第1157話、わたくし、二階級特進音楽隊『黄泉ナスウィッチーズ』ですの⁉

 ──第三帝国航空魔法師連隊特殊分隊、人呼んで『帝国幼女隊』。




 本来『死ぬまで戦う』ことを絶対使命としている帝国空軍魔法師隊にあって、『さる事情』により唯一戦闘行為を免除されて、『魔法慰問団』として、得意の魔法を駆使して普通なら実現不可能な超イリュージョン満載の、アイドルコンサートやアイドル演劇(略して『ゲキ○ル』)等を行いながら、各激戦地を渡り歩いて大人気を博していた。




 ……魔界の獣『ジュゥべえ』と合体することで、年端もいかない少女が単独で『戦略兵器』レベルの破壊力を発揮できると言う、帝国独自の最重要『兵器』でありながら、戦闘を除外されるなどとは、大いに首をひねるところであろうが、


 そんなあからさまな『付け入る隙』を、現在絶賛戦闘中の北方のコミー主義大国、『全人民奴隷使役化評議会ソビエト連邦共和国』が見逃すことなぞ有り得ず、




 ──まさにこの時、『帝国幼女団』が慰問中であった、東部戦線第6軍団最前線基地においては、評議会ソビエト空軍ご自慢の地上攻撃機『イリューシンIlー2』の大編隊によって、絶賛空爆中であった。




「ひゃっはあ──!」


「燃えろ燃えろ!」


「我が連邦に仇なす、退廃主義者どもめ!」


「コミー主義に服さぬ者は、この地上から一匹残らず駆逐してやる!」


「抵抗するならば、兵士はもちろん、幼女隊も、非戦闘員も、容赦無しだ!」


「特に魔法師は、慰問団といえど、この機会に皆殺しだ!」


「戦いをやめた航空魔法師なんて、何も怖くはないぜ!」


「二度と再び戦場に舞い戻ることの無いように、ここで一気に息の根を止めようぜ!」




 そのように口々にわめき立てながら、慰問ショウ真っ最中だった帝国軍陣地を、情け容赦なく爆撃していく、完全に洗脳済みのコミー兵士たち。


 このまま一方的な殺戮が続くものと思われた、


 ──まさしく、その刹那であった。




「ぐわっ⁉」




 Ilー2の一機が、突然火を噴き上げるや否や、墜落していったのだ。


 まさにその機体を刺し貫いた、地上からの正体不明の『飛来物』は、そのまま複雑な空中機動を開始して、他のIlー2へと襲いかかり、次々に撃墜していく。


「──な、何だ⁉」


「ただの対空砲火じゃ無いぞ?」


「……ていうか、人間?」


「まさか、航空魔法師か⁉」


「あいつら、戦闘能力を保持していたのかよ⁉」


「そんな、地上はすでに完全に、破壊し尽くしているというのに!」


「それにあの『魔法師』らしき攻撃者も、真っ黒焦げじゃないか⁉」




 思わぬ事態に直面して、大混乱に陥り、もはやあらぬことを口走るばかりのコミー兵たち。


 そんな彼らをあざ笑うようにして、次々に焦土化した地上より飛来してくる、『帝国幼女団』の面々。




 しかもその全員が、単に黒焦げとなっているだけでは無く、これまでの激しい空爆によって、片腕はもげ、顔は潰れ、両脚はひしゃげて──等々と言ったふうに、戦闘行動をとれるどころか、とても満足に生きているとは思えないほど、ボロボロの有り様であったのだ。




