第1048話、わたくし、『くノ一』を異世界転生させたら『最強』だと思いますの⁉

『──ぐぎゃっ⁉』


『──げひっ!』


『──ぐわっ!』




 断末魔を上げる、小鬼ども。


 ……これで、23匹か。


 まだ逃げ出さずに残っているのは、10匹ほど。


 もはや『ない』は尽き、獲物の血脂だらけの『小柄』は使い物にならなかったが、何も問題は無かった。


『炎術』等の攻撃忍術はまだ余裕で使えるし、何なら敵の原始的な『打撃用棍棒』を奪い取ればいいし。


 ──しかし私は、そうするつもりは無かった。


 こんな『雑魚』相手に、もはや武器や忍術を使う必要は無く、あえて相手の得意な近接戦闘に持ち込み、手刀や蹴りを叩き込めば十分だ。


 少しは『スリル』が無いと、単純な『消化試合』となってしまい、面白みも何も無いからな。




 ……しかしそれにしても、『この世界の鬼』の醜さときたら、もううんざりだ。




 京の都のお内裏での、お武家様と力を合わせての、優雅な『鬼退治』が、心から懐かしいよ。




『──ぎぃッ!』


『──ぐおおおおお!』


『『『──うがああああ!!!』』』




 ……おっと、余計なことを、考えている暇は無かった。


 小鬼ゴブリンどもが、ヤケになって、全員束になって特攻してきやがった。


 このまま各個撃破されるよりは、よほど勝率が上がることに、ようやく気がついたか。


 化物なりに小賢しくも、知恵が回るものだな。


 厄介だけど、こんなことで手こずってはおられない。




 ──私は何はさておいても、『お館様の使命』こそを、果たさなければならないのだから。




 ……それなのに、突然こんな奇妙な世界に召喚されて、『鬼退治』だか『魔王退治』だかを、押しつけられてしまうなんて。




 とはいえ、いつまでも愚痴を言っていても、仕方ない。


 もはや、魔王配下最強の四天王どもは、すべてのだ。


 後は、わずかに生き残った雑魚どもの寄せ集めを根絶やしにして、あろうことか仇敵の人間国に逃げ込んだ、魔王本人をぶち殺せば、おしまいだ。




 ……せっかくだからついでに、私に余計な手間をかけさせた、人間国の王侯貴族どもも、前の世界に帰るのに必要な『召喚術士』だけを残して、みなごろしにすることにしよう。




 ──そのためにも、まずは目の前の小鬼ゴブリンどもを…………………って、おっと。




 もうすでに、全滅していたか。




 やはり、『この世界』の鬼は、手応えが無い。




 早く、『元の世界』に、戻りたいものだ。




   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「──一体何なんだ、あいつは⁉」




 壮麗なる宮殿の大会議場にて響き渡る、魔王陛下の叫び声。




 しかしここは彼の本来の居城である魔王城では無く、人間国の王城であった。




「……すみません、魔王陛下。まさかうちで召喚した『他の世界の人間』が、あれ程の『化物』であったとは」


「いや、何なの、人間族の女王殿よ⁉ あいつ、我が魔族の軍団と戦闘に及ぶ以前に、『食糧を絶つ』ことを目的として、我々が飼育していた『人間族の村』を、周囲一帯から全滅させたんですけど⁉ いや、ある意味『理に適った戦術』と言えなくも無いけど、やっていることは我々魔族なんかよりも、よほど『鬼畜の所業』じゃないか⁉」


「申し訳ない、我々の完全の見込み違いでした。まさか、あれ程までにとは」




「……そりゃあ、すでに実感しているだろうよ。あいつときたら、自分の足手まといになると思えば、協力関係にある人間の軍隊だろうが、躊躇わずに皆殺しにするからな。むしろおまえたちのほうこそ、あいつを体のいい『道具』と見なして散々『利用』した挙げ句に、元の世界に戻すことも無く適当に『処分』しようと思っていたんだろうが、実はおまえらの手に負えるような代物じゃ無かったわけだ」




「……彼女にとっては、『上司』だか『族長』だかである『お館様』だけが、唯一の仕える相手であって、いくら召喚主である私たち人間国家が、莫大な報奨金で言いくるめようとしようが、強大な軍隊で脅そうとしようが、まったく言うことを聞かず、むしろ我がほうの勇者や軍隊を『囮』として利用する始末。そのせいですでにどれ程の戦力が、魔族軍と相討ちになって果ててしまったことか」




