第945話、わたくし、日本の『宇宙新世紀』の始まりを言祝ぎますの♡(前編)

ちょい悪令嬢「あけましておめでとう、日本! ──そしていざ、『宇宙新世紀』へ!」




メリーさん太「………………………は?」




ちょい悪令嬢「この新しい年を祝して、とても心躍るニュースが飛び込んできました! 何と岸○文雄総理が2020年代後半にも、日本人による『月面着陸』を目指すことを、正式に宣言なされたのです!」


メリーさん太「──なっ⁉ 『月面への有人飛行』だと! しかも、日本人が⁉」


ちょい悪令嬢「実は何と、見事に成功した暁には、かのアメリカのアポロ計画に次ぐ、人類史二番目の快挙となるそうです!」


メリーさん太「……え? そんな五十年も六十年も以前むかしからこっち、他に月面着陸を実行した国家や機関は無かったわけ?」


ちょい悪令嬢「ええ、当のアメリカ合衆国も含めまして、宇宙開発においては最大のライバルであった旧ソビエトや現ロシア、更には昨今宇宙進出のめざましい中華人民共和国に至るまで、一国たりとてありませんでした」


メリーさん太「そうだったの? そいつは意外だな」




ちょい悪令嬢「おそらくは、元々各国とも『国威発揚』を第一義としていて、月面有人到達こそが『最大の目標』だったのであり、アメリカが達成したことにより一応『勝負』がつき、これ以上『月面有人探査』を続けたところで、莫大なるコストに比べてあまりにもメリットが少なく、むしろより将来性が見込まれて比較的ローコストな、スペースシャトルの開発や無人探索機の実用化等へと、大幅に方向性ベクトルを変えていくことになったかと存じます」




メリーさん太「……それならどうして、今更日本が『月面有人着陸』なんて目指すんだよ? 馬鹿みたいにコストばかりかかってメリットが見合わないんじゃ、『オリンピック』とかと同様の『金のかかる国家的愚行クッキー』に過ぎないし、そもそも本作においても、『これからは有人探査よりも無人探査のほうが将来性が有る』って、結論づけてたんじゃ無かったっけ?」




ちょい悪令嬢「確かに、現在の日本の宇宙事業においては、『無人探査』こそが世界に誇る最先端技術だし、これからも最大のセールスポイントであり続けるでしょう」


メリーさん太「──だったら、」


ちょい悪令嬢「それでも!」


メリーさん太「……『それでも』?」




ちょい悪令嬢「『月旅行』なんて、『夢がある』ではないですか♡」




メリーさん太「──ッ」




ちょい悪令嬢「確かに、宇宙開発なぞという著しくリスクを伴う事業に対しては、それなりの『ハイリータン』を求められるのは当然ですが、そもそも『宇宙開発』なんて、地上で普通に暮らしている人にとって『何の価値も無い』ものが、どのような『原動力』によって立ち上げられたと思っておられるのです?」


メリーさん太「うっ」


ちょい悪令嬢「もちろんそれこそは、月への──ひいては宇宙そのものへの、『憧れ』に他ならないのです!」


メリーさん太「宇宙への憧れって……………ああ、フォン=ブラウンか」




ちょい悪令嬢「何もヴェルナー=フォン=ブラウン氏に限らず、ヘルマン・オーベルト氏にしろ、コンスタンチン=ツィオルコフスキー氏にしろ、セルゲイ=コロリョフ氏にしろ、ロバート=ハッチンス=ゴダード氏にしろ、ロケット制作者にとっての何よりの原動力モチベーションこそは、『憧れ』と書いて『ロマン』と呼ぶのです! 単に『損得勘定』で動いているわけでは無いのです! ──もちろんこれは、宇宙旅行やロケット開発だけの話ではありません! 飛行機にしろ、自動車にしろ、コンピュータにしろ、印刷技術にしろ、様々な革新的技術のほとんどすべてが、単なる『必要性』だけでは無く、飽くなき『願望の実現』──突き詰めれば、『夢の実現』こそをバネとして、様々な困難を乗り越えて成し遂げられてきたのです!」




メリーさん太「──うぐっ⁉ ひ、否定できねえ……」


ちょい悪令嬢「それにそもそも『月面有人探査』をも含めて、『宇宙開発事業』そのものが、むしろメリットばかりとも言えるのですからね!」


メリーさん太「……何だと、あえて地上の日常的問題をうっちゃって、無駄な浪費以外の何物でも無い『宇宙開発事業』に、文字通り天文学的な血税をつぎ込むことにもなりかねないというのに、一体何のメリットが有ると言うんだ?」