『うふふふふふふふ』


『あははははははは』


『くすくすくすくす』




 上空の至る所に響き渡る、『かつて魔法少女だったモノ』たちの哄笑。


 恐怖の余り、Ilー2の後部座席の旋回機銃を撃ちまくるばかりの、コミー兵たち。


「うわあ、こっちに来るな!」


「どうして、13ミリ機銃の直撃を受けながら、平気で飛び回れるんだ⁉」


「くそっ! くそっ! くそっ! くそっ!」


「墜ちろ! 墜ちろ! 墜ちろ! 墜ちろ!」


「──いや、無駄だ! いくら撃っても意味が無いぞ!」


「……おい、まさか、こいつら」


「まさか、まさか、まさか、まさか──」




「「「すでに、生きていないのでは無いか?」」」




 ついにおぞましき事実にたどり着く、コミー兵たち。


 ──そう、とっくに死んでいる相手を攻撃していくら傷つけようが、それ以上死にようが無かったのだ。


 考えてみれば相手は、『航空魔法師』などと言った異形の存在が普通に跋扈している、文字通りの『人外魔境』たる第三帝国なのである。


 屍体を操り、『慰問団』にしたり、『戦闘』をさせたりと言った、『屍術師ネクロマンサー』の類いがいてもおかしくは無いだろう。




 ──そう、『彼女』たちは、今しがたの空爆で死んだわけでは無かった。




 最初から、魔法師の屍体を使って、『慰問団』を演じさせていたのだ。




「……狂っている」


「帝国のやつら、一体何を考えているのだ?」


「魔獣と合体して魔法を使えるのが幼少期の女子のみだからって、年端もいかない少女を戦場に送り出すだけでも常軌を逸していると言うのに」


「国家のために文字通り己の命を捧げた者に対して、死んだ後もその屍体を使って、非戦闘行動とはいえ、戦争遂行に役立たせようとするとは」


「……狂っている」


「帝国のやつらは、ドイツもこいつも狂ってやがる!」




「「「──俺たちは、こんな狂った軍隊と、今まで戦わされていたと言うのか⁉」」」




 ようやく自分たちが置かれている現状が、ただ単に『狂気の具現である戦争』であるだけでは無く、それ以上の『狂気の極み』であることに気づき、それこそ狂ったかのような叫び声を上げるものの、




 ──それが文字通りの、彼らの断末魔となったのであった。




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




メリーさん太「……何だよ、これって?」




ちょい悪令嬢「え、読んでわかりませんでした? 現在絶賛放映&配信中の、今期の夏アニメの『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミ○スウィッチーズ』が、余りにも不甲斐ないので、不詳本作の作者が『こうすれば面白くなる』というお手本を見せて差し上げただけですけど」




メリーさん太「──何様のつもりだよ⁉ 仮にもプロの制作スタッフの皆様に対して、失礼極まりないだろうが!」




ちょい悪令嬢「……確かに制作スタッフの皆様におかれましては、『運が悪かった』の一言に尽きますよねえ」


メリーさん太「は?」




ちょい悪令嬢「だって今期には、『プ○マドール』と言う、ほとんど同傾向の作品が有って、どうしても比較されてしまい、ぶっちゃけ『てんで勝負になっていない』ではありませんか?」




メリーさん太「──うぐっ⁉」




ちょい悪令嬢「ねえ、作画にしろストーリーにしろ演出にしろ歌唱シーンにしろ世界観にしろ、何か一つでも、『ルミ○スウィッチーズ』が『プ○マドール』にまさっている点が有りますか?」




メリーさん太「──うぐぐっ⁉(……こ、こいつ、こんなにも答えにくいことを、堂々と聞いてきやがって!)」




ちょい悪令嬢「実はこの『プ○マドールとのワンサイドゲーム』であることにも、『運の悪い』理由が有るのです」


メリーさん太「そ、それって?」


ちょい悪令嬢「『ルミ○スウィッチーズ』が、超人気シリーズである『ス○ライクウィッチーズ』──略して『ス○パン』の外伝であるがゆえに、思い切った冒険ができないことですよ」


メリーさん太「……あー、それは有るだろうなあ」


ちょい悪令嬢「それで本作の作者が、(あくまでもオリジナル作として)『大冒険』させていただいた次第であります」


メリーさん太「ウィッチーズを屍体にしてアイドルグループにすることが、『冒険』の範疇と言えるのかよ⁉ ──つうか、あれってもやは『ス○パン』では無く、『ゾンビラ○ドサガ』だろうが⁉」


ちょい悪令嬢「……う〜ん、作者としては、『ゾン○ガ』と言うよりも、『幼○戦記』のつもりなんですがねえ」


メリーさん太「あれ? 『幼○戦記』に、『屍術師ネクロマンサー』の話なんて有ったっけ?」


ちょい悪令嬢「作中でも述べましたが、『魔法が存在する』世界なんだから、『ネクロマンサー』がいてもいいのでは?」


メリーさん太「──いくらデグさんや参謀本部の皆様でも、死んでまで航空魔導士を酷使しようとはしないだろ⁉………………………しない、よね? うん、たぶんしないと思うんだ!」