「考えてみれば、どんなに『主人公』が強かろうが、大軍に対して自分一人で挑むよりも、雑魚は雑魚同士で潰し合いをさせたほうが、よほど効率がいいからな」


「ほう、さすがは魔王様、そこら辺の気持ちは良くおわかりになるようで」


「──あんな『人でなし』と一緒にするな⁉ 我は少なくとも、自軍の兵士の命は、大切に扱うわ!」




「確かに彼女の戦闘能力は、この剣と魔法のファンタジーワールドにおいても『最強クラス』でしょう。刀剣や飛び道具を駆使しての『戦闘技術』が抜群なのは言うまでも無く、『気配を消す』とか言った馬鹿馬鹿しいまでに完璧な『ステルス技術』をほしいままにし、変身能力や火炎攻撃等の魔法そのものの『忍術』すらも使えて、しかも『女忍者くのいち』ゆえに『ハニートラップ』までもやりこなせると言う、隙の無さ。言うなれば、『剣士』と『格闘家』と『盗賊』と『アサシン』と『魔術師』等々、ありとあらゆる『ジョブ』を兼ね備えている、無敵の『武闘系魔法少女』と言っても過言でありますまい」




「おいおい、人間の女王様よ、そんな表面的なことなんて、あいつの脅威の、ほんのわずかな一面でしか無いぜ?」


「……はあ? 彼女の卓越した戦闘能力や忍術が、ほんのわずかですって?」




「ああ、あいつの真の恐ろしさは、何よりもあの異常なまでの、『精神力の強さ』なんだ」




「──ッ」




「こんな剣と魔法のファンタジーワールドなんかに、いきなり召喚されたというのに、常に冷静沈着で、何が起ころうともすぐさま状況判断をして、自分がどう振る舞えばいいかを決定し、そのための邪魔になる者は魔族か人間かにかかわらず、何の感情も無く機械的に排除して行くのみ。──おそらくはこれこそが、彼女が幼い頃から叩き込まれてきた、『くノ一としての本分』であり、彼女の『強さの源』だろうよ」




「……『精神的な強さ』ですか、た、確かに」




「我のような魔王を始め、ドラゴンや大魔導士等々、この世界にも圧倒的『強者』は数多くいるが、『精神力の強さ』では、彼女──『くノ一』に敵う者なぞ、ほとんどいないだろう。何せ彼女は任務の遂行のためには、己の命すら省みないからな。…………ホント、厄介なやつを召喚したものだよ。ひょっとしたらこの世界は、彼女一人のために滅ぼされてしまうかも知れないぜ?」










   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




メリーさん太「……何だよ、これって?」




ちょい悪令嬢「見ての通り、本作の作者の独断による、『異世界最強キャラ』シリーズでございますわ☆」




メリーさん太「異世界最強って、『くノ一』がか⁉」




ちょい悪令嬢「今期の新作アニメの『くノ一ツ○キの胸の内』を見ていて思いついたのですが、ただでさえ武芸に秀でていて、忠誠心も厚く、精神力も鋼のごとしだというのに、まるで魔法そのままの『忍術』さえも操れる『くノ一』って、剣と魔法のファンタジーワールドに転生しても、最強クラスの活躍ができるんじゃ無いでしょうか?」




メリーさん太「──結局またしても、『アニメ談義』かよ⁉」




ちょい悪令嬢「何よりもポイントは、『幼い少女』(の肉体)であることなのです。『軍艦擬人化少女』もそうですが、このような姿形であるからこそ、いろんなところに潜入がし易く、『なろう系』でも大活躍中の『男性忍者』なんかよりも、よほど使い出が有るのでは?」




メリーさん太「……それに何と言っても、正式に戦闘術を叩き込まれているからな。確かに『武闘派魔法少女』なんていう『死角無し』な存在は、異世界においても無敵かもな」




ちょい悪令嬢「しかも本文中に述べられていたように、『精神力がゲキ強』だという☆」




メリーさん太「何事にも動じないクールな『幼女忍者』が、異世界で無双する展開なんて、『ある種の層』には馬鹿受けするかもな☆」





ちょい悪令嬢「──と言うわけで、このように今回簡単に【新作案】をまとめてみましたが、本格的に作品化した暁には、どうぞよろしくお願いいたします♡」

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