第1151話、わたくし、『LGBTもカミングアウトしなければ撃たれまい』ですの⁉

「──これより、『エルゲーベーテー日本国浸透工作本部最高幹部会議』を行う! 同志『エル』に同志『ゲー』に同志『ベー』! 申し開きしたい義が有るのなら、言ってみるが良い!」




 東京都内、某所。


 東アジア某コミー主義大国から密かに潜入し、日本国の高潔なる性規範を混乱の坩堝に叩き落とそうと、狡猾にも『性的マイノリティ』を装い、様々な政治活動や大衆扇動活動を行っている、『万国エルゲーベーテー同盟』本部アジト最上階の大会議室。


 今まさに、最高幹部である『テー』による、他の幹部の『エル』と『ゲー』と『ベー』に対する、激しい糾弾が行われていた。




「……まったく、ちょっと目を離すと(現在ウイルスが大流行中の)ヨーロッパ某国なんかに行って、性別を超越した乱交パーティーに参加して、散々欲望の限りを尽くしておきながら、日本に帰国するや本来の日本人パートナーとよろしくやって、現在世界を席巻している凶悪病原体である、『モンキービーンズ・ウイルス』をまき散らすなんて! 貴様らには栄えある『熊猫人民共和国』の工作員の自覚は無いのか⁉」




「……し、しかし、同志『テー』」


「我々『性的マイノリティ』は、文字通り『性別を超えた』存在であり」


「『フリーセックス』こそを、本分とすべきなのであって」


「チャンスがあれば、外国といえど乗り込んでいって」


「男であろうが女であろうが、野生の獣のごとく見境無く」


「思いのままに盛って、相手を盛らせることこそが」




「「「──我々の『天命』でありませんか!!!」」」




「……そうだ、第二次世界大戦後、我々コミー主義の尖兵たちは、まさにこの繰り返しだった」


にっくき米帝に対しては、『ベトナム侵略戦争』の遂行を何としても妨害するために、内部から破壊し尽くそうとした」


「我々『性的マイノリティ』勢力を始めとして」


「口だけは『平和主義者』の無法者たちや」


「麻薬の売人に、すでにジャンキーレベルの常習者まで」


「そして何よりも、国のあらゆる場所に潜り込んで、洗脳活動を行っていた、コミー主義者たち」




「「「このような我々の『先達エージェント』の大活躍によって、米帝国内の常識や規範は地に堕ちて、道徳心の腐敗や歪んだ個人主義が横行し、第二次世界大戦時における日本やドイツに対する挙国一致の戦時体制なぞ構築できず、結局はベトナム戦線から引き揚げざるを得なくなったのではないですか⁉」」」




 そのように自信満々に長口上を言い終える、三人の幹部たち。


 それを受けて更に沈痛なる表情となる、最高幹部の『テー』。


「……確かに『性的マイノリティ』としては、けして間違ったことでは無く、前世紀70年代のアメリカでは大成功を収めたであろう。──だが残念ながら、ここは21世紀の日本なのだよ」


「え?」


「新世紀とか、日本であることが、何か問題が?」


「いつどこであろうが、我々は『性的マイノリティ』工作員としての、使命を果たすだけでは?」




「──ふざけるんじゃねえよ⁉ 現在日本において我々工作員は、何よりも『性的マイノリティ』の公的権利の向上を目指して、『同性婚』を認めさせて、『心は乙女♡』宣言の乱発による『女子スポーツ界の壊滅』等々を、粛々と進めているのでは無いか⁉ それなのに、幹部であるおまえらがよりによって外国の『乱交パーティ』に参加して、現在話題のウイルスに感染して、まず同志『ゲー』によって国内の『ゲイコミューン』で大増殖させた後で、引き続き同志『ベー』によって女性にも広げていったんじゃ、『性的マイノリティ』の信用は地に堕ちて、むしろ『ウイルス大流行』の大戦犯として、いわゆる『魔女狩り』の憂き目に遭ってもおかしくは無いんだぞ⁉」




「「「──‼」」」




「……ホント頼むよ、もう少し『工作員』として自覚を持ってくれよ。揃いも揃って『ウイルスのキャリア』になって帰国してきて、一気に国内にばらまいてしまうなんて。本国の党中央政治局の皆様に、何て申し開きをすればいいんだよ」




 文字通りに頭を抱えてうめき始める『テー』の姿を見て、さすがに己の所業を反省してうなだれる、『ゲー』と『ベー』。


 しかしそれに対してただ一人、この場における唯一の女性である『エル』が、恐る恐る手を挙げながら口を開いた。


「あ、あのお〜、確かに勝手に海外の乱交パーティに参加して、『モンキービーンズ・ウイルス』に感染したのは同罪ですけど、国内に流行させたのはあくまでも同志『ゲー』と同志『ベー』であり、私はそれ程叱責されることは無いのでは?」


「──何を言っているんだ⁉ 君こそが最も重罪なのだよ!」


「はあ?」


「君はそこの二人と違って、ウイルスに感染したこと自体、許されざる『大罪』なのだ!」


「ど、どうしてです?」


「君だって、この『モンキービーンズ・ウイルス』が、基本的に男同士の性的接触によって伝播していくのは、知っているだろうが⁉」


「で、でも、同志『テー』がおっしゃったように、そこにいる人類における最低の『害悪』的存在である『両刀遣い』の同志『ベー』が、性別を問わず盛りまくることによって、まず自分がキャリアの男性からウイルスをもらった後で、他の女性と盛ることによって女性にも伝播していく可能性も十分あり得るので、女である私が感染していてもおかしくは無いのでは?」




「おかしいだろうが! おまえ自分が『女しか愛せないレズビアン』と言う『設定』を忘れたのか⁉ しかも日本国内で真面目に『同性婚』を認めてもらおうとしているのだから、相手も『女性一筋』の真面目なレズビアンで無ければならず、『ウイルスのキャリア』の可能性が有る『バイの女性』と性的接触は極力避ければならないだろうが⁉ ──つうか、さっきも言ったけど、真面目に『同性婚』の成立を目指すためには、そもそも外国に行って乱交パーティーなんかに参加して、凶悪なウイルスをもらってくるなんて言語道断で、幾重の意味からも、おまえだけは『本来男性との性的接触を介して伝播するウイルス』に感染しては、絶対に駄目だったんだよ⁉」




「──ッ」




「……つまり、君が『モンキービーンズ・ウイルス』に感染した時点で、すべての『前提』が崩れてしまったのだ。我々は本物の純粋なる『性的マイノリティ』なんかでは無く、その意見や要求については何の信憑性も無くなってしまい、もはや『工作員』として何も貢献ができなくなり、本国から『役立たず』の烙印を押されちまったわけさ」




「「「……それじゃ、俺たちは」」」




「もちろん、『エルゲーベーテー』全員揃って、粛正されるだろうな」




「「「──なっ⁉」」」




「あ〜あ、だから『カミングアウト』なんかしたくなかったんだよ。普通だったら『性的マイノリティ』なんて、誰にも気づかれずにひっそりと生きていければ、それでいいのだ。──つまり、わざわざ自らカミングアウトして世の中に波風を立たせようとしているのは、ほぼ間違いなく『偽者の活動家』に過ぎず、今回のようなちょっとしたミスで、すぐさま馬脚を現して、下手したら『性的マイノリティ由来のパンデミック』すら起こして致命的状況さえ招きかねず、結局自分たちを『魔女狩り』等で潰しかねないんだよな」

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