ちょい悪令嬢「何でそんなにも、自信なさげなんですかw」


メリーさん太「……いや、デグさんやゼート○ーア閣下だったら、絶対に無いとは言えないかと」


ちょい悪令嬢「あはははは、大丈夫ですよ、『存○X』先生は、そこまで鬼畜な方ではありませんから」


メリーさん太「存○X、?」


ちょい悪令嬢「『幼○戦記』の作者のカ○ロ・ゼン先生が、『存○X』名義でWeb小説を発表なされているのですが、その中に『幼○戦記』の外伝的な作品で、『退役した航空魔導士の女の子』をフィーチャーした『魔○少女はもう泣かない』と言うのがあるのですよ。これが存外に、『ハートフル』だったりしてね♫」


メリーさん太「……『幼○戦記』の外伝的作品が『ハートフル』って、ホントかよ⁉」


ちょい悪令嬢「ただしそのままではインパクトが弱いので、ただ単に退役したのでは無く、『死亡』したウィッチーズを、『歌う慰問団アイドル』にしたわけです」


メリーさん太「──インパクト有りすぎだよ⁉ どうしてせっかくの『ハートフル』路線が、『ゾンビラ○ドサガ』になってしまうんだ!」


ちょい悪令嬢「名付けて、『黄泉ヨミナスウィッチーズ』とかねw」


メリーさん太「名付けるな!」




ちょい悪令嬢「でもこれくらいやらないと、作画でも世界観でも圧倒的に差をつけられている『プ○マドール』に、太刀打ちできないんですよお」




メリーさん太「……う、う〜ん、確かに『制作費』がそれ程潤沢とは思えない状況を鑑みれば、せめて『奇をてらう』と言うのもアリかも知れないかなあ」




ちょい悪令嬢「そこで、『黄泉ナスウィッチーズ』ですよ!」




メリーさん太「──いや、それは『方向性』が違うから! おそらく『ルミ○スウィッチーズ』が目指しているのは、『アイ○ス』や『ラブラ○ブ!』みたいなやつだから!」




ちょい悪令嬢「……だったら、『ウィッチ』である必要は無いではありませんか? どうして特殊な『戦闘』能力を有する女の子たちに、単なる『音楽隊』なんてやらせるのでしょうか?」




メリーさん太「──ッ(………いや、それは言わない約束だろうが?)」




ちょい悪令嬢「『プ○マドール』のほうは、これまで個々の『自律人形オートマタ』に焦点を当てて、軍を辞めた理由を詳細に明示しているし、更には『陰謀』や『謎』がちりばめられていて、非常に納得できるとともに今後の展開に期待大なのですが、『ルミ○スウィッチーズ』のほうには、何か有りましたっけ? 確かに主人公のジ○ーちゃんには結構魅力が有って、何か『謎』を秘めているところに少々期待が持てますが、せっかくの(戦闘能力バリバリの)ウィッチーズに、『戦争に疲れた人々を勇気づけるため』だけにアイドルをさせたんじゃ、はっきり言って『ゾンビラ○ドサガ』以下だと言っても過言では無いでしょう」




メリーさん太「──やめてやめてやめて、もうやめてええええええええ!!!」




ちょい悪令嬢「やはり『少々ウィッチとしての適性に欠けている』とか言った『浅い理由』では無くて、実際に戦場において残酷かつ悲惨なる体験をしていながら、現在それを記憶喪失しているとか言った、『プ○マドール』くらいのひねりが欲しいところですわね」




メリーさん太「……だからと言って、『ウィッチの屍体』を再利用するというのは、どうなのでしょうか?」




ちょい悪令嬢「別に、『ルミ○スウィッチーズ』の制作スタッフの皆様に、そこまでは求めていませんよ。あくまでもこれは、うちの作者ならこのくらいやってもおかしくはないってことですわ☆」




メリーさん太「……確かに、うちの作者ならやりそうだよな」




ちょい悪令嬢「──と言うわけで、この【突発短編】については、更に手を加えることによって完全に『オリジナル作品』にしてから、次回のWeb小説コンテストにエントリーしたいかと思いますので、その節はどうぞ御一読のほど、よろしくお願いいたしますわ♡」

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