ちょい悪令嬢「本作においても以前述べたではありませんか、旧ドイツ第三帝国の誇る史上初の本格的ロケット兵器『V2号』の、正式名称の『A4』の『A』とは、ドイツ語での『集合アグリガット』を意味しており、まさしくロケット開発を始めとする宇宙事業は、その国における現時点での最高の科学技術の粋を集めて行われるのであって、更なる国家的発展はもちろんのこと、多大なる雇用創出をも促して、莫大なる経済効果さえも見込まれるのです!」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「……それなのに、早速国内において、明確に反対表明を行い、批判的活動を開始した、けして少なくない勢力がうごめき始めたのは、なぜだと思います?」


メリーさん太「そういえば、そうだよな…………何でだろ?」


ちょい悪令嬢「──そこには当然、『戦略』的対立が存在するからですよ」


メリーさん太「戦略、だと?」




ちょい悪令嬢「まず、月面において日本国が固定の『基地』を設けたりして、『領有権』を主張した日には、無尽蔵に眠っているとも言われている、貴重なる『レアメタル』の数々が独占されてしまう怖れも有り、現在の各国における経済戦略を根底から覆しかねないです!」




メリーさん太「──なっ⁉」




ちょい悪令嬢「そして、それよりも問題視されているのが、『軍事的戦略』の側面ほうなのですよ」




メリーさん太「……日本人が月に行くことと、地球上の『軍事バランス』とが、どう関係するって言うんだよ?」


ちょい悪令嬢「以前本作において、日本のこれからの『専守防衛』の在り方──特に、『敵基地攻撃』の在り方においては、『人工衛星』こそが鍵を握っていると申しましたよね」


メリーさん太「それがどうした? 今は月という、本物の『地球の衛星』の話をしているのであって、人工の衛星ごときはお呼びでは無い………………………って、まさか⁉」




ちょい悪令嬢「そうです、まさしく月こそが最大かつ最強の『天然の人工衛星』であり、常に地球全体を射程範囲に収めており、もしもこれを我が物にすることができれば、日本版超万能軍事衛星『デス・ス○ー』の誕生というわけですよ☆」




メリーさん太「──『天然の人工衛星』という、新たなる矛盾感バリバリのパワーワード、来たああああああ!!!」




ちょい悪令嬢「月からそれこそ原子炉を搭載した人工衛星を落下させれば、どこの国家や地域であろうが、ひとたまりもないでしょう。首都等の重要都市どころか、ちょっとした小国なら、国家そのものが壊滅したりして♫」


メリーさん太「……た、確かに」


ちょい悪令嬢「まさに月こそは、『無慈悲なる夜の女王』とも言われてますからね。これからすべての地上の者たちは、この『日本版デス・ス○ー』を仰ぎ見ながら、その支配下に置かれて、ちょっとでも反抗しようものなら、恐れを知らぬ所業に対する神罰として、『天の火』あるいは『インドラの矢』を降り注がれることになるでしょう」


メリーさん太「──『ラピ○タ』かよ⁉ それってむしろ、『死亡フラグ』では?」


ちょい悪令嬢「それに何と言ってもこの『世紀の慶事』は、本作においても密接なる関係がございますしね!」


メリーさん太「へ? 『月面有人探査』が、本作と関係が有る、って……」




ちょい悪令嬢「まさしく時宜タイミングを見計らったようにして、本作がこれまで(陰ながら)全力で応援してきた、共産的宇宙開発アニメ『月とラ○カと吸血姫』が、このたび堂々の完結を迎えたのです!」




メリーさん太「──またワンパターンの、『アニメ評論』かあああああああ⁉」




ちょい悪令嬢「ねえ、本作と関係が深いでしょう?」


メリーさん太「関係って、勝手に感想を述べているだけだろうが⁉」


ちょい悪令嬢「あら、ほとんどすべてのまとめサイトが話題にしなかったというのに、事あるごとにこの作品アニメを推していた本作の作者は、根っからの『宇宙開発史スキー♡』であることを、如実に証明して見せたとは思いません?」


メリーさん太「──うっ」




ちょい悪令嬢「確かに本作の作者は、旧ソ連もゴミュニズムも蛇蝎のごとく嫌っておりますが、彼らによってなされた『宇宙開発技術の長足の進歩』に関しては、心より敬服しております。たとえどんな凶悪な兵器の開発に寄与しようとも、『技術』そのものには罪は有りません。ダイナマイトが発明されることによって、世界最高の平和の象徴である『ノーベル賞』が生み出されたし、核兵器開発は原子力発電の推進による国際的エネルギー問題の解消に寄与しているし、そして何よりも世界初の大陸間弾道弾の『V2号ロケット』が、現在へと至る宇宙開発の原動力となったのは、もはや周知の事実でありましょう!」







(※後編に続きます)

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