫』として生まれながら、『普通の女の子』に憧れたり、挙げ句の果てには『自分の死の運命』を予知していながら、あえてそれを回避しなかったなんて、お間抜けな最後を飾っておきながら、私よりも正しいですって⁉」
「それでは改めて伺いたいんですけど、どうしてあなたは『
え。
「……そ、それはもちろん、
「ほう、決まっているの?」
「え、ええ……」
「それじゃあ、あなたは家の伝統的なしきたりであれば、年寄りどもの言いなりになって、本家の屋敷の中に生涯閉じ込められて、外界とは直接関わること無く、まるで生きていながら死んでいるような人生を送り続けても構わないわけ?」
「──ッ」
「あなたのお姉様は、別に己の『巫女姫としての責務』から逃げたのではありません、むしろ気がついたのですよ、これが『間違っている』と」
「……間違っている、って」
「そりゃそうでしょう、この21世紀の日本において、本人の意志を完全に無視して、女の子を生まれてすぐに『国家的宗教指導者』なんかに仕立て上げて、すべての自由を奪い取るなんて、日本国憲法における基本的人権のガン無視であるのはもちろんのこと、国際的にも大問題になりますよ」
──いや、今更常識的なツッコミをされても、困るんですけど。
一応こちとら、『超常の未来予知の巫女姫』の一族なんだし。
「……ちょっと待ってよ、もしもあなたの言う通りだとすると、落ちこぼれで『無能』だったために、ヤケを起こして一族のしきたりに背いてばかりだった、私のほうが正しかったことになるんじゃないの⁉」
「あなたは、正しかったからこそ、間違っていたのですよ」
「──あんたは、そう言ったひねくれた物言いしかできないのか⁉」
「あなたは『巫女姫の血筋』としては、あり得ないほど『正しかった』のであり、『巫女姫』であられたお姉様からすれば、『憧れの的』そのものだったのです」
………………………は?
「な、何言っているのよ⁉ 予知能力を持たない『無能』だったからこそ、一族の中でどんなに冷遇されたものか! それなのに当の『予知能力の巫女姫』が憧れていたなんて、一体何の冗談よ⁉」
「ですから、そのように考えること自体が、一族による『洗脳』の賜物に過ぎず、お姉様のほうはその洗脳が解けたせいで、『普通の女の子』という正しい道を目指そうとしたところ、もはやそれが許される状態では無かったので、死んでしまうことになってしまっただけなのですよ」
「──‼」
「つまり、本当に正しい在り方とは、お二人の願望の『折衷案』としての、『予知能力の巫女姫でありながら、普通の女の子になる』ことだったのです」
……何……です……って……。
「予知能力を持ちながら普通の暮らしがしたいなんて、完全に矛盾しているじゃないの⁉」
「そんなことありませんよ、まさに今ここに、『具体例』がいるでは無いですか?」
「具体例って、一体どこに?」
「何を言っておられるのです、そもそもあなた自身が召喚したんじゃ無いですか?」
「ちょっ、まさか──」
「言ったでしょ、
「……どういうことなのよ、あなたは異世界有数の魔法王国の宗教的指導者を務めるほどの、強大なる力を誇る予知能力者なんでしょ? それでいて、『普通の女の子』でも有り得るなんて、不可能でしょうが?」
「そんなこと、ありませんわよ?」
「どうしてよ!」
「実はこの現代日本において公開されている、
え。
「『
「ですから申しているではありませんか? たまたま生まれた家のしきたりや、小説のキャラ設定なんかに、どうして唯々諾々と従わなければなりませんの?
──なっ⁉
巫女姫であることどころか、小説の登場人物が、自分のキャラ設定までも否定するなんて、いくら『メタSF系作品』だろうが、やり過ぎだろうが⁉
……まさか、ここまで酷かったとは。
本作の作者のことを、甘く見ていたよ。
「──だからですね、あなた自身も、自分の本当の願望から、目を逸らす必要は無いのです」
「な、何よ、私の本当の願望、って?」
「あなたはただ、自分の姉を死なせたことに対する罪悪感に苛まれているだけで、本心から『予知能力の巫女姫』なんかになりたいとは思ってはいないの。そんなものになって人生そのものを本家に雁字搦めに縛りつけられるくらいなら、いっそのことすべてを投げ出して、見当違いなコンプレックスすらも捨て去って、今度こそ本当に自由奔放に生きていくべきなのよ」
私が、自分の願望だと思っていたことが、単なる罪悪感やコンプレックスに過ぎなかったですって⁉
「──そう、実は